IN ACCOUNTING · ISSUE 432
● 12 SEC管理会計を入れれば、経理は守りから攻めに変わる。新しい原価計算、新しい指標——名前が一つ増えるたびに、前へ進んだ気がします。
この号が読む数字は、約27%。ただし先に、その27%が何で測られた数字かを見ます。手法を入れれば何%勝てる、という話は書きません。
活動基準原価計算(activity-based costing、ABC)は、製品やサービスの原価を、それを作るのにどんな活動がどれだけ使われたかに沿って割り当て直すやり方です。この号が引いた5点は、いずれもこのABCの採用と広がりを扱っています。

では、入れれば変わるのか。読めた抄録の範囲では、話は三つに分かれます。入れると決めることと、実際に使い続けることは別だったこと。約27%という数字の中身。そして、広がり方の説明が一つではないこと。いずれも採用と広がりを外から観察した研究で、手法を割り付けて比べた実験ではありません。
01決めた会社の相当数が、実際には使っていなかった。カナダの製造業の事業単位に配った質問紙をもとにした1997年の研究は、見かけ上の逆説(“apparent paradox”)を報告しました——理論上の便益があるのに実際に使う会社は比較的少なく、採用した会社のうち相当数が実際には実装していない。同じ研究は、採用したうえで実際に実装する組織には集権化と公式化が結びついていたとも報告しています。標本の数は抄録に印字がありません。
02約27%は、会計と市場の両方の物差しで測られた。2001年の研究は、英国の企業について、ABCを最初に導入した年の1月1日から3年間で、対応づけた非採用の企業を約27%上回ったと報告しました。この結果は対応づけの基準を変えても、会計の指標でも市場にもとづく指標(株式の値動きから測る指標)でも頑健だと書かれています。著者はさらに、原価管理と資産の使い方の改善に財務レバレッジの活用が重なって企業価値に寄与する、と示唆しています。
03広がりを動かす力は、段階ごとに入れ替わっていた。フィンランドを対象にした1999年の研究は、4つの調査(回答は合計490・回収率39.5%・うちABCの事例114件)と聞き取り・記録資料から、普及を動かす力は段階で変わると提案しました。最初期の採用は効率の選択で説明でき、離陸期には流行を作る組織の影響が大きく、その後は模倣と効率の選択の両方で説明される、と。見方として並べられたのは、効率の選択・強いられた選択・一時の熱・流行の四つです。

自分がいま、数字のどちら側にいるのか。手がかりは、手元の言い方のほうに出ます。三つとも、会社の規模の話ではなく、手元の数字の話です。
01入れると決めた時点を、変わった時点にしている。1997年の研究が分けていたのは、採用を決めることと、実際に実装して使い続けることでした。決めた側だけを数えると、根付かなかったぶんは手元に残りません。
02手元にあるのが、続いた話だけになっている。同じ研究は、採用した会社のうち相当数が実際には実装していないと報告しています。語られるのは続いた側で、静かに止まったほうは数のうちにしか出てきません。
03数字のおおもとを、同じ言葉で切れていない。引いた5点は、要旨まで読めた範囲では、どれも記録のそろえ方を測ってはいません。それでも、粗利や区分ごとの損益は、おおもとの仕訳が同じ科目・同じ数え方で切られてはじめて読める——というのが、この号の読み筋です。

約27%は、採用を割り付けた実験の結果ではありません。どの企業がABCを選んだかは偶然ではなく、対応づけでは消えない違いが残る——これはこの号の読みで、原典のほうは対応づけの基準を変えても頑健だと書いています。市場にもとづく指標が使われている以上、これは市場で値のつく企業の話であり、一人で帳簿をつける商いはこのデータの中にいません。約27%は3年ぶんの差であり、その先も続くかどうかは、この抄録の範囲では分かりません。
もう一方の「流行」も同じです。2002年の研究は、英米の会計誌に14年ぶん積み上がったABCの文献を縦断・横断に分析し、どう始まり、どう伝えられ、どう研究され、どう関心を集め、どう変わってきたかを見たものでした。関心が立ち上がって山を越え衰える、という形は抄録にありません。全文まで読めたのは、引いた5点のうち0点——読めたのは5点とも公式の抄録までで、そこに無いことは書きません。
約27%は、会計の物差しと
市場の物差しの両方で測られた。
1996年の理論の論文は、経営の流行を「ある手法が経営の進歩の最前線にあるという、移ろいやすい集合的な信念」(“transitory collective beliefs”)と定義しました。流行を作る側——相談を請け負う会社、経営のグル、ビジネス誌、ビジネススクール——は押しつけているのではなく、経営者たちのまだ形にならない好みを先に感じ取り、言葉にし、ほかより先に届ける競争をしている。そう論じた枠組みです。
TRY IT TODAY
- 01PICK
判断に使いたい自分の数字を一つ書く。ある商品の粗利でも、ある月の経費でもよい。
- 02CHECK
その数字のおおもとの記録が、いつも同じ科目・同じ数え方で切られているかを見て、「そろっている」「ぶれている」のどちらかを書く。
- 03RECORD
そろっていれば、その数字で何を見るかを一行。ぶれていれば、その一行は今日は書かずに残す。
名前を一つ増やすたびに、前へ進んだ気がします。けれど1997年の研究が分けて数えていたのは、決めた会社と、実際に使い続けた会社でした。増えた名前が読める数字になるかどうかは、その数字を作っているおおもとの記録が同じ言葉で切られているかにかかっている——というのが、この群の最後にこの号が置く読み筋です。
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