IN COMMUNICATIONS & CRISIS · ISSUE 490

(仮ビジュアル)暗い室内の黒い壁ぎわに立ち、窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「記者と仲良くなっても、買えるのは話を聞いてもらう入口まで」。これは実務の直感として語られてきた言い回しで、研究の結論ではありません。この号が探した6点の研究は、この言い回しを支えていませんでした。記者の記録と企業ごとの比較を扱った3点は、むしろ逆の向きを示しています。

ただし、研究が測ってきたのは記者との間柄の効き目ではありません。広報が差し出した素材や接触が、実際の記事にどれだけ関わったかという関与の大きさです。この号は、「仲良くなれば書いてもらえる」という約束も、「入口まで」という断言も書きません。並べるのは、両方の向きの材料です。

整えた資料やデータ、取材の機会を差し出して、報道の手間を肩代わりすること。これを情報補助金(information subsidies)と呼びます。1982年の学術書が用いた呼び名で、この号が確かめられたのはその本の書誌までです。

1997年の総説は、記者と情報源のやりとりを扱った研究を、記者と情報源の関係・組織・社会の三つの層で整理しました。記者が話を聞く相手はしばしば広報担当者かその依頼主なので、広報が報道の議題を決めることが多い、と論じています。新しいデータを取った研究ではありません。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
整えた素材を差し出すこと。研究が測ってきたのは、その素材や接触が記事にどれだけ入るかだった。 Visual: ALIFE

では、記者の側から見ると、広報はどれだけ記事に入っているのか。記者への聞き取り、記者の面接記録、企業ごとの報道と世論の比較という三つの記録が、この問いに答えていました。この号が全文まで読めたのは6点のうち0点で、5点は要旨まで、1点は書誌だけです。読めていないものについては書きません。

01イスラエルの記者の記事では、75%以上に広報が関わっていた。2010年の研究は、イスラエルの主要報道機関9社の記者に、刊行直後の記事から無作為に選んだ記事の接触を、対面で一つずつ再構成してもらいました。広報が唯一の情報源になることはまれでしたが、接触先の50%以上を占める主な情報源になることは多く、2本に1本で議題づくりを主導し、75%以上の記事に関わっていました。“PR impact was found to be richer, more complex and broader than suggested by former studies”(広報の影響は、従来の研究が示すより豊かで複雑で広かった)。

02米国の記者は、関係が良いほど広報の影響を大きく見積もっていた。2006年の分析は、1991〜2004年に記者418人へ行われた面接の報告413件を内容分析しました。総説ではなく、記録を数えた研究です。広報の影響を高く見積もった記者ほど、広報との関係が良いと答えていました。見積もりの平均では、米国の報道内容の44%が広報の影響を受けているとされます。どちらも記者の自己申告で、記事を測った値ではありません。

03米国の28社では、素材・報道・世論のつながりを支持する証拠が出た。2007年の研究は、2005年の年次の企業評判調査に載った米国の28社について、広報が出した素材・報道・世論・財務の数字を並べて比べました。“Evidence for agenda-building and agenda-setting propositions was found”(素材から報道へ、報道から世論へのつながりを支持する証拠が見つかった)。相関の設計なので因果は言えません。財務の数字への環の結果は、読めた要旨からは分かりません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル
記事ごとの接触・記者の見積もり・企業ごとの比較。三つの記録は、関与の大きい側を指していた。 Visual: ALIFE

ここから先は研究が示した結果ではなく、記録の単位を決めてみるためにALIFEが提案する読み筋です。「関係で買えるのは入口まで」と言い切るとき、その言い方は三つの形で表に出ます。

01間柄の話と、関与の話を混ぜている。読めた研究が測ったのは、個人的な親しさが記事の中身を変えるかではなく、広報の素材や接触が記事にどれだけ入ったかでした。2006年の分析の、関係の良さと影響の見積もりの結びつきは、どちらも記者の答えどうしの相関で、どちらが先かは分かりません。記者は良い関係を大事と考えながら、その責任は広報の側にあると見ていました。

02一つの受け止めを、全体の結論にしている。入口までの側に近いのは、1999年の研究です。編集者への詳しい面接と全国規模の調査で、編集者の受け止めを調べました。“increasing economic constraints have led to an increased use of public relations materials only in specific instances that often do not support the agenda-building goals of the sponsoring organizations”(経済的な制約で広報の素材の利用は増えたが、特定の場面に限られ、送り手の議題づくりの狙いを支えないことが多かった)。記事を数えた値ではなく、人数は要旨にありません。

03経済の記事と政治の記事を、同じに見ている。2010年の研究では、広報の関与は政治より経済・国内の記事で大きく、独占でない記事、目立たない記事、情報源が匿名のままの記事で特に大きくなっていました。著者は、やりとりを見えにくくしたい記者と広報双方の関心が、情報の出所を知る公共の利益を上回っているようだ、と結んでいます。関与の大きさは、記事の種類で違っていました。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
間柄と関与を混ぜる・一つの受け止めで結論する・記事の種類を見ない。入口までと言い切るときは、この三つの形で表に出る。 Visual: ALIFE

数えられたのは、イスラエルの記者が再構成した接触、米国の記者の面接記録にある自己申告の見積もり、米国の28社の相関です。日本の地方紙や業界紙で、小さな店の広報が同じように記事に入るかは、ここからは言えません。個人的な親しさが記事の中身を変えるかを直接比べた研究も、読めた5点の要旨の範囲にはありませんでした。

1997年の総説自身も、この分野について“too much of the scholarly research has been merely descriptive”(学術研究のあまりに多くが記述にとどまっている)と書いています。2007年の研究の財務の数字の結果は、読めた範囲からは分からないため、この号は書きません。

イスラエルの記者の記事では、
広報の関与は、
入口で終わっていなかった。

「関係で買えるのは入口まで」は、研究の結論ではなく、編集の側の直感として読むのが正確です。読めた記録が示したのは、広報が唯一の情報源になることはまれでも、記事の多くに主な情報源として関わっていた姿でした。ただし、どれも海外の報道の記録で、関係を深めれば書かれ方が良くなるという約束でもありません。

TRY IT TODAY

  1. 01DATE

    今日の日付を書き、いちばん知らせたいこと(新しい取り組み・商品・出来事など)を一つ選んで、自分が言いたいままの形で1〜2文書く。

  2. 02REWRITE

    それを、誰にとっての話か・何がこれまでと違うのか・なぜ今なのか、の三点で1〜2文に書き直す。

  3. 03MARK

    最初の形と書き直した形を見比べて変わった箇所に印を付け、三点のうちどれがいちばん書きにくかったかを一言そえる。

10分。記者に送る文面を仕上げる作業でも、記者や他社の報道を評価する作業でもありません。点検するのは、自分が書いた二つの形の違いだけです。これは研究結果そのものではなく、記録の単位を決めてみるためにALIFEが提案する実践入口です。取材や報道をめぐる判断が要るときは、広報の専門家などへ。

この号が運べたのは、二段だけです。イスラエルの記者の記録では、広報の関与は話を聞いてもらう入口で終わらず、記事の多くに主な情報源として入っていた。一方、編集者の受け止めでは、素材の利用は特定の場面に限られ、送り手の狙いを支えないことも多かった。「入口まで」という言い回しは、そのどちらにも帰属できません。

この群は、ここから報道の中身へ進みます。次に見るのは、差し出した素材が実際の記事にどう載るのか——報道される側の話です。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「記者と関係を築くには?」を、もっと深く学ぶ。→

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。