IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 403
● 12 SECセルフサービス——客が自分で用件を済ませられるようにする設計です。予約ページ、注文フォーム、自動返信、よくある質問。一人で店をやっていても、置いた覚えのあるものばかりだと思います。窓口を自分ひとりで兼ねているほど、置きたくなる仕組みでもあります。うたい文句はいつも同じで、客も自分も楽になる、と。
ところが、実際の顧客の記録を測った研究を並べると、その一本道は出てきません。ある大手銀行の個人向け顧客を30か月観察した記録で、オンラインの窓口の採用と結びついていたのは、顧客1人あたりの推定費用の上昇のほうでした。この号で使う出典は5点。全文まで読めたのは5点のうち0点で、読めていない中身については書きません。
セルフサービス(Self-Service Technology)は、対応する人を介さずに客が自分で用件を済ませる仕組みを指します。2000年の研究は、ウェブでの調査で集めた800件を超える出来事の記録を分類し、満足の源と不満の源を見分けました。2005年の研究は、選べる状況で実際に使ってみるかどうかを調べ、役割の明確さ・動機・能力という受け手側の準備が、仕組みの特徴や個人差と試用のあいだをつなぐ主な媒介(あいだを取り持つ役割)だったと報告しています。どちらも要旨までしか届いていません。

2000年の研究は、分類した出来事の種類が、客が何のせいだと考えるか、苦情を言うか、人に話すか、また使うかという行動と結びついていたことも報告しています。つまり、使ってもらえるかどうかは、仕組みの出来だけで決まってはいませんでした。では「自分も楽になる」の側はどうなのか。ここからは、実際の顧客の記録で測られた三つを見ます。
01この30か月では、費用は下がらなかった。米国の大手銀行の個人向け顧客を30か月観察した記録です。オンラインの窓口の採用と結びついていたのは、ATMや自動音声といった、より費用のかかるセルフの窓口からの置き換えと、費用のかかる窓口(支店・電話)での利用の増加、取引総数の実質的な増加、そしてそれらの重なりから生じた 顧客1人あたりの推定費用の上昇と、短期の顧客収益性の低下でした。割り付けのない観察の記録なので、採用が費用を上げたとは言えません。
02同じ記録で、継続率のほうは高かった。同じ30か月の記録で、オンラインの窓口の利用は、1年・2年・3年のどの期間でも高い継続率と結びついていました。要旨にあるのは “higher customer retention rates over one-, two-, and three-year horizons” という一文です。自分から選んで使い始める人の偏り(自己選択)を統制しても、この関係は正のままだったとあります。費用の側と継続の側は、同じ記録の中で逆を向いたまま並んでいます。
03離れにくかったのは、どちらも中くらいのとき。別の研究は、縦断の顧客データで、セルフと対人の利用比率と離反の関係を見ました。関係は U字で、要旨には “intermediate levels of both self-service and personal service use being associated with the lowest likelihood of defection”——どちらも中くらいに使われているときに離反の起こりやすさが最も低い、とあります。この効きは時間とともに弱まる、とも書かれています。

ここまでは実際の顧客の記録でした。残る一本は、鉄道の発券と旅行案内という場面で組まれた実験です。この号で使った5点のうち、強制されるかどうかを割り付けて比べているのは、この一本だけです。場面を設けて測った結果なので、そのまま自分の店の数字にはなりません。目印として読みます。
01「これしか無い」形になっている。鉄道の発券と旅行案内という場面で組まれた実験では、強制された利用が、その仕組みへの態度と、提供する側への態度を悪くし、間接的に行動意図へ悪影響を及ぼした、と報告されています。結果の文に並んでいるのは態度と行動意図で、満足ではありません。
02人に連絡する道が、画面から見えない。同じ実験の要旨には “offering interaction with an employee as a fall-back option offsets the negative consequences of forced use”——従業員とのやりとりを逃げ道として用意しておくと、強制の負の帰結が相殺される、とあります。相殺の対象は、この実験で測られた態度と行動意図です。
03関係の初めから、全部を任せている。縦断データの研究の結びは “firms should not shift customers toward self-service channels completely, especially not at the beginning of a relationship”——完全にセルフへ移すべきではない、とくに関係の初めには、という著者自身の結論です。効きの形は、上のU字と、時間による減衰でした。

測られた相手を並べておきます。費用と継続の記録は米国の大手銀行の個人向け顧客、離反の研究は縦断の顧客データ、強制の研究は鉄道という単一の場面で組まれた実験です。注文フォームを一枚置いただけの店や、予約ページしかない場所は、ここには入っていません。
この号は、セルフを入れれば満足や利益が上がるかは書きません。割り付けのある実験はこのうち一本だけで、残りは観察の記録です。5点とも要旨までしか届いておらず、標本の国や期間が要旨に印字されていないものもあります。
この30か月で上がったのは、
顧客1人あたりの費用と、継続率の両方だった。
二つは同じ記録の中に並んでいます。安くなったから続いた、でもなければ、続いたから安くなった、でもない。割り付けのない記録なので、どちらの向きも読み取れません。分かるのは、費用と継続が同じ方向には動かなかった、ということだけです。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分が客に用意した入り口を一つ選ぶ。注文フォーム、予約ページ、自動返信、よくある質問のどれか。
- 02OPEN
客の目でそれを開き、人に連絡する道が見える場所にあるか、無いかを書く。
- 03RECORD
それを使わずに済ませる別の道が残っているか、いないかを書く。良し悪しは書かない。
読めた範囲で確からしくなったのは、セルフにすれば双方が楽になるという一本道ではありませんでした。費用と継続は同じ記録の中で逆を向き、離反がいちばん低かったのはどちらも中くらいのときで、逃げ道を用意すると強制の負の帰結が相殺されていました。どれも別々の相手の、別々の場面の話です。自分の入り口で誰が楽になったのかは、まだ、どの記録にも入っていません。
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