IN PEOPLE SYSTEMS · ISSUE 433
● 12 SEC等級を作れば、処遇の骨格が定まる。段の数を増やし、言葉づかいを磨き、幅を詰める——精密にするほど、決め方は客観に近づくように見えます。
この号が読むのは、その精密さとは別の場所で測られた数字です。枠の細かさと、決められた側の納得を同じ物差しで並べて測った結果は、この号が挙げた6点の中にはありません。
等級は仕事や責任の重さで段階を分ける枠、レンジはその段ごとの給与の幅です。段を決める土台には二つの作業があります。仕事の中身を調べる職務分析と、その重さを測って段に置く職務評価。責任の大きさ、必要な知識、体への負担——重さのどの面を見るかで、測り方はいくつにも分かれます。この号は、その二つと、人に付ける評点そのものを扱った6点を読みます。

6点のうち、評点そのものを分解したものが1点、評価の源どうしの一致を測ったメタ分析が1点。段を決める側——職務評価と職務分析——を扱うものが3点。残る1点は、書誌の記録しか読めていません。数字が読めたのは、前の2点と、職務評価の実験1点でした。いずれも、枠の細かさを測った数字ではありません。測られているのは、測る側と、付けられた評点のほうです。
01評点のばらつきの半分以上は、評価する側の癖だった。2000年の分析は、管理職2群(2,350人・2,142人)が上司2人・同僚2人・部下2人・本人の計7人から育成目的で評定を受けたデータを分解しました。評価者ひとりに固有の効果が62%・53%、評価される人の出来ばえに帰せられたぶんは21%・25%。ランダム誤差は11%・18%でした。観察されたデータの分解であり、割り付けた実験ではありません。
02源が違えば、一致はそれほど高くなかった。1997年のメタ分析は、上司・同僚・部下・本人の評定を比べました。同じ立場どうしの一致(評価者間信頼性——1に近いほど揃い、0なら無関係)の平均は部下.30が最も低く、上司.50が最も高く、同僚は.37。立場をまたいだ相関は上司と同僚の.34が最も高く、部下と本人は.14。研究数と人数は、読めた範囲に印字がありません。
03偏りを統制しないと、分類の決定は3〜4等級ぶん動いた。1994年の実験は、俳優が三つの仕事の担当者を演じる録画を見せ、うち二つについて職務評価の用紙に記入させ、三つめと比べていくら支払うべきかを答えさせました(64人)。職務の種類と性別の偏りが重みづけに及ぼす影響を統制するかどうかで結果は変わり、統制しない場合の影響は3〜4等級ぶんと見積もられています。答えた人たちがどんな集団かは、読めた範囲に印字がありません。

自分がいまどちら側にいるかは、手元の言い方に出ます。
01「この基準なら、誰が測っても同じ」と言っている。1986年の研究は六つの職務評価の方法を比べ、職務の分類の決定への影響を扱いました。ただしこの号が届いたのは、公表された要旨の第1文までです。方法を選んだ時点で結論が動きうる、という射程より先は書けません。六つのうちどれが正しいかも、差がどれだけかも、読めた範囲には出てきません。
02枠の細かさで、納得を説明している。この6点の中に、枠を精密にすることと、決められた側が公正だと感じることを、同じ物差しで並べて測った結果はありません。読めた範囲に無いというだけのことで、確かめられていないことを間違っていることにはしません。ただ、精密さそのものを納得の根拠にはできません。
03ばらつきを、評価される側の問題として数えている。2000年の分解で、評価される人の出来ばえに帰せられたのは21%・25%でした。立場(上司・同僚・部下・本人)に結びつく効果は小さく、上司と部下の評定では見られたものの、同僚の評定では見られていません。揃わなさの多くは、立場の違いでもありませんでした。育成目的の評定を分解した結果であることは、そのまま運びます。

この号が挙げた6点のうち、公表された要旨まで読めたのは4点。1965年の学術書の章は書誌の記録までで、1986年の研究は要旨が第1文の途中で切れています。読めていないものについては、中身を書きません。1997年の職務分析の論文は実証研究ではなく、社会的・認知的な“16 potential sources of inaccuracy in job analysis”(職務分析に入りうる16の不正確さの源)を整理した総説です。
標本の限定も、そのまま運びます。2000年の分解は管理職を対象にした育成目的の評定、1997年のメタ分析は立場ごとの平均、1994年の実験は録画を見て用紙に記入する場面での64人でした。いずれも、数人の給与を決めている小さな組織や、日本の職場の等級づけを測った数字ではありません。1997年の職務分析の総説にいたっては、そもそも何かを測った数字を持っていません。
管理職の育成目的の評定で、
評点を大きく動かしていたのは評価する側だった。
この6点が支えているのは、枠を精密にすれば納得される、という向きではありません。読めた範囲で確からしいのは、測り方を選んだ時点で分類の決定が動きうること、評点が評価する側の癖に強く左右されること——という、慎重な向きのほうです。評価をやめよ、という話でもありません。目は揃わない、という前提のほうから始める、というだけです。
TRY IT TODAY
- 01LIST
自分がいま給与・時給・等級・取り分・委託の額を決めている相手を、一人ずつ挙げる。
- 02WRITE
各人について「何を見て、その額や段階にしたのか」を一つか二つ、自分の言葉で書く。正しいかどうかの判定は今はしない。
- 03COUNT
根拠が言葉になった人数と、「なんとなく」で決めていた人数を数えて書き添える。
精密な等級表は、決め方の癖を消すのではなく、その癖をどこに置いたかを見えるようにする道具として使える——というのが、この号の読み筋です。6点のどれも、「この枠を入れれば納得される」とは書いていません。段の数を一つ増やす前に、いま自分が何を見てその額にしたのかを、先に書けるかどうか。骨格の話は、そこから始まります。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「等級制度を設計するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。