IN COMMUNICATIONS & CRISIS · ISSUE 482
● 12 SEC「困ったら、まず深く謝る。そうすれば鎮まる」。危機の話は、たいていこの型で語られます。では、謝罪は、同情を示すことや埋め合わせを申し出ることより、よく効くのでしょうか。
米国中西部の大学の学部生167名を、謝罪・補償・同情・情報のみの4つの対応のどれか一つに割り当てた実験が報告したのは、被害を受けた側に寄り添う対応であれば、人々の反応はどれも似ていた、ということでした。“apology is not ‘the’ best strategy”(謝罪は「唯一最善の」対応ではない)。この号は、謝れば有利になる、という広報や法務の助言は書きません。
謝罪(apology)を、2008年のその研究は “At its core, an apology is marked by the organization accepting responsibility for the crisis”(謝罪の核は、組織が危機の責任を引き受けることにある)と定めています。深く頭を下げることそのものではなく、責任を引き受けること。謝罪が重い一手になるのは、そのためです。

では、謝罪はどんな危機に合うのか。2007年の論文は、危機のあとの評判を守る考え方を、状況に応じた危機コミュニケーションの理論として整理し、実証から引いた指針にまとめました。個々の実験ではなく、理論と指針を示した論文です。この号が全文まで読めたのは7点のうち1点。読めていないものについては書きません。
01学生の実験では、謝罪は同情や補償と並んだ。2008年の実験では、学部生167名が3本の新聞記事を読み、4つの対応のうち一つだけを無作為に割り当てられました。測られたのは組織の評判や怒りなどです。要旨の結論は、謝罪は補償や同情より飛び抜けてはいなかった、というもの。差の大きさを示す値は、この号が読めた範囲には印字がありません。
02深すぎる対応に、評判の上積みはないと整理された。2007年の論文は、同じ著者らの1996年の実験を引いて、“using overly accommodative strategies produces no greater reputational benefits than those prescribed by SCCT”(理論が勧める以上に歩み寄る対応は、評判の上積みを生まない)と書きます。費用はかさみ、歩み寄るほど責任を重く引き受けたと受け取られる、とも。逆効果とまでは書いていません。
03オランダの実験では、効き方が危機の種類で変わった。2016年のシナリオ実験は、オランダの回答者304名を、対応(再建型か弱める型か)・危機の種類(製品の害か倫理の害か)・社会的責任の活動の型(制度型か宣伝型か)の2×2×2に分けました。“an interaction effect between crisis type and crisis response strategy is found”(危機の種類と対応の間に交互作用が見られた)。社会的責任の型は、制度型がすべての指標で有利という主効果でした。

ここから先は研究が示した結果ではなく、記録の単位を決めてみるためにALIFEが提案する読み筋です。謝罪が思ったほど働いていないとき、その様子は三つの形で表に出ます。
01深さだけが、比べられている。2008年の研究は、謝罪の価値が、寄り添う度合いの低い対応と比べて示されがちだった点を問題にしました。“This ‘unfair’ comparison results in apology appearing to be ‘the’ best alternative.”(この「不公平な」比較が、謝罪を唯一最善の選択肢に見せてしまう)。比べる相手を変えると、謝罪の特別さは薄れていました。
02組み合わせが、打ち消し合っている。2002年の事例研究は、あるタイヤメーカーの一件を分析し、取引先への責任転嫁は練られておらず、是正の措置も問題に向き合っていると受け取られなかった、と書きます。“mortification and bolstering can be undermined by denial and corrective action”(陳謝と自己の強調は、否認と是正措置によって損なわれうる)。一社の一件の分析です。
03答えが、質問から逸れている。2020年の無作為化実験では、不祥事を起こした会社の報道インタビューで、広報担当者が質問に正面から答える物語、話をそらす物語、物語ではない情報のいずれかで応じました。非難を減らしたのは、正面から答える物語と、物語ではない情報の両方。話をそらす物語では、組織の責任がかえって重く見られました。

数えられたのは、米国中西部の大学の学部生167名と、オランダの回答者304名が、用意された危機の記事やシナリオに示した反応です。2020年の実験の参加者の属性は、読めた要旨には印字がありません。2002年の分析は一社の一件。日本の小さな商いの謝罪で同じように働くかどうかは、ここからは言えません。
2008年の実験の差の大きさと、使われた危機が責任を重く見られるものだったかは、この号が読めた範囲では確かめられていません。責任の重い危機でも同じかどうかは言えません。1995年の学術書はイメージ修復の理論の枠組みを説いた本ですが、型を並べた頁までは読めていないので、型の数は書きません。この号は、謝れば有利になる、という助言は書きません。
学生の実験では、謝罪は、
同情や補償と並ぶ一つだった。
読めた範囲が示していたのは、「深く謝れば鎮まる」ではなく、条件のほうでした。2007年の論文は、防げた危機のように責任が強く問われる場面には、補償や全面的な謝罪を含む再建型の対応を当てる指針を示しています。詫びの重さと責任の重さの釣り合い、そして質問への正面からの答え。ただし、実験で測られたのは用意された危機への反応です。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付を書き、自分が過去に書いた謝罪の言葉か、これから書くとしたら書くであろう言葉を、一つだけ書き出す。メールでも掲示でも、口頭で言ったことでもよい。
- 02WEIGH
その言葉が認めている非と、自分が実際に負っていると思う責任を、左右に並べて書く。詫びのあとに、経緯の説明や具体的な行動が続いているかも書き添える。
- 03MARK
詫びの重さが責任に対して「合っている・重すぎる・軽すぎる」のどれに見えるかを、自分の見立てとして一つ選び、印をつけて記録の最後に残す。
この号が運べたのは、二段だけです。学生の実験では、謝罪は同情や補償より飛び抜けてはいなかった。そして理論と別の実験が示していたのは、謝罪の深さではなく、責任の重さや危機の種類との釣り合いのほうでした。
謝罪の重さを見立てたあとには、まだ結論が出ないうちに何を語り、何を留保するか、という線引きが残ります。次に見るのは、そのほうです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「謝罪を正しく行うには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 無作為化比較試験
- くじ引きの要領で「介入を受ける群」と「受けない群」に分けて比べる実験。「効いたかどうか」を言うための標準的な設計です。
