IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 407
● 12 SEC同じチェック表を配って点をつけ、応対をきちんと見ていれば、対応の質はそろう。手順としては、そのとおりに見えます。
先に断っておきます。この号が当たったのは学術の6点で、全文まで読めたのは0点、要旨まで読めたのが6点でした。読めていないことは書きません。 そろえ方の手引きも書きません。ここで見るのは、点をつける側の一致がどれくらいだったかと、見られている側で何が測られたかの二つです。
一つは採点。決めた項目に沿って、一つの応対に点や評価をつけることです。もう一つはモニタリング——応対を電子的に記録して観察する仕組みはEPM(電子的パフォーマンスモニタリング)と呼ばれます。この分野の見取り図にあたるのは、新しくデータを取らずに研究を並べ直した総説が二つ。2000年のものは概念の枠組みと文献のレビュー、2020年のものは監視の特徴を型に分けて見渡したものです。どちらも、束ねた研究の本数は示していません。

では、その一致はどれくらいなのか。見られている側では、何が起きているのか。要旨まで読めた6点のうち、数字がついていたのは三つの場面でした。
01働きぶりの採点で、別々の人の一致は中程度。働きぶりの評価の一致を、10の側面で束ねた分析です。上司がつけた全般的な働きぶりでは、別々の人どうしの一致が平均.52——1に近いほど一致、0なら一致しないという指標です。上司の評価は同僚より一致が高く、どの場合も、別々の人どうしの一致は、同じ人が二度つけたときより低いとあります。扱いは職務の業績評価一般で、応対品質の採点ではありません。読めた範囲に、本数の印字はありません。
02監視を三つに分けると、負に振れたのは強さの側。英国のコールセンター2社の応対担当347人の質問紙です。監視を〈業績に関わる中身(反応の速さ・基準の明確さ)〉〈目的(罰か、育てる向きか)〉〈感じられる強さ〉に分けると、中身と目的は幸福感と正の関連、強く負の関連は強さの側でした。感情労働(感情を仕事の一部として整えて出すこと)が両者をつなぐという経路は、仮説どおりの形では支持されていません。一時点の自己報告です。
03監視の頻度が高いほど、遂行と助け合いは良好。現場での調査が二つ。一つ目は時間を追った記録で、続けて行う評価の間隔が短いほど、通話品質の指標でみた課題の遂行が良好でした。二つ目はコールセンター2社で、上司と部下、監視の仕組みの記録を突き合わせたもの。上司が監視をよく使うほど、課題の遂行と、自発的な助け合いの行動が良好で、不利益になる行動とは明確な関連が示されませんでした。負の側はここには出ていません。

自分がいま、どちらの一致を見ているのか。手元の言い方のほうに出ます。
01同じ人が二度つけて、そろったと思っている。同じ人が二度つければ、評価は近くなります。束ねた分析が報告したのは、どの場合も、別々の人どうしの一致は、同じ人が二度つけたときの一致より低いということでした。自分で読み返して納得した状態と、別の人が同じ点をつける状態は、別々に確かめるしかない——というのが、この号の読み筋です。
02強さのほうを、増やしている。監視の三つの側面のうち、幸福感と正の関連が出ていたのは中身と目的で、強く負の関連が出たのは感じられる強さでした。同じ質問紙では、仕事の裁量と上司の支えが、強さと幸福感の関係を左右する向きに働いたとも報告されています。回数や細かさを増やす前に、いま増やしているのがどの側面かを分けておく手があります。
03監視そのものの、良し悪しを言っている。2020年の総説は、この分野には食い違う知見があると書き、監視は多面的で、文脈や心のはたらきに関わる変数が関わってくると整理しました。2000年の総説のほうは、受け手の態度と動機づけへの影響を枠組みに並べています。良いか悪いかの二択ではなく、どの側面が、どの場面で、という形に置き直すのが、この二つの見取り図の立て方です。

標本を断っておきます。一致の数字は職務の業績評価一般を束ねたもので、応対品質の採点の一致ではありません。三つに分けた結果は、英国のコールセンター2社の347人が一時点で答えた質問紙で、どちらが先かは分かりません。頻度の結果は現場での二つの調査、通話品質の指標は記録から、助け合いと不利益の行動は上司の評価から測られています。
残る一点は実験室での調査です。データ入力の課題で監視の有無を置いたところ、熟練の高い人では監視された側の入力件数が多く、熟練の低い人では逆の型が出ました。監視されなかった人と、結束した集団の一員が、最もストレスを感じていなかったとも報告されています。データ入力の課題であって、客への応対ではありません。全文まで読めたのは6点のうち0点で、読めていないことは書きません。
同じ人が二度つけた一致は、
別々の人どうしの一致より、どの場合も高かった。
だから、点が近いことは、そろっている証拠にはなりません。その近さが同じ人の中で起きているのか、別々の人どうしで起きているのかで、意味が変わります。監視のほうも一枚岩ではありませんでした。中身と目的は幸福感と正の側に、感じられる強さは負の側にあり、裁量と支えがその関係を左右する向きに働いていました。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分が過去にした応対を一つ思い出して選び、今日の日付と一緒に書く。
- 02RATE
その応対を自分の基準で採点する。点でも、良い/普通/要改善でもよい。
- 03MARK
採点が左右されそうな要素を書き、基準が曖昧だった項目に印を付けて数える。
そろえるという言葉には、二つが入っています。点をつける人どうしが同じ点をつけること。そして、見られている側の幸福感が下がらないこと。読めた範囲で数字がついていたのは、前者では別々の人どうしの一致が中程度だったこと、後者では負に振れたのが強さの側だったことでした。監視すればそろう、も、監視は必ず悪い、も、この6点の要旨の範囲からは出てきません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「対応の質を揃えるには?」を、もっと深く学ぶ。→