IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 404

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

同じ質問が何度も来るなら、答えを一度書いて置く。よくある質問のページです。次からは読んで解決してもらえるから、問い合わせは減る——理屈は、そのとおりに見えます。

ただ、その「減る」を測った数字を探すと、様子が違いました。先に断っておくと、この号が当たったのは学術の6点と、運用の体系を出している団体の公式ページ。学術の6点のうち、要旨まで読めたのは4点で、2点は要旨にも届いていません。読めていないことは書きません。 育て方の手引きも書きません。

FAQ(Frequently Asked Questions=よくある質問)は、客が読んで自分で用件を済ませられるようにした、いちばん身近な知識のページです。この運用には、同業の企業が集まった団体がまとめた方法論の体系があり、名前もついています。ただ、その体系は学会誌で査読を通った理論ではありません。公式ページには、その体系を認定できる唯一の機関は自分たちだ、と団体自身が書いています。由緒はある。けれど由緒の出どころは、査読ではなく実務家の合意のほうです。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
体系を維持する団体が、その体系の唯一の認定機関でもある。由緒と、効き目の証明は別の話。 Visual: ALIFE

では、「書けば減る」を測った数字はどこにあるのか。要旨まで読めた4点のうち、客が自分で調べる側を測ったのは1点だけでした。残る3点は、社内で使う知識の置き場——担当者が答えを探し、担当者が書き込む側——の研究です。まず、その1点から。

01電話は、14%多かった。米国の大手健康保険会社の窓口で行われた現地調査です。自分の保険・請求・給付をWebで調べられる仕組みの利用と、電話の件数の関係を、使った人と使わなかった人の前後の変わり方を比べる方法で推定しました。結果は、電話の件数が14%多い。測ったのは費用ではなく件数です。無作為に割り付けた実験ではありません。

02はっきり書けた情報だけ、29%減った。同じ窓口の続きです。Webの上で曖昧でなく、すぐ取り出せる情報については、その件についての電話が29%減ったと報告されました。いっぽう曖昧な情報については、電話は大幅に増えたとあります。減る側と増える側が、一つの調査の中に同居しています。医療保険という、読むだけでは決着しにくい情報を扱う場面の数字です。

03置き場から、学びはあまり起きていなかった。技術サポートの窓口で、担当者が同僚や手引きではなく社内の知識の置き場を使うのはなぜか、を調べた研究です。要旨は、意外な結果として学びはあまり起きていないことを挙げ、担当者は製品の理解を深めるより解き方の手順を探していたと書きます。そのうえで、効率と学習のあいだには内在的な緊張があるとまとめました。客が読むページの話ではありません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル
増えた側、減った側、学びの薄さ。三つとも、置いた本数の外側で起きている。 Visual: ALIFE

自分がいま、どちらを数えているのか。手元の言い方のほうに出ます。

01本数のほうだけ、数えている。ページが何本あるかは自分で数えられます。読まれて用件が片づいた数は、別に数えないと分かりません。要旨まで読めた4点のうち、客が自分で調べる側を測ったのは1点(米国の大手健保1社)で、そこで電話は減らずに増え、別の入口では減っていました。本数と問い合わせの増減は別々に数えるしかない——というのが、この号の読み筋です。

02体系を入れたことを、成果にしている。体系のほうには由緒があります。公式ページは、その体系を作った団体が唯一の認定機関だと明記していました。ただ、認定の仕組みがあることと、効き目が確かめられていることは別です。学会誌の査読を通った理論ではなく、実務家の合意でまとまった方法論だ、という位置づけのほうを先に置いておきます。

03確かめた記録が、どこにも残っていない。書かれたものを確かめる過程には、かかる時間・見えやすさ・制約の強さという三つの側面があります。これを調べた実証は、透明で、育てる方向の確認のしかたが書き込みを促す、と報告しました。ただし対象は社内の置き場へ書く側で、客が読むページの話ではありません。確かめた記録が無ければ、確かめたかどうかも分かりません。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床のコートと鍵
本数だけ数える、導入を成果にする、記録が残っていない。三つとも、言い方に出る。 Visual: ALIFE

標本を断っておきます。要旨まで読めた4点のうち3点は、社内で使う知識の置き場の研究でした。技術サポートの担当者、置き場へ書き込む側、欧州の大手自動車部品サプライヤで研究開発に携わる121人——最後の一つは、新しい車を画面の上で試作する場面の質問紙です。中身の正確さ・書式・欠けの無さは再利用を、仕組みのつながりや応答の速さは探し出すことを、別々に左右したと報告されています。客が読むページを対象にした研究は、この4点の要旨の範囲に見当たりませんでした。

客の側を測った1点も、米国の大手健康保険会社の窓口の記録です。14%も29%も、その場面の数字で、あなたの案内文に同じ幅が出るとは書けません。そして残る2点は要旨にも届いていないので、そこに何が書いてあるかも、無いとも、書けません。

書いた本数は、自分で数えられる。
読まれた数は、別に数えないと分からない。

だから「育てる」という言葉の中身を、先に分けておきます。書いて増やすことと、見つかって、確かで、古びていない状態を保つこと。前者は自分で数えられます。後者は、読む人の側からしか分かりません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    客に向けて出している案内文や自動返信から項目を三つ選び、今日の日付と一緒に書く。

  2. 02DATE

    それぞれ、中身を最後に確かめたのがいつか。思い出せなければ「不明」と書く。

  3. 03MARK

    いま読んで用件が片づくかに、はい/いいえ/どちらとも、の印を付け、件数だけ数える。

10分。直す作業はしません。誰かに尋ねる必要もなく、思い出して書くだけの作業です。「不明」が三つでも、そのまま記録します。これは研究結果そのものではなく、記録の単位を変えてみるためにALIFEが提案する実践入口です。

本数を増やすことと、使われる状態を保つこと。同じ言葉に、二つが入っています。読めた範囲で数字がついていたのは、客が自分で調べられるようにしたあとに電話がどう動いたか、という一点だけでした。そこで動いたのは、その健保1社の窓口では、減る側ではありませんでした。同じ研究の中で、曖昧でない情報では減った、という向きも並んでいます。

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ISSUE 403この記録で減ったのは、手数ではなかった。ISSUE 405満足は上がり、買い直す気は動かなかった。
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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。