IN LEGAL NEGOTIATION · ISSUE 477
● 12 SEC調停。仲裁。ADR。もめ事の収め方を調べると、こういう硬い言葉が並びます。弁護士を立て、難しい書類を書き、大ごとになる——名前の格式が、そのまま手続きの敷居に見えてきます。
裁判所と法務省が公開している説明には、別のことが書かれていました。ただし、公的な文書が定めているのは手続きの要件と決まりごとであって、「使えば守られる」という効果を測った結果ではありません。この号は、あなたのもめ事をどの手続きで収めるべきかは判定しません。
裁判外紛争解決手続(ADR)とは、2004年に定められた法律が「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」と定義しているものです。裁判所が行う民事調停もあれば、民間の事業者が行うものもあります。
民間の側には、法務大臣が基準を審査して認証する制度があり、認証を受けた事業者は「かいけつサポート」の愛称を使えます。公式サイトによれば、2026年9月時点で活動している事業者は175——認証番号は累計で第193号まで発番されています。

ここから先、効き目の話は日本の資料からは出てきません。この号が全文まで読めたのは6点のうち3点、いずれも公的な文書です。残る3点は公式の要旨までで、読めていないものについては書きません。
01申立てに、特別の法律知識は要らない。裁判所の民事調停のページ(2026年9月時点)の記述です。“申立てをするのに特別の法律知識は必要ありません”。申立用紙と記入方法の説明は簡易裁判所の窓口に備え付けてある、とも書かれています。席に着くのは、裁判官1人と、一般市民から選ばれた調停委員2人です。
02費用と期日には、目安が示されている。同じページの費用の説明です。“例えば、10万円の貸金の返済を求めるための手数料は、訴訟では1000円、調停では500円です”。金額はこの一例で、請求の額によって変わります。通常は2、3回の期日が開かれ、おおむね3か月以内に解決して終了している、席は非公開、とも記されています。
03成立した内容には、判決と同じ効力がある。合意ができると、その内容は調停調書に記されます。“調停調書に記載された内容は、確定した判決と同じ効力があり、この調書に基づいて強制執行を行うこともできます”。まとまらなければ「調停に代わる決定」か「調停不成立」で終わる、という出口も同じページにあります。

ここから先は研究が示した結果ではなく、記録の単位を決めてみるためにALIFEが提案する読み筋です。手がかりは、どこの誰を調べた話なのか、というほうに出ます。
01裁判か我慢か、の二択で考えている。1984年の報告は、米国メイン州の少額の請求を扱う裁判所の被告を調べ、“defendants in small claims court are nearly twice as likely to comply fully with mediated outcomes as with judgments imposed by the court”(調停で決まった内容を完全に履行する割合は、裁判所が言い渡した判決の場合の2倍近い)と書いています。2倍近くという言い回し以上は、ここでは書けません。
02白黒つけてもらうのが正解だと思っている。2004年に出た3つの実験の報告です。参加者が総じて好んだのは、“a neutral third party would help disputants reach a mutually satisfactory resolution”(中立の第三者が、当事者どうしが互いに納得できる解決に至るのを助ける)という形と、代理人を立てず自分で言い分を伝える形でした。最も好まれたのは調停で、結論を示す型より話し合いを進める型が好まれています。
03海外の効き目を、日本の制度に重ねている。2004年に出たもう1点は、裁判所に付設された調停と中立評価の実証研究を見渡したレビューです。少額の請求・一般の民事・上訴という裁判所の水準ごとに、結果を分けて示す構成だと書かれています。ただしこの号が読めた要旨は目的と構成の記述に終始しており、効果がどちらを向いたかは書かれていません。

守られやすさの比較は、日本のものではありません。1984年の報告が調べたのは、米国メイン州で少額の請求を扱う裁判所の被告です。それぞれ何件のうち何件が完全に履行したのかという内訳は、この号が読めた要旨に印字が無く、全文にも届いていません。ですから具体的な割合も、日本の民事調停や認証を受けた事業者の手続きで同じ差が出るかどうかも、ここからは言えません。
そして公的な文書が書いているのは、手続きの要件と決まりごとです。手数料も期日も効力も、制度がそう定めているという話であって、使った人がどれだけ救われたかを数えた結果ではありません。自分のもめ事にどの道が合うのかは、弁護士・司法書士・認証を受けた紛争解決の窓口・裁判所の手続案内といった専門の窓口へ。
特別の法律知識は、
要らないと書いてあった。
硬い名前の側も動いています。2004年の法律は2023年に改正され、2024年4月1日から第二十七条の二「特定和解の執行決定」が置かれました。特定和解とは、認証を受けた事業者の手続きで当事者のあいだに成立した和解のうち、その和解に基づいて民事執行ができる旨の合意がされたもの、と法律が定義しています。
認証を受けた事業者の手続きでまとまった和解でも、裁判所の執行決定を得れば強制執行へ進む道がある——条文はそう組み立てられています。ただし次の条(第二十七条の三)は、消費者と事業者の間の契約の紛争、個別の労働関係の紛争、人事や家庭の紛争などをこの仕組みから外しています。事業者どうしの代金や契約のもめ事が主な対象で、これも要件の定めであって、実際にどれだけ守られたかを数えた結果ではありません。
TRY IT TODAY
- 01DATE
今日の日付を書き、いま抱えている、または抱えうるもめ事を一つだけ書き出す。
- 02WRITE
その一件を三つの道に並べる——当事者どうしの話し合い、第三者に間に入ってもらう、裁判。それぞれの費用・時間・相手との関係がその後も続くかを、見当でよいので書く。
- 03MARK
三つのうちいちばん書きにくかった欄に印をつけ、どの道が合いそうかを一言だけ書き添える。
この号が運べたのは、二段だけです。日本の公的な説明が書いているのは、特別の法律知識が要らないこと、費用と期日の目安、そして成立した内容の効力。いっぽう守られやすさの比較のほうは、米国メイン州の裁判所から来ている。
この群は合意へ向けて絞っていきます。次に見るのは、もめ事の相手が取引先でも隣人でもなく、毎日顔を合わせる同じ職場の人だったときの話です。
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