IN ACCOUNTING · ISSUE 431
● 12 SEC区分ごとに損益を並べると、黒字と赤字がきれいに分かれて見えることがあります。けれど家賃や本部の費用のように、どの区分にも共通してかかる費用は、何かの基準で割り振らないとどの区分にも乗りません。この割り振りを配賦(はいふ)といいます。
面積で割るか、人数で割るか、売上で割るかで、各区分に乗る額は変わります。基準を入れ替えると同じ区分が黒にも赤にも見える——これは研究の発見ではなく、割り算の性質です。この号は、どの割り方が正しいかを判定しません。書くのは、配賦について読めた研究が何を測ったのか、それだけです。
割り振られた費用には、計算以外の役目もあると考えた論文があります。1979年に査読誌へ出た理論の論文は、共通費を各部門に乗せることが一括の税のように働いて管理者の使いすぎを抑えうること、そして直接には測りにくい費用の代理になりうることを挙げました。効果を測った実証ではなく、配賦は管理者を統制し動機づける装置として読める、という提案です。

では、割り方を細かく精密にすれば、数字は正確になるのでしょうか。そこに触れた研究を、この号は三つ読みました。測り方はそれぞれ違います——模擬計算、批判的な総説、そして管理者への意見調査。三つのあいだに順位はありません。
01たいてい正確さは増す、と模擬計算は言った。2007年に査読誌へ出た研究は、二段階の配賦のしくみを模擬計算で動かしました。実データではありません。主な結果のひとつは、しくみを部分的に改善するとたいてい全体の正確さは増すが、誤差どうしが打ち消し合う特定の場合は例外になる、というもの。例外として名前が挙がったのは、原価のまとまりの側の集計の誤差と、資源の割り当ての目安の側の測定の誤差が重なる場合でした。
02直すなら第二段階、と同じ模擬計算が続けた。同じ研究の残る結果は二つです。全体の正確さに効くのは第二段階の誤差のほうで、しくみを直すならそこに集中させるべきだ、と。もうひとつは出方の偏りで、原価が低めに出る製品のほうが数は多く、高めに出るのは金額の大きい少数に大きく、というものでした。いずれも模擬計算の上での話です。
03全部原価にも、条件つきの役目がある、という見方。2002年に査読誌へ出た批判的な総説は、実務の多くが全部原価で値段を決める一方、関連原価の考え方では値段は固定費の割り方から独立のはずだ、という理論と実務の食い違いを整理しました。そのうえで、設備の計画と値段づけを一緒に考えてはじめて全部原価の役割がはっきりする、という見方が現れていると書いています。全部原価を無条件に退けてはいません。

手元の表が実力を映しているのか割り方を映しているのかは、数字そのものより、その周りに出ます。
01割り方の名前が、どこにも書かれていない。各区分に乗っている共通費の額だけがあって、それを何の比で割ったのかは表に残っていない。割った本人以外には、あとから確かめる手立てがありません。
02基準を、一つしか試していない。売上の比で割った表はあるが、別の比で割った表が無い。二通りで重い側が入れ替わるかどうかは、並べてみるまで分かりません。
03動かせない分まで、誰かの成績になっている。2008年に査読誌へ出た意見調査は、フランスの管理者265人に、自分では統制できない要因を評価からどう扱ってほしいかを尋ねました。回答は、その要因が社外から来るのか、社内の相互依存や上位の決定から来るのかで有意に違っています。どちらの中和をより強く望むかの向きまでは、この号は読めていません。

三つとも、国内の小さな商いの部門別損益を評価した研究ではありません。模擬計算は実データではなく、総説は自前の実証データを持たず、意見調査は一国の管理者265人の意見です。2000年に査読誌へ出た英国を対象にした歴史の調査もあります。統一原価計算の登場や戦時の政府契約といった場面を追ったもので、配賦のしくみは長いあいだ単純で手続き的なままだった一方、その意味や重要さは時代ごとに多様な利害と必要に仕えてきた、と結んでいます。
原文の全文まで届いたのは6点のうち0点——要旨までが5点、残る1点は書誌だけで、読めていないものについては書きません。1994年に同じ誌へ出た原価の誤差の研究が、その書誌だけの1点にあたります。そして、要旨まで読めた5点の範囲に、区分ごとに損益を出すこと自体が商いの結果をどう動かすかを測った報告はありません。
たいてい正確さは増す——
ただし、模擬計算の上での話。
配賦をやめる、という話でもありません。1979年の理論は、割り振ること自体に統制と動機づけの役目を見ました。2002年の総説は、全部原価を退けるのではなく、設備の計画と値段づけを一緒に考える枠のなかでなら役割がはっきりするという見方が現れている、と書いています。割るか割らないかではなく、何の比で割ったのかを残せるかどうかが、あとから効いてきます。
TRY IT TODAY
- 01SPLIT
紙かメモに今日の日付を書き、自分が扱う数字を二つの区分に分けて名前を付ける。
- 02SHARE
二つに共通してかかっている費用を一つ選び、売上の比で割った額を、それぞれ書く。
- 03RECORD
同じ費用を手間や時間の比でもう一度割り、重くなる側が入れ替わったかを一言書く。
表に残るのは、割ったあとの額だけです。何の比で割ったのかは、書き留めておかないかぎり残りません。模擬計算が言ったのは、細かくすればたいてい正確さは増す、ただし誤差どうしが打ち消し合う特定の場合は例外になる、ということでした。自分がどちらの側にいるのかは、割り方を二通り並べてみるまで分かりません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「部門の数字を見える化するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

