IN PEOPLE SYSTEMS · ISSUE 448
● 12 SEC制度を作り直す。副作用が見つかったとき、いちばん自然に出てくる答えです。新しくすれば解決する。この号は、その答えが勘定に入れ忘れているもののほうを見ます。作り直すこと自体にも、値札が付いています。
はじめに、書かないことを一つ。「変革の何割かは失敗する」という型の数字は、この号には出てきません。読めた論文の範囲に、その割合の出どころが見当たらないからです。ここで扱うのは割合ではなく、作り直しが人のほうに残していくものです。
制度の作り直し(Redesign)を、ここでは組織の変革の一種として読みます。報酬や評価の決め方の改定そのものを扱った査読の実証は多くなく、変革一般の研究から借りているからです——借り先の断りは、後段にまとめて置きます。借りた先で最初に出てくるのが、変革疲れ(change fatigue)と冷笑(cynicism)という、二つの言葉でした。どちらも制度の出来映えではなく、制度を受け取る側に積もるものを指しています。

2011年の研究は、度重なる変革のもとで人がどれだけ消耗しているかを測る、六項目の尺度を作りました。そのうえで、変革疲れは疲弊と結びつき、疲弊のほうが、勤め先への愛着の低さと、辞めたい気持ちの高さに結びついていたと報告しています——“change fatigue was positively associated with exhaustion”(変革疲れは疲弊と正の関連を示した)。尺度の開発と関連の分析であり、疲れが離職を生んだと割り付けて確かめた研究ではありません。
01冷めの理由は、繰り返しだけではない。1997年に実務家向けの査読誌へ出た論考は、変革への冷笑を、成功の見込みへの悲観と、担い手への非難の組み合わせとして描きました。冷笑を育てる要因は一つではないとして、例に挙げたのが、一貫してはうまくいかなかった変革の履歴、変革についての情報の不足、もともと斜に構える傾向——“a predisposition to cynicism”です。冷笑は愛着・満足・動機づけに負の結びつきを持つとも書かれています。
02型が土台に挙げるのは、証拠より意見のほうが多い。2018年の統合レビューは、実務で使われる変革の型が、科学的な証拠よりも専門家の意見を土台として挙げることのほうが多いと書きました——“more often cite expert opinion as their foundation rather than scientific evidence”。ただし同じレビューは、証拠に基づく十の段取りを挙げてもいます。文献どうしを突き合わせた統合であり、新しい実測ではありません。
03挙がった特性は、頻度と影響と計画性。2006年に心理学の専門誌へ出た研究は、変化の特性を頻度・インパクト・計画性の三つに分けました——“the frequency, impact and planning of change”。三つが、変化にまつわる不確実性の受け取り方を通じて、職務満足と離職意図に結びつくという筋立てです。連続する年に集めた反復横断の調査で、三つの受け取り方は結果ごとに違う結びつき方を見せました。

自分の職場が、どのあたりにいるのか。手がかりは数字より、日ごろの言い方のほうに出ます。
01「またか」が、先に口に出る。1997年の論考は、変革への冷笑を、成功の見込みへの悲観と、担い手を無能や怠慢と見なす非難の組み合わせとして定義しました。これは概念の整理であって、「またか」と言う人が冷笑的だと測った調査ではありません。
02説明が足りないまま、次が始まる。同じ論考が例に挙げた要因の一つが、変革についての情報の不足でした。情報の量を割り付けて比べた実験ではなく、新しい実証と既に出ている研究の両方からの示唆として書かれています。
03変えた回数を、数えたことがない。2006年の研究が最初に置いた特性が頻度でした。回数そのものが受け取り方に関わるという枠組みで、何回までなら重くならない、という線は引かれていません。

借り先を正直に書いておきます。報酬や評価の決め方の改定そのものを扱った査読の実証は、多くありません。ただし、無いわけではありません。報酬の仕組みを変えた前後で、働く人の受け止めを測った論文が、1990年代初頭の人事の専門誌に少なくとも一本あります。この号が届いたのは、その書誌——誌名と年まで——で、中身は書きません。
借り先の質も、そのまま置きます。2005年の批判的レビューは、当時手に入る変革マネジメントの理論と手法について、しばしば互いに矛盾し、多くは実証を欠くと書きました——“mostly lacking empirical evidence”。1999年の総説が扱ったのも1990年から1998年初めまでの文献で、1990年代の全体ではありません。その総説は、この分野が職場の要求に応え続けているとも結んでいます。この号が読んだ六点は、いずれも公開された要旨の範囲まで。読めていないものについては書きません。
冷めをつくるのは、繰り返しだけではない。
情報の不足と、もともとの構えも並んでいた。
三つの言葉は、作り直しを止めるために並べたものではありません。2018年のレビューは、証拠に基づく段取りを十挙げてもいます。読めた範囲で言えるのは、作り直しの前後に何が起きるかが、制度の出来映えとは別のところで記述されてきた、ということまでです。疲れのほうは測る物差しから、冷めのほうは要因の並びから、それぞれ別の研究が書いてきました。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分が運用している決め方を一つ選び、いつ今の形にしたかを書く。
- 02MARK
実態とずれ始めていると思い当たる点を、一つだけ書き出す。
- 03SET
見直しの引き金にする兆候を一つ決め、全体を作り直すか一部を直すかも一言添える。
ここから先は、読んだどの論文も言っていないこと——この号の見方です。制度は、作った日がいちばん新しい。人が入れ替わり、暮らしが動けば、去年ちょうどよかった枠は、どこかで実態とずれ始めます。だからこの並びは、骨格を扱った号へ戻って終わります。戻るのは、やり直しのためではありません。一周したあとに見えるのは、同じ骨格の、少し違う姿のほうです。
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