IN PEOPLE SYSTEMS · ISSUE 440

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

面談は、進め方を設計すれば実る。評価を伝える場には、たいていそういう期待がかかります。良いテンプレ、良い順番、良い言い方——それさえ揃えばいい、と。

この号が読むのは、評価面談をあつかった1965年1月号の実務誌の記事と、その四半世紀後に同じ筆者が実務家向けの査読誌へ出した「解」と題された論考です。こうやれば実る、という手順は書きません。

評価面談とは、査定の結果を相手に伝え、これからを話し合う場のことです。1965年1月号の実務誌に載った記事は、表題を「評価における役割の分裂」とし、冒頭の段落を、ほとんどこう言ってもよい、と断ったうえでこう書き出しました。“everybody talks and writes about it, but nobody has done any real scientific testing of it”(誰もがそれについて語り、書いている。けれども、本当に科学的な検証をした人はいない)。

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真
読めたのは、表題と冒頭の段落まで。1965年1月号の実務誌に載った記事から。 Visual: ALIFE

そこから先は、年をまたいで三つに分かれます。半世紀前の記事が何を表題に置いたか。四半世紀後に同じ筆者が何を「解」と呼んだか。そして、百年をふり返った総説が、進歩をどう結んだか。いずれも表題と冒頭、または公式の要旨まで読んだもので、面談のやり方を割り付けて比べた実験ではありません。

01表題に置かれたのは、役割の分裂だった。1965年1月号の実務誌に載った記事の表題は「評価における役割の分裂」でした。冒頭の段落は、評価について誰もが語り書いていると述べたうえで、本当に科学的な検証をした人はいない、と続きます。ただしこの号が読めたのは、表題と冒頭の段落まで。査定と育成が同じ場で両立しにくい、という中身の検証には届いていないので、表題が何を指したか、までにとどめます。

02四半世紀後、同じ筆者は「解」を書いた。1991年、同じ筆者が実務家向けの査読誌へ出した論考の表題は「評価フィードバックの謎への一つの解」。要旨は、伝統的な上司から部下への面談を “a very authoritarian procedure—a parent-child type of exchange”(きわめて権威的な手続き、親と子のやりとりのようなもの)と呼び、部下の自己評価に基づく話し合いのほうが実りがあり満足も高い、と書いています。

03百年の総説は、検証を担ったと結んだ。2017年の総説は、評価と評価管理の研究の百年を八つの領域に分けてたどり、ある査読誌の役割は新しいモデルや発想を提案することではなく “primarily to test ideas and models proposed elsewhere”(主に、ほかで提案された発想やモデルを検証すること)だった、と結びます。これはその誌の役割についての結論で、研究全体が進まなかったという話ではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル
表題、四半世紀後の解、百年の結び。まず読めたのは、この3つ。 Visual: ALIFE

自分の準備が、どちら側に寄っているか。手がかりは、制度の大きさではなく、手元の下書きのほうに出ます。三つとも、面談の型の話ではなく、渡すものの中身の話です。

01伝える順番を、いくつも作り直している。新しい型を探しているとき、半世紀前の記事の冒頭が置いた区別を思い出せます。評価について語りと書き物が多いことと、検証があることを、その記事は別々に置いていました。型の数を増やせばその区別が埋まる、とは、この号が読めた範囲には書かれていません。

02材料が、直前の数週間に寄っている。1989年の実験は、平均的な出来ばえの並びのどこに1回の良い(あるいは悪い)出来ばえを置くかを動かしました。学部生333名が1回の場で4本の講義ビデオを評定した実験では “Overall performance ratings showed a recency effect”(全体の評点に直近効果が現れた)——良い出来ばえが最後に来た条件で。208名を4日間にわたって観察した2つ目の実験の条件は、読めた要旨には印字がありません。学生の実験室の課題です。

03進歩の乏しさを、あきらめの理由にしている。2017年の総説の要旨は、役割の結論のあとにこう続けています。“Nonetheless, we conclude that the papers published in JAP made important contribution”(それでもなお、その誌に載った論文は重要な貢献をした、と私たちは結論する)。乏しさだけを取り出すと、要旨の後半が落ちます。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
型の作り直し、直前の数週間、結びの後半。手元に出る3つ。 Visual: ALIFE

全文まで読めた出典は、6点のうち0点です。表題と冒頭、または公式の要旨まで読めたのが4点、書誌だけが2点。書誌だけの2点は、面談で受ける脅威をあつかった1965年の論文と、面談への参加をあつかった1966年の論文で、向きも数値も、どの企業の研究かも、この号では書きません。

四半世紀後の「解」も、読めたのは実務家向け査読誌の要旨までです。そこでは、自己評価に基づく話し合いのほうが実りがあり満足も高いと研究が示している、と書かれていました。その研究そのものが誰を対象にどう測ったのかは、この号の手元にありません。査定と育成を同じ席に同居させる緊張は設計で消えない、というのはこの号の読み筋で、要旨に書かれていた言葉ではありません。

1965年の記事は、検証がないと書いて始まり、
1991年の論考は、「解」と題された。

だから、新しい型を探すより先に、その席で自分が何を渡そうとしているのかを、二つに分けて見ておく——というのが、この号の読み筋です。効果が確かめられた手順ではありません。評価や処遇の判断は、社会保険労務士・弁護士など専門家の領域です。

TRY IT TODAY

  1. 01LIST

    次の面談(または直近の面談の振り返り)に向けて、伝えたい内容を思い出せるだけ書く。

  2. 02SORT

    各件を「査定=結果の判定」と「育成=これからの相談」に分け、それぞれの件数を数える。

  3. 03RECORD

    査定に分けた材料に、いつの出来事かを添える。直前の数週間に寄っていれば、その旨も書く。

10分。相手を観察したり、面談で何かを試したりする課題ではなく、自分の準備の記録だけで完結します。これは研究結果そのものではなく、ALIFEが提案する記録の入口です。評価や処遇の判断は、社会保険労務士・弁護士など専門家の領域です。

実るかどうかは、読めた範囲では測られていません。読めたのは、1965年の記事が検証のなさを書いて始まったこと、四半世紀後に同じ筆者が「解」を表題へ置き、そこに部下の自己評価から始める話し合いを書いたこと、百年の総説が、ある査読誌に載った論文は検証を担ったうえで重要な貢献もしたと結んだことです。手元でできるのは、次の席で渡すものを、判定と相談に分けておくこと。分けても緊張は消えませんが、どちらの話をしているかは、自分には見えます。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。