IN CUSTOMER SUCCESS · ISSUE 402
● 12 SEC問い合わせに応える側に立つと、目標はたいてい一度で片づけることになります。一次対応での解決——FCR(First Contact Resolution)。一度のやりとりで用件が片づいた割合を数える指標です。
この号は、その割合を上げる手つきを書きません。見るのは数え方のほうです。誰が「片づいた」と判定し、何日の音沙汰でそう数え、別の窓口から来た同じ用件をどう扱うのか。全文まで読めたのは6点のうち1点でした。読めていないものについては書きません。
言葉をほどきます。たらい回しは、用件が窓口から窓口へ回ってどこでも片づかないこと。引き継ぎは、手に負えない用件を別の担当へ渡すことです。前者は避けたいけれど後者は必要な手続きで、二つを一緒にすると「割合を守るために渡さない」が起きます。一次対応での解決は、片づいたと数えた件数を受けた件数で割った数です。分子の決め方——誰が判定するか、何日待つか、別の窓口からの再連絡を同じ用件と見るか——が変われば、同じ一日でも割合は変わります。
たとえば、再び連絡が来なかったことを解決の根拠にするなら、その観測の窓は24時間なのか、7日なのか、30日なのか。窓を短く取るほど、同じ記録でも割合は高く出ます。どれを選んだかが書かれていなければ、他所の数字と並べても意味は取れません。

では、その決め方はどこに書いてあるのか。読めた範囲では、測り方をそろえた規格に行き当たりませんでした。代わりに置かれていたのは、別々の三つの手がかりです。管理者に尋ねた調査、応対の直後に配った質問紙、現場に張りついた観察。いずれも関連と記述の研究で、「こうすれば良くなる」を確かめた実験ではありません。
01ある調査では、指標の達成が目的になっていた。管理者に質問紙で尋ね、続けて深く聞き取った2006年の研究は、指標が通話そのものへ注意を集め、顧客や組織から見た通話の結果へは向かわなかったと報告しました——“the achievement of the relevant KPI became a goal in its own right”(該当する指標の達成が、それ自体で一つの目的になった)。管理者の申告を集めた調査で、効果を測った実験ではありません。
02この108人では、長さと待ち時間の寄与は小さかった。ドイツで移動体通信の顧客108人が、問い合わせを終えた直後に質問紙へ答えた2012年の研究です。満足ともっとも近く結びついていたのは対話の前段の手続きの質と用件に即した担当者の知識でした——“the objective duration of talk and waiting periods contributed much less toward explaining care satisfaction”(客観的な通話時間と待ち時間は、満足の説明にずっと寄与が小さかった)。関連を推定した観察で、108人という小さな標本です。
03ある一つのセンターでは、設計と回し方がずれていた。四つの部門にまたがる13のチームに張りついて通話を観察し、指導役と管理者へ聞き取った2016年の質的な事例研究は、こう報告しました——“Problems with call routing and rerouting negatively affected operational efficiency and undermined customer satisfaction.”(振り分けと振り直しの問題は、業務の効率に負の影響を与え、顧客満足を損なった)。著者自身が、単一の事例なのでさらに研究が要ると書いています。

手元でも見分けられます。ここから先は研究が示した手順ではなく、記録の見分け方としてこの号が置く三つです。自分が書いた記録の中に、次の形が混ざっていないかを見ます。
01片づいたと書いた日しか、残っていない。判定した日は書いてあるのに、そのあとで相手から連絡が来た日が同じ欄にない。何日の音沙汰を根拠にしたのかが、記録から読み取れません。
02別の窓口から来た同じ用件が、別件になっている。メールで受けた件が電話でもう一度来たとき、二件と数えたのか、同じ一件と数えたのか。決めていないと、日によって変わります。
03渡した分が、どちらの欄にもない。別の担当へ渡した用件を、自分の未解決にも相手の受付にも書いていない。渡した件数を書き出すだけで、割合の分母は変わります。

ここまでを読むと「割合は当てにならない」に聞こえるかもしれませんが、肯定の側も印字されています。コールセンターでの満足の決め手を扱った文献を読み合わせた2016年のレビューは、先行研究を受けてこう整理しました——“first call resolution, as a performance indicator, drives customer satisfaction”(一次解決は、業績指標として顧客満足を駆動する)。この一文は、この号が全文まで読めた唯一の資料にあります。
ただしそのレビューの著者自身が、扱ったのは論文の文章であってデータの分析ではない、統合するならメタ分析が要る、と限界を書いています。引かれている先行研究の一つは、一次解決を主役に据えた2011年の査読論文です。読めた範囲で言えるのは、測り方をそろえた規格には行き当たらなかったこと、一次解決と満足の結びつきについては肯定側の整理が印字されていること、そして通話時間や待ち時間の寄与が小さいという報告は、一次解決ではなく速さについての別の話であることまでです。
ある一社では、何年も調べたあとに、
良くならなかった経歴が残った。
2001年に出た一社の事例研究は、顧客の受け止めを何年も調べ続けたのに——“a history of subsequent lack of service improvement”(その後、サービスが良くならなかった経歴)——と書いたうえで、観察と、階層ごとの管理者への聞き取りと、応対する人たちの座談から、直すべき点を洗い出しました。調べることと、良くなることは、同じではありませんでした。
TRY IT TODAY
- 01LIST
直近に自分が返した問い合わせを、思い出せる範囲で並べる。
- 02MARK
各件に「片づいたとみなした/みなさなかった/保留」だけを付ける。
- 03RECORD
片づいたとみなした件は、何日の音沙汰でそう数えたかを書き添える。
一度で片づけたい、という気持ちはまっとうなところから来ています。ただ、割合が上がったと言えるのは、分子と分母の決め方が先に書いてあるときだけです。読めた範囲では、その決め方をそろえた規格に行き当たりませんでした。だからここでできるのは、他所の高い割合を追うことではなく、自分が「片づいた」と数えた基準を、自分の言葉で残しておくことのほうでした。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「一次対応で解決するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

