IN ACCOUNTING · ISSUE 419
● 12 SEC誰にいくら請求し、いつ入ったか。一覧にして、入ったぶんから消していく。表があれば漏れない——そう思いたくなります。この号が見るのは、その表の外側にある部分のほうです。
手がかりにしたのは、企業間で使われる支払いの条件を実証した研究、企業間信用の理論と証拠を扱った研究、ブラジルの中小・零細企業の経営者への質問紙、スウェーデンの中小企業のパネル、日本のデータを扱った一冊、そして支払期日の定め方を決めた日本の法律です。本文まで読めたのは条文だけで、研究4点は公式の要旨まで、一冊は目録まででした。読めていないものについては書きません。管理表を作れば入金が漏れなくなるかを試した研究は、この6点にありません。
掛けで売って、まだ受け取っていない代金を売掛金といいます。多くの人がここで管理表をつくります。誰にいくら請求し、いつ入ったかを並べ、入金と請求を突き合わせて消していく——入金消込と呼ばれる作業です。
この号が扱うのは、その記録の側です。複数の請求分がまとめて振り込まれる。手数料が引かれて請求額と合わない。相手の名義と請求先の名義が違う。曖昧に消すと、帳簿の上では終わっているのに、別の請求が未回収のまま残ります。

では、いつ払うかという条件のほうは、何と結びついていたのか。読めた研究が測っていたのは、条件そのものや、掛けをどれだけ使うかという量のほうでした。ただし3点はそれぞれ別の問いを立てており、ひとつの答えに束ねられるものではありません。対象も、時期も、集めたデータの種類も違います。
01条件は、業界ごとに大きく違っていた。1999年の実証研究は、企業間で使われる信用の条件と方針が業界ごとに大きく違うことを記録しました。掛けにするか現金か、掛けなら期日だけか早期の支払いに割引をつけるか——その選択を調べ、結果は、条件を品質と買い手の支払能力についての情報の問題に対する契約上の解と説明する理論を主に支持しています。割り付けのない観察で、この号が読めたのは公式の要旨までです。
02掛けを多く出していたのは、借りられる側。1997年の研究は、資本市場を使いにくい小さな企業に絞り、金融機関からの信用が得られないときほど企業間信用を多く使う、という証拠を報告しました。仕入先が資金の制約された企業に貸すのは、買い手の情報を得るうえで比較優位があり、資産をより効率的に処分でき、暗黙の持分を持つから、と説明されています。そして、信用を得やすい企業ほど、多くの掛けを出していました。要旨まで。
03回収日数や掛け売りの比率が、求める信用と結びついた。ブラジルの2つの州の32市・481社の経営者に尋ねた質問紙(2008〜2010年)をパス解析で調べた研究では、掛け売りの比率・売上債権の回収日数の指標・売上の伸びが、その企業が求める企業間信用の量と正の関係にありました。著者らは、企業間信用が供給網に沿って渡っていくことを示唆すると書いています。自己報告で、割り付けはありません。

自分がいま、表の内側と外側のどちらを見ているのか。手元の記録に、手がかりがあります。
01未回収の総額だけを見ている。合計が動いていないと安心する——そのとき、新しい請求と、何か月も入っていない請求が、ひとつの数字に溶けています。古い順に並べ直すという一手間は、この号が置く読み筋であって、研究が効き目を測った手順ではありません。
02条件を、自分の管理の問題だと思っている。期日が縮まないのは表の作りが甘いからだ、と考える。けれど読めた範囲で記録されていたのは、条件が業界ごとに大きく違うことと、信用を得やすい企業ほど多くの掛けを出していたことでした。どちらも、こちらの様式の巧拙を測った結果ではありません。
03期日の定め方に決まりがある取引だと、気づいていない。日本の法律には、製造委託等代金の支払期日を「委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日…から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」と定めた条文があります(令和7年法律第41号による改正・2026年1月1日施行)。これは義務の側を定めた規定です。自分の取引が当てはまるかどうかの判断は、税理士や弁護士など専門家の領分です。

読めた4点に、割り付けをした実験はひとつもありません。どれも「管理表を作ったら回収がどう変わるか」を測った研究ではなく、要旨まで読めた4点の要旨の範囲にも、その検証はありませんでした。日本のデータを扱った一冊は目録の情報までしか届かず、中身については書きません。
もう1点、支払う側を測った研究があります。スウェーデンの中小企業15,897社(2009〜2012年・5つの産業部門)のパネルでは、企業間信用の利用が収益性と負の関連を示し、買掛金の少ない中小企業のほうが収益性は高いと報告されました。これは買掛金=支払う側で測った指標で、回収の側の指標ではありません。
業界ごとの条件の違いは、記録されている。
表の効き目のほうは、読めた範囲で測られていない。
だからこの号が置けるのは、結果ではなく順番です。総額ではなく、古さで見る。まだ入金が確認できていない請求を、日付の古い順に並べ直す。これは研究が効き目を示した手順ではなく、記録の単位を変えてみるためにALIFEが提案する入口です。
TRY IT TODAY
- 01LIST
手元の請求の記録と入金の記録を突き合わせ、まだ入金が確認できていない請求を拾い出す。
- 02SORT
請求日(または締め日)の古い順に、日付だけを手がかりに上から並べて書き出す。
- 03COUNT
未回収の件数と、いちばん古い請求の日付を書き添える。相手の評価や催促の判断は書かない。
精巧な表をつくるほど、回収できているような安心が生まれます。けれど、そこに映っているのはこちらの記録のほうです。読めた範囲で記録されていたのは、条件が業界ごとに違うこと、多くの掛けを出していたのが信用を得やすい側だったこと、求める信用が回収日数や掛け売りの比率と結びついていたこと——いずれも、表の出来ばえを測った結果ではありませんでした。次の号は、受け取る側から、払う側の記録へ移ります。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「請求と入金を漏らさないには?」を、もっと深く学ぶ。→
