IN DATA · ISSUE 533
● 12 SEC「二つの数字が一緒に動けば、片方がもう片方を動かしている」。そう読みたくなります。この号は、相関と因果を見分けられるかを6点で確かめます。方法論と哲学の論文が2点、一般書が1冊、医学誌の風刺の短報が1点、疫学と公衆衛生の論評が2点で、見分けの難しさを実験や調査で測った研究は含まれません。
先に向きを言うと、国ごとのチョコとノーベル賞の相関は冗談めかして書かれ、書き手は社会経済的な差などでは説明しきれないと書きました。ホルモン補充療法では、観察研究と試験の結論が逆に近く食い違いました。元の分野は医療・疫学の研究で、一般的な向きとして借ります。この号は、分析の手順を勧めることも、治療の是非を判断することも、結果を日本の小さな店に当てはめることもしません。
相関は二つの数字が一緒に動くこと、因果は一方が他方を実際に起こすこと、交絡は両方を動かす共通の原因が裏に隠れていることです。1974年の方法論の論文は、無作為の割り付けはできる限り使うべきとしつつ、よく統制された無作為でないデータで因果の効果を推定するのも “a reasonable and necessary procedure in many cases”(多くの場合に妥当で必要な手続き)だと、要旨で結びます。

シラバス側はこの論文を、施策をした世界としなかった世界を突き合わせる考え方(潜在結果)の源流に置きます。2018年の一般書は、一緒に動くのを見る段と、片方を動かしたら何が起きるかを問う段を、はしごの別の段として説きました。読めたのは書誌までです。相関は材料にはなっても、それだけでは因果に届かない——というのが、この号の読み筋です。
01国のチョコと賞の相関は、医学誌の風刺の短報として書かれた。2012年の短報は、23か国で一人あたりのチョコの消費量と人口あたりのノーベル賞受賞者数を並べ、相関係数r=0.791(1に近いほど、そろって動く)を掲げました。方法の節の国の数は22で、原典の中で食い違います。書き手は、一方が他方を、逆向き、共通の仕組みの三つの筋書きを挙げたうえで、チョコが効くかのように結びました。
02ホルモン補充療法は、観察研究と試験で結論が食い違った。2004年の疫学の論評によると、観察研究を束ねた分析は閉経後の女性でホルモン補充療法を使った人ほど心臓病が少ない関連を見いだし、ランダム化試験は、わずかに高い危険か差なしを報告していました。論評は、この食い違いの理由を検討した文章で、実験や調査そのものではありません。
03因果を「関連」と言い換えても、研究の質は上がらないと論じた。2018年の公衆衛生誌の論評は、著者や編集者が研究の因果の目的をはっきり書かず、因果の推定を関連の推定と呼ぶ習慣を取り上げました。目的を明示するほうが、問いのあいまいさ、分析の誤り、解釈の行き過ぎを減らすと論じます。読めたのは要旨までです。

以下の三つは、2004年の論評の本文が挙げた、観察研究の結論を誤らせた可能性の高い事情です。元の分野は医療・疫学の研究で、治療の良し悪しを判断する材料ではありません。専門家の分析でも裏の共通の原因を取り逃がしうる、という一般的な向きとして借ります。
01疑われたのは、子どもの頃からの暮らし向きの差だった。この治療を使うかどうかは社会的に強く偏り、社会経済的な地位は心臓病とも結びつくのに、保護の関連を主張した側は “no mention of possible confounding by socioeconomic position”(社会経済的な地位による交絡に触れていない)と著者らは指摘します。
02生活習慣をそろえても、見かけの保護は残った。著者らは論評の中で、自分たちの分析では、大人になってからの暮らし向きと、行動や体の危険因子をそろえても治療は保護的に見え、子どもの頃を含む生涯の暮らし向きをすべてそろえると、試験と合うわずかに高い危険になったと報告しています。その分析の本文は読んでいません。
03医師が、もともと危険の低い人を選びがちだった可能性も挙げた。著者らは、観察研究の保護の関連は残った交絡の影響を受けていた “likely”(可能性が高い)と結論し、医師がもともと心臓病の危険の低い女性にこの治療を選ぶ傾向も重要だろうと書きます。断定ではなく、可能性の高さとしての結論です。

シラバス側は、チョコと賞の裏に国の豊かさという共通の原因があると置きます。けれど短報の書き手は、国ごとの社会経済的な差や地理・気候は役割を持ちうるが “they fall short of fully explaining the close correlation observed”(観察された強い相関を十分には説明しきれない)と書きました。豊かさは、読み手が疑う候補です。
観察と試験の食い違いを具体的に扱うのは論評1点で、分野は医療・疫学です。論評の著者らも、観察研究を捨てて試験だけに頼るのは万能薬ではないと書きます。2008年の哲学の論文は書誌まで、一般書も書誌までです。日本の小さな店の売上と施策の相関を調べたものは、読めた範囲にありません。全文まで読めたのは6点のうち2点で、読めていないものについては書きません。
チョコと賞の相関を書いた人は、
社会経済的な差などでは
説明しきれないと書いた。
シラバス側の看板「見分けは本質的に難しい。因果は相関の外の枠組みを要し、みせかけの相関は説得力を持ち、交絡は専門家さえ欺く」の向きは、6点と食い違いません。ただ支えは方法論の論文、一般書、風刺の短報、論評で、見分けの難しさを実験や調査で測った研究ではありません。「専門家さえ欺く」の具体例は、医療・疫学の論評1点です。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付と、自分の商いの数字から一緒に動いて見える二つを一組書く(ある施策と売上、天気と来客、曜日と注文数など)。
- 02LOG
その横に四つの問いを書き、思いつく答えを一言ずつ添える。片方がもう片方を起こしたか、逆向きではないか、両方を動かす共通の原因はないか、ただの偶然ではないか。
- 03SORT
四つの問いそれぞれに「答えられた」「分からない」「確かめる材料がない」の印をつける。因果かどうかは決めず、「まだ言えない」と保留してよい。
この号が運べたのは三段です。1974年の方法論の論文が論じた、無作為の割り付けをできる限り使いつつ、よく統制すれば無作為でないデータからも因果を推定しうること。2004年の論評が挙げた、観察研究の保護の関連の裏にある、生涯の暮らし向きの調整不足と医師の選別という可能性。2018年の論評が論じた、因果の語を避けても研究は良くならないこと。国のチョコと賞の相関は風刺で、豊かさは読み手が疑う候補です。次の号は、数字のトリックを見抜きます。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「相関と因果を見分けるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 相関係数 r
- 2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
- 観察研究・前向き研究
- 介入せずに経過を追いかける研究。「関連がある」までは言えますが、「それが原因だ」とは言い切れません。
