IN ACCOUNTING · ISSUE 418
● 12 SEC銀行の明細を読み込ませると、勘定科目の候補が並びます。「自動で正確に」とうたう道具もあります。正確さは道具が買ってくれる——そう考えたくなります。この号が見るのは、その正確さが、誰にどう確かめられたのかのほうです。
手がかりにしたのは、日本の法令と公的な会計の指針、それに記録の品質を扱った三つの研究です。全文まで読めたのは6点のうち3点。読めていないものについては書きません。そして、自動でつく科目の精度を外から確かめた査読つきの研究は、学術の索引を探した範囲では見当たりませんでした。この号は、どの道具がよいかを選ぶ号ではありません。
仕訳とは、ひとつの取引を借方と貸方の左右に分けて、決められた見出しで書き留めることです。その見出しが勘定科目——現金、売掛金、消耗品費といった、記録を分類する名前にあたります。帳簿は提出物である前に、何が儲かり何が足を引っぱるかを自分に教える鏡でもあります。ここから先は、その分類を「正確にする」とは何を指すのかを見ていきます。

経理では、出どころの性格がまるで違う二種類の言い分が、同じ顔で並びます。片方は条文や公的な指針で、誰でも同じ文面を確かめられます。もう片方は効果の数字——「精度◯%」「工数◯割減」——で、出どころをたどると、査読を経た検証に行き着かないことがあります。条文が実在することと、効果が証明されていることは、別の話です。
01義務のほうは、条文に書いてある。日本の会社法第432条は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と定め、続けて会計帳簿の閉鎖の時から十年間の保存も義務づけています。読めた条文の主語は株式会社で、それ以外の形の商いについてこの条文は語っていません。書いてあるのは義務であって、帳簿をつければ商いが良くなるという効果ではありません。
02記帳の基準も、公の文書にあった。中小企業向けに公表されている公的な会計の指針は、その総論で「記帳は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければならない」と書いています。適時に、と正確に、が並んで置かれています。どちらを上に置くかは、ここには書かれていません。
03品質は、正確さだけではなかった。1996年に経営情報システムの学術誌へ出た郵送の質問紙調査は、米国の大学の経営学大学院の修了者へ送った1,500通のうち届いた1,484通に対し355通(有効回答率24%)の回答から、118の属性を因子分析で20の次元にまとめ、並べ替えの段階で15の次元に絞って4つのまとまりに整理しました。表現の一貫性や解釈できることは、正確さとは別の次元として並んでいます。対象はデータを使う人で、会計の記録ではありません。

自分がいまどちら側の言い分を受け取っているのかは、帳簿の前での言い方に出ます。三つ挙げます。
01「精度◯%」を、条文と同じ重さで置いている。条文は、誰でも同じ文面を確かめられます。いっぽう自動でつく科目の精度は、外から確かめた査読つきの研究が、この号の探した範囲には見当たりませんでした。検証されていないことは、間違っていることとは違います。ただ、確かめられた事実と同じ重さで置くことはできません。
02同じ支出が、月ごとに別の名前になっている。ある月は消耗品費、別の月は雑費。一つひとつは間違いではありません。ただ、あとから見比べたときに、同じものだと読み取れなくなります。これを表現の一貫性の問題として見るのは、調査の結果そのものではなく、この号の読み筋です。
03道具を入れたから正確になった、と結んでいる。候補を出すところまでは道具の仕事です。その候補を採るかどうか、どの科目に寄せるかは、商いの文脈を知っている人の判断に残ります。道具の導入と記録の正確さの関係を測った研究は、この号が読めた範囲にはありません。

一つ。財務諸表の数字の誤りを扱った2015年の研究は、書誌の情報までしか届きませんでした。表題と掲載誌までは分かりますが、中身を読めていないので、何を示した研究かは書きません。二つ。会計情報システムのデータ品質を扱った2012年の論文は、公式の要旨まで。あるのは、取引データの誤りの進み方をモデルにして、課題ごとの制御の方針を求めるという方法の提案で、著者らは一つの生産会社の収益の実現過程を例に使ったと書いています。多くの会社を調べた実証ではありません。
三つ。1949年に定められた企業会計原則は、政府のサイト上に全文が見当たりませんでした。七つの経路をたどっても、届いたのは会計の審議会の案内頁で、そこに企業会計原則への案内は一つもありません。だからこの号は、その一般原則の第一が何かを書きません。読めた代わりが、さきほどの公的な指針です。なお、品質の調査が見ていたのはデータを使う人であって、勘定科目の付け方ではありません。
読めたのは、義務と基準のほう。
効果のほうは、読めなかった。
この数十年で確からしくなったのは、道具が仕訳を正確にしてくれるという便利な因果ではありません。確からしくなったのは、記録の品質が正確さだけではないこと、そして同じものを同じ言葉で書き続ける仕事が、最後は人の判断に残ることのほうです。
TRY IT TODAY
- 01PICK
帳簿か入力の履歴から、似た取引を2〜3の種類、数件ずつ拾う。
- 02COMPARE
種類ごとに、同じ科目で記録されているか、月で別の科目に揺れているかを書き写す。
- 03COUNT
見比べた種類の数と、揺れていた種類の数を書き添える。正しい科目の判断は、ここではしない。
条文は十年の保存まで書き、公的な指針は適時と正確を並べて置きます。どちらも、誰でも同じ文面にたどり着けます。いっぽう「精度◯%」は、この号が探した範囲では、たどり着く先がありませんでした。その差は、正確さを誰が引き受けるのかの差でもあります。同じ取引を、いつも同じ名前で呼ぶ——その仕事は、いまのところ道具の外に残っています。
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