IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 410
● 12 SECコンタクト削減——問い合わせが来る前に、よくある質問や自動返信で自分で片づけてもらい、人が受ける件数を下げる取り組みです。件数が下がれば手間も費用も下がる。ひとりで店を回していて、返信に使う時間を削りたいなら、いちばん切実な話だと思います。
ところが、読めた範囲の実証を並べると、測られていたのは「件数が減ったあと」ではありませんでした。測られていたのは、寄せた先で人がどうしたかのほうです。この号で使う出典は5点。全文まで読めたのは5点のうち0点で、読めていない中身については書きません。
コンタクト削減(contact deflection)は、人が受ける問い合わせの件数を下げる取り組みの総称です。ここで先に分けておきたいことがあります。件数が下がる道は二つあって、自分の側の案内を直したから来なくなったのと、窓口が見つけにくくて来られなかったのは、意味が正反対なのに、件数の上では同じに見えます。この区別は研究が測ったものではなく、この号の読み筋です。

では、研究のほうは何を測っていたのか。読めた5点が測っていたのは、削減そのものではなく、安い窓口やセルフへ客を寄せた先で、人がどうしたかでした。実験の形で組まれたのは5点のうち1点で、残りは観察の記録と調査です。順に見ます。
01この4年の記録で低かったのは、買う量だった。ウェブとカタログで売る単一の小売業者の4年ぶんの顧客記録に、推定モデルを当てた研究です。要旨は “Web purchasing is associated with lower subsequent purchase volumes than when buying from other outlets”——ウェブで買うことは、他の窓口で買うより以後の購買量の低さと結びついていた、と書いています。もう一方の刃は「移せば得」ではなく、販促の働きかけがその負を相殺していたという別の層です。割り付けのない観察で、買う場所の移行の記録です。
02著者が反対したのは、完全に寄せることだった。縦断の顧客データで、セルフと対人の利用比率と離反の関係を見た研究です。関係は直線ではなく、どちらも中くらいに使われているときに離反が最も低い形でした。効きは時間とともに弱まる、とも書かれています。著者の結論は、完全にセルフへ寄せるべきではない、とくに関係の初めには、というものでした。件数を減らし切る方向は、ここでは支持されていません。
03良く受け止められたのは、都合が良いときだった。三つの研究で、利用者の体験と、使ったことのない人の受け止めを調べています。要旨には “convenience had a strong positive effect on the perceived accuracy, speed, and exploration intentions of an SST”——都合の良さが、正確さ・速さ・試してみる意向の受け止めと強く正に結びついた、とあります。使ったことのない人では、信頼の受け止めが、人とのやりとりを求める度合いにいちばん大きく関わっていました。いずれも調査で見られた結びつきで、割り付けはありません。

自分の削減が「隠す」側へ滑っていないかは、日ごろの言い方に出ます。三つのうち一つは、鉄道の発券と旅行案内という場面で組まれた実験の話です。場面を設けて測った結果なので、そのまま自分の窓口の数字にはなりません。目印として読みます。
01選ばせずに、使わせている。鉄道の発券と旅行案内の場面で組まれた実験の要旨には “forced use leads to negative attitudes toward using the TBSS as well as toward the service provider”——強いられた利用は、その仕組みへの態度だけでなく、提供する側への態度まで悪くする、とあります。行動意図へは間接的に悪影響が及んだ、とも書かれています。結果の文に並ぶのは態度と行動意図で、満足ではありません。
02減った件数を、そのまま成果として数えている。件数は、案内を直しても下がりますし、窓口が見つけにくくても下がります。下がった件数だけを見ると、この二つは見分けられません。これは研究が測った区別ではなく、この号の読み筋です。読めた5点の要旨に、削減率そのものの帰結を測った記述はありません。
03つまずいた人の行き先を、決めていない。ウェブでの調査で集めた800件を超える出来事を分類した研究は、要旨で “to discern the sources of satisfaction and dissatisfaction with SSTs” と書いています。同じ接点に、満足の源と不満の源の両方が記録されている、ということです。失敗したときの不満が特に大きい、という言明のほうは、要旨にはありません。

測られた相手を並べます。買う場所の移行は、ウェブとカタログで売る単一の小売業者の4年ぶんの顧客記録。離反は縦断の顧客データ。強いられた利用は、鉄道の発券と旅行案内という単一の場面の実験。都合の研究は、利用者と、使ったことのない人への調査です。ひとりで受けている窓口は、どこにも入っていません。
5点とも要旨までしか届いておらず、全文まで読めたのは0点です。要旨の範囲に、問い合わせの件数を減らしたこと自体の帰結——削減率が何を意味するか——を測った記述はありません。だからこの号は、減らせば良いとも、減らしてはいけないとも書きません。
件数は、
どちらの理由でも下がる。
直したから減ったのと、来られなくて減ったのは、同じ数字になります。研究のほうが測っていたのは、その手前——寄せた先で人がどうしたか、でした。件数と理由は、別に確かめないと分かりません。同じ数字を見て、どちらが起きたのかは、件数の側からは決められません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
日付を書き、直近に自分の窓口へ来た問い合わせを、思い出せるだけ選ぶ。
- 02SORT
一つずつ、自分の案内を直せば来なかったものか、人が受けるべきものかを書く。
- 03COUNT
それぞれの件数を数え、多かった側に印を付ける。良し悪しは書かない。
読めた範囲で確からしくなったのは、減らせば良いという向きではありませんでした。完全に寄せる方向は著者自身が反対し、強いられた先では提供する側への態度まで下がり、良く受け止められたのは都合が良いときでした。どれも別々の相手の、別々の場面の話です。自分の窓口で件数がどちらの理由で減ったのかは、まだ、どの記録にも入っていません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「問い合わせ自体を減らすには?」を、もっと深く学ぶ。→
