IN PEOPLE SYSTEMS · ISSUE 439
● 12 SEC「評価を伝えれば、人は伸びる」。そう教わる一方で、「フィードバックはむしろ逆効果になる」という話も並んで出回っています。この号が読んだ6点のうち、いちばん大きな証拠は、そのどちらにも素直には乗りませんでした。
1998年から2018年のあいだに4つの専門誌へ載った71本の論文から、職場で行われたフィードバック96件の適用を拾い集めて統合した定量レビューがあります。その結論は、効果的な介入でした。分かれていたのは、効くか効かないかではなく、効き目の大きさのほうです。
フィードバック(Feedback)は、ここでは「相手の仕事ぶりについて情報を返す」という一つの介入として扱います。さきの定量レビューの分母は、4つの誌・71本の論文・96件の適用。96は研究の本数ではなく、現場で行われた適用の数です。
結論はこう書かれています——“feedback is an effective intervention, consistently producing large and very large effect sizes”(フィードバックは効果的な介入で、一貫して大きい、あるいは非常に大きい効果量を生んだ)。効果量は、効き目の大きさを研究どうしで比べられるようにそろえた指標です。続く一文は、一部の特性がより大きな効果量をより確実に生んだ、と書きます。ばらつきとして挙がっているのは、効き目の大きさの差でした。

では、逆効きの話はどこから来たのでしょう。この号が読んだ6点のうち2点は、フィードバック介入理論と呼ばれる枠組みを下敷きにしています。学生の話し手を対象にした2015年の実験は、その枠組みを「フィードバックの効き目は、注意の向き先・受け手の性格・課題の性質という三つに関わる」と要約しました。ただしこの要約は、検証した側の論文が引用の形で書いたものです。枠組みそのものを立てた論文は、この号が読んだ6点に入っていません。
01同じ否定でも、向き先で反応が分かれた。現職の従業員212人から集めた779の日次調査では、課題へ向いたフィードバックのほうが肯定的な反応に、自分自身へ向いたフィードバックは否定的な反応に結びついていました。あいだをつないでいたのは、自分の価値が脅かされたという感覚の強さです。測られたのは本人が答えた反応で、その後の業績ではありません。
02盛っても削っても、正確なものに及ばなかった。作業を模したアナログ課題の実験では、返すフィードバックの正確さを三通りに分けています。正確なもの、その三分の一に減らしたもの、三倍に盛ったもの。成績が良かったのは正確な条件に置かれた参加者で、三分の一の条件と三倍の条件はそこに届きませんでした。参加者が誰だったかは、読めた範囲に書かれていません。
03受け手の構えで、関連の強さが変わった。中国の従業員と直属の上司368組から、三つの時点で集めた質問紙の分析では、上司からの肯定的なフィードバックが本人の業績と正の関連を示しました。あいだを部分的につないでいたのは、本人が自分からフィードバックを求めに行く行動です。求め活かそうとする構えが強い人ほど、この関連は強く出ていました。

自分の伝え方がどちら側にあるのか。読めた範囲の研究が見ていた分かれ目は、日常の言い方にも顔を出します。
01言葉が、行動ではなく人を指している。「次はここをこうする」ではなく「君はそういう人だ」と言っているとき、言葉は課題ではなく相手自身を指しています。212人の日次調査で否定的な反応に結びついていたのは、この向きのほうでした。ただしこれは反応の違いであって、言い換えれば直るという結果ではありません。
02よく見せるために、事実を盛っている。励ますつもりの上乗せは、正確な情報と同じようには働きませんでした。アナログ課題の実験で三倍に盛った条件の参加者は、正確な条件の参加者に届いていません。減らした側も同じでした。参加者の属性は読めた範囲に印字がなく、職場の面談で同じになるとは書けません。
03相手が聞きに来ているかを、見ていない。368組の3時点の調査で、肯定的なフィードバックと業績のあいだを部分的につないでいたのは、本人が自分から聞きに行く行動でした。伝えた量ではなく、受け手側の動きが並走していた、という報告です。割り付けのない調査なので、順番までは確かめられていません。

出来ばえの結果を伝えるか、その原因の見立てまで伝えるかを組み合わせた1986年の実験は、学部生149名が対象でした。話し手の改善を見た2015年の実験も、対象は学生です。いっぽう、現職の従業員212人の日次調査、中国の従業員と上司368組の3時点の調査、96件の適用を集めた現場の統合は、働いている人たちの記録です。学生を対象にした実験の結果を、そのまま職場の面談へ持ち出すことはできません。
アウトカムもそろっていません。観察された行動、本人が答えた反応、業績、アナログ課題の成績——同じ「フィードバック」の語で呼ばれていても、測られたものは別です。この号が読めたのは、6点とも公式の抄録まで。全文まで読めたものはなく、読めていない部分については書きません。
読めた範囲で分かれていたのは、
効くか効かないかではなく、
効き目の大きさと、向き先だった。
型でも、反応は変わっていました。学部生149名を三つの要因で分けた1986年の実験では、出来ばえの結果と、その原因の見立てが、伝え手と受け手のあいだでずれているかどうかで反応が分かれています。伝え手が信用できると見られているかどうかも、提案を使うつもりがあるかに関わっていました。
TRY IT TODAY
- 01WRITE
最近、誰かに伝えたフィードバックを一つ、できるだけそのままの言葉で書き出す。
- 02SORT
次に何をどう直すかに向いた部分と、相手自身の値踏みに向いた部分に、線で分ける。
- 03COUNT
それぞれの件数を数え、日付と一緒に残す。相手を新たに観察したり、試したりはしない。
読めた範囲で言えるのは、ここまでです。現場の統合では効き目は大きい側に出て、そのうえで、大きさは特性によって違い、否定の言葉は向き先によって受け止められ方が変わり、盛った情報は正確な情報と同じようには働きませんでした。どれも、あなたの職場でそうなると確かめた結果ではありません。それでも、言葉を発する前に、その言葉が課題を指しているのか相手自身を指しているのかを分けておくことはできる——というのが、この号の読み筋です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「評価を成長につなげるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量
- 差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。

