IN ACCOUNTING · ISSUE 428
● 12 SEC「自動化すれば経理は要らない」——そう言われるとき、たいてい隣に「工数が何割減った」という数字が並びます。制度のほうは辿れます。会計の原則も、帳簿を電子で保存する決まりも、条文として実在します。ところが隣の削減率だけは、誰が測ったのかを問われないまま動いていきます。
この号は、その削減率を隠しません。全文まで読めた構造化文献レビューには、人件費や処理時間の削減の幅が集計されています。ただし、幅が集められた先をたどると、学術論文ではない文章の束が控えていました。
仕組みで回すとは、締めや記録や照合を、そのつどの記憶や頑張りに預けず、決まった手順・決まった置き場・決まったタイミングに乗せて、繰り返せる形にしておくことです。自動化は、その手順の一部を道具にやらせること。かつて経理の自動化といえば、人の画面操作をなぞらせる仕組み(RPA)が語られました。いまはクラウドの会計と、明細から仕訳を推測する仕組みの組み合わせが増えています——ただしこの「増えている」は実務の見立てで、査読された測定ではありません。

では、自動化で何が機械に移り、何が人に残るのか。この号が読めたのは、RPAを扱った文献のレビュー2本と、会計・監査の現場を見た3本です。そこから取り出せたのは、次の3つでした。
01集めた125本のうち、学術論文は45本。RPAの主題と課題を整理した構造化文献レビューは、集めた文献125本のうち学術論文は45本(36%)だったと報告しています。分母はこのレビューが選び取った125本で、残る80本は査読を経ていない業界の白書などです。同じレビューは、市場に製品が多く出ているいっぽうで、“there remains much hyperbole around what RPA represents”(RPAが何を指すのかをめぐって、誇大な言葉が多く残る)とも書いていました。
02向く条件の一つは、電子で構造化された入力。同じレビューは、RPAに向く作業の条件を順位のない一覧で並べます。判断の筋道が業務規則で書けること、入力がすべて電子で構造化された形式であること、例外処理が少ないことなどです。例外の多い作業では、自動化も試験も最適化も“delayed or aborted”(遅れる、あるいは中止される)と書かれていました。
03研究63本の総括は、量的な研究が欠けている。別の系統的なマッピング研究は、RPAの文献63本を集めて分類しました。内訳は、事例研究15本・手法22本・総説2本・研究論文24本。著者たちは結論で、この分野の研究はまだ少なく主に質的な論点を扱っているとしたうえで、“quantitative research is missing”(量的な研究が欠けている)と書いています。

自分がいま、どちら側の数字を受け取っているのか。手がかりは、削減率そのものよりも、その数字の書かれ方のほうにあります。測った人と分母が添えられているかどうかが、先に見えます。会計に的を絞った初期の実証も、RPAを導入した組織への聞き取りをまとめたもので、独立した第三者の測定ではありません。
01削減率に、測った人が添えられていない。「工数◯割減」に、誰が測ったのかが書かれていないとき。構造化文献レビューは、人件費で20〜50%、取引処理の費用で30〜60%、処理時間で30〜70%という削減の幅を、集めた125本から集計しています。その125本の内訳は、学術論文45本と、査読を経ていない業界の白書など80本でした。
02例外の話が、後回しになっている。説明がうまくいく典型ばかりで進み、例外が最後に付け足されているとき。文献レビューが向く条件に挙げたのは、電子で構造化された入力、繰り返しの多さ、例外処理の少なさでした。例外は、条件の内側ではなく、外側に置かれています。
03無人化と自動化が、同じ言葉になっている。「機械に任せる」が「人は要らない」に置き換わっているとき。会計・監査へのRPA適用を枠組み化した研究は、何を自動化するかを決めるための三段階の評価手順を示し、内部監査と外部監査の実務者への調査と、2件の事例で検証しました。何を機械に渡すかを決める手順のほうは、人の側にあります。

ここまでの5本は、監査法人や大きな組織の会計・監査の現場を見たものです。印字のある標本は、RPAを導入した組織への聞き取り、内部監査と外部監査の実務者への調査、事例の分析。自分で帳簿を扱う小さな商いや、クラウドの会計にそのまま当てはめられる範囲ではありません。
そして「効果の数字は売り手から来る」という見立てそのものは、どれか1本の逐語から引けるものではありません。削減の幅が、学術論文45本と業界の白書など80本を合わせた125本から集められていること、量的な研究が欠けていること、会計に的を絞った実証が導入した組織への聞き取りであること、条件つきの事例が教育用の事例誌に載ったものであること——この4点を並べたうえでの、編集側の推論です。
削減率の幅は、集計されていた。
集めた125本のうち、研究は45本。
全文まで読めたのは、5本のうち2本。削減の幅が集計されていたのは、そのうちの構造化文献レビューです。要旨まで読めた3本の要旨には、削減率の数値はありません。読めていないものについては、書かれている範囲を超えて足しません。
TRY IT TODAY
- 01LIST
自分がやっている経理の作業を一つ選び、その手順をはじめから終わりまで箇条書きで書き出す。
- 02MARK
各手順に「定型」「判断」「要検討」のどれかの印を付ける。迷ったものは要検討に置く。
- 03COUNT
日付と、書き出した手順の数、印ごとの件数を書き留める。宣伝の削減率は使わない。
画面操作をなぞらせる仕組みから、クラウドと推測の組み合わせへ。道具の名前は替わっていきます。削減の幅は集計されていました——ただし集めた先は、学術論文45本と業界の白書など80本を合わせた125本です。手元に残るのは、自分の手順のどこが定型で、どこが判断かという線引きです。
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