IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 408
● 12 SECサービスの良し悪しは、感じ方の話に見えます。だからこそ、誰が使っても同じ答えが出る標準の物差しがあれば助かる——そう考えて作られた尺度が、実際にあります。
ただ、その目盛りが確かかどうかは、提案の直後から問われました。この号が当たった学術の6点は、いずれも公式の要旨までで、本文には届いていません。読めていないことは書きません。正しい測り方も出しません。
その尺度は、客が事前に抱く期待と、受けたあとの知覚(受け取った印象)の差を、22項目・5つの次元で測ります。頼りになるか、すぐ応じるか、安心できるか、こちらの事情を汲むか、設備や見た目はどうか——この5つです。期待を下回れば低い、上回れば高い。引き算で品質を数値にする、という発想でした。

問題は、その先にあります。この引き算が、品質を安定して測れているのか。 1996年には、理論の面と運用の面から寄せられた懸念を整理し、次に何を調べるべきかを示した総説も出ました。批判があり、批判への反論があり、その反論への再反論がある——要旨まで読めた6点は、その順に並んでいます。
01五つの次元は、いつも五つに分かれなかった。1992年、経営学の学術誌に出た実証研究は、この尺度を調査データで確かめ、サービス品質の次元の数は、調べる対象のサービスの種類によって変わりうると報告しました。項目の言い回しが肯定と否定で混じっていること、差で測る現在のやり方についても難点を挙げ、使うなら慎重にと書いています。要旨に標本の人数や業種の印字はありません。
02片方の「期待」が、あいまいだと言われた。1997年、情報システムの学術誌に出た総説は、概念上の難点として差で測ること・期待という概念のあいまいさ・業種をまたいで一つの尺度を使うことの不適切さを挙げました。実証上は、差を取ることに結びついた信頼性の低下、収束的妥当性の弱さ(同じものを測るはずの別の指標とそろわない)、予測的妥当性の弱さ(あとの結果を当てられない)を挙げています。
03同じ号の続きで、反論と再反論が並んだ。1994年、同じ学術誌の同じ号に、二本が続けて載りました。前の一本は提案した側で、寄せられた批判に応答し、その多くについて “the validity and alleged severity of many of those concerns are questionable”(批判の妥当性と、深刻だという主張は疑わしい)と述べて尺度を擁護しています。後の一本は批判した側で、その反論に応答しました。

自分がいま、どちら側で数字を扱っているのか。手元の言い方のほうに出ます。
01点数が出たら、測れたことにしている。数字が並ぶと、品質は測れた気がします。ただ、要旨まで読めた範囲でたどれたのは、目盛りそのものが問われ続けてきた経緯のほうでした。点が出ることと、その点が品質を表していることは別——というのが、この号の読み筋です。
02他所の様式を、そのまま持ち込んでいる。別の分野の学術誌の総説は、業種をまたいで一つの尺度を使うことの不適切さを、概念上の難点に挙げていました。借りてきた設問が自分の場面に合うかどうかは、借りた時点では分かりません。合わなさそうな項目を数えるところまでが、手元でできることです。
03期待をいつ聞いたか、控えていない。引き算の片方は、客が事前に抱く期待です。期待という概念のあいまいさは、概念上の難点として挙げられていました。いつ、どんな言い方で聞いたのかを控えていなければ、出た差がどこから来たのかも、あとから確かめようがありません。

断っておきます。6点はいずれも公式の要旨までで、本文には届いていません。要旨の範囲で読めた向きだけを運んでいます。1992年の実証研究が誰を何人調べたのかも、要旨に印字がなく、書けません。
そして、両論の一方を正しい値として採ることもしません。再反論の側は、提案した側の主な懸念について “supported neither by a critical review of their discussion nor the emerging literature”(彼ら自身の議論を批判的に検討しても、現れつつある文献によっても支持されない)と述べています。提案した側は、同じ号で逆を述べました。互いに相手を退けたまま、要旨の範囲では決着が見えません。
数字が出たことと、
目盛りが確かめられたことは、別。
それでも、この尺度は使われ続けました。2009年に出た二十年ぶん(1988年から2008年まで)の見直しは、理論面と実証面の批判を数多く並べたうえで、それでも有用な道具ではあると結論しています。ただしこれは網羅的に集めた検討ではないと、その論文自身が断っており、まとめられた適用例は30件の抜粋でした。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分が受け取っている満足度の点や、客に配っているアンケートを一つ選び、今日の日付と一緒に書く。
- 02COPY
設問を見て、期待との差を聞いているか、受けた印象だけを聞いているかを、そのまま書き写す。
- 03MARK
自分の場面に合わなさそうな項目に印を付け、その数だけを書き添える。直す作業はしない。
長く使われてきたことと、品質を本当に測れると確かめられたことは、別の話です。要旨の範囲で見えたのは、次元の数は調べる対象のサービスの種類によって変わりうるという報告と、期待という概念のあいまいさ、そして同じ号の続きで交わされた反論と再反論でした。物差しを捨てる話ではありません。目盛りの根拠が、まだ開いたままだという話です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「サービス品質を測るには?」を、もっと深く学ぶ。→