IN ACCOUNTING · ISSUE 429
● 12 SEC「一覧に載せてある。だから、うちの持ち物は管理できている」——固定資産の話で、よく出てくる言い方です。けれど、そこに一行あることが確かめているのは、いつ・いくらで買い、どの方法で費用にしていくと決めたかという記録の存在です。
そして、その記録の書き方のほうが、人の値づけの側を動かしていました。仮の場面を与えて判断させた実験では、帳簿に残る価額が小さいほうの機械に、参加者はより低い値をつけています。中身は同じ機械でした。
固定資産とは、建物・機械・車両・工具・ソフトウエアのように、買ってから何年もかけて使う、金額の大きい持ち物をいいます。減価償却は、その値段を、使う年数に分けて少しずつ費用にしていく手続きです。買ったものを一つずつ、取得日・値段・償却の方法・帳簿に残る価額とともに書き並べた一覧が、その記録にあたります。
一行が問われる先は、少なくとも三つに分かれます。その資産はいまも実際にあるのか(存在)。帳簿に残る価額は、いまの値打ちと合っているのか(価額)。割り当てた年数は、公式の定めに沿っているのか(年数)。一行は、このどれも自動では保証しません。

この号が使ったのは、公式の解説2件と、償却の方法や減損を調べた研究4本です。研究のほうは、仮の場面で判断させた実験2本と、企業のデータを追った1本と、減損の計上を調べた1本に分かれます。測った場所が違うものを、一つの主語にまとめることはできません。 まず、方法の選択が判断に及んだところから。
01実験では、替えるほうを選ぶ人が少なかった。いま使っている資産を使い続けるか、新しいものに替えるかを、仮の場面で管理職に判断させた実験です。毎年同じ額を費用にする方法(定額法)の設定では、替えるほうを選ぶ人が少なかったと報告されています。替えたほうが手元に残る現金は多く、参加者はそれを知らされていました。測られたのは参加者の判断で、実務の記録ではありません。
02同じ機械でも、帳簿に残る価額で値づけが分かれた。別の4つの実験では、参加者が中古の機械に値をつけます。受け入れる意向、下取りの額、競りの値、預けて売る値。どの場面でも、初めの年ほど多く費用にする方法(定率法)で償却された機械のほうが、“for lower prices than identical used capital assets”(中身の同じ中古の資産より低い価格で)手放されました。売値の目安を伝えても、この差は残っています。
03企業のデータのほうでは、投資額の差が結びついていた。企業の実際のデータを追った研究は、初めの年ほど多く費用にする方法を使う会社のほうが、設備への投資が大きかったと報告しています。二十年ほどのあいだにその方法から毎年同じ額の方法へ移っていったこと、方法を変えた会社では変えた後の投資が小さくなったことも、あわせて示されました。割り付けのない観察なので、結びつきの報告です。

自分の記録の、どこを疑えばいいのか。手がかりは、数字そのものより、その数字の出どころのほうにあります。公式に決まっている側と、選んだ結果の側は、同じ一行の中に並んでいます。
01価額を、測られた実態として読んでいる。帳簿に残る価額を、いまの値打ちそのものとして読んでいるとき。価額は、どの方法で費用にすると決めたかの結果です。値打ちが大きく下がったときに価額を切り下げる処理(減損)を調べた研究も、基準が変わった後は業績の悪い年にまとめて出す振る舞いとの結びつきが強まったと報告しています。実態に合わせる側の処理にも、出す年の幅がありました。
02年数を、自分の見立てで置いている。使える年数を、自分の感覚で決めているとき。公式の解説は「この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が財務省令の別表に定められています」と書いています。ソフトウエアについては、複写して販売するための原本と研究開発用のものが3年、その他のものが5年。別表を引いて確かめる側の数字です。
03ずれの大きさを、数字で語っている。記録と現物はこれだけずれている、と数字で言っているとき。読めた範囲に、その数字はありません。 記録の一行と現物のずれを標本で測った会計・監査の研究は、探した範囲では出てきませんでした。現物を見に行くことは実務の常識として語られますが、この号はその効果を数字で飾りません。

ここで挙げた研究が見ているのは、償却の方法や減損を選べる規模の会社と、その設定を与えられた参加者です。一台の車と数点の工具で商いを回す人、固定資産がほとんど無い人は、そのデータの中にいません。「価額は選んだ結果だ」を、小さな記録へ過剰に当てはめる必要はありません。
全文まで読めたのは6点のうち2点で、どちらも公式の解説です。研究4本は要旨までで、読めていないものについては書きません。そして、年数の当てはめや申告が要るかどうかの判断は、この号の仕事ではありません。税理士・公認会計士など専門家への相談に置いてください。
実験の中で、中身の同じ機械に、
違う値がついた。
公式に決まっている側もあります。年数は別表を引けば確かめられ、ソフトウエアのように種類ごとに示されているものもあります。分けて読めば、一行のうち、どこが確かめられる部分で、どこが選んだ結果なのかが見えてきます。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分の固定資産を一つだけ選び、取得日・取得価額・費用にしていく方法・年数・いまの価額を書き写す。
- 02CHECK
その現物がいまも実際にあるかを見て、「あった」「行方不明」「処分済」のどれかを書く。
- 03NOTE
価額のとなりに「これは方法を選んだ結果」と一言添える。他人の資産や他人の管理は点検しない。
一行が保存しているのは、いつ・いくらで買い、どの方法で費用にすると決めたか、です。それは小さくない仕事です。けれどその一行は、現物がいまもそこにあることまでは保証しません。確かめられているのは、記録の存在のほう——この向きだけは、読めた範囲でも動きませんでした。
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