IN LOGISTICS · ISSUE 400
● 12 SEC物流を強くすれば、競争力になる。よく聞く言い方です。その根拠として並ぶのは、たいてい、物流で成功した会社の話のほう。この号は、その言い方を、読めた範囲の実証の側から見直します。
この号が全文まで読めたのは、6点のうち0点でした。読めていないことについては書きません。ここで運べるのは、要旨に印字されていた範囲だけです。
この号の芯にあるのは、ケイパビリティという言葉です。設備や在庫のような、持っている資源そのものではなく、状況に応じてそれらを組み替えて使いこなす力のほうを指します。倉庫があることと、需要の波に合わせて倉庫の使い方を変えられることは、別です。
この違いは、自分で荷を送る側にも、そのまま当てはまります。段ボールの在庫と、繁忙期に梱包の手順を組み替えられることは、別の話だからです。

「物流は競争力になる」という言い方には、由緒があります。物流と供給の連なりを、費用を削る裏方ではなく競争優位の源泉として位置づけた教科書——査読を経た研究論文ではなく教科書です——が、1992年に初版を出し、いまは2022年の第6版まで版を重ねています。
ただし、この号が届いたのは、書名と版の履歴という書誌の記録まででした。中身の主張までは読めていません。だから由緒は由緒として置いて、結びつきの有無のほうは、査読された別の研究の要旨に問います。立派な本があることと、測られたことは、別だからです。
01業績と直接に結びついたのは、客に向いた力のほうだった。2001年の研究(要旨まで)は、物流の力を、客に向き合う力と、情報を扱う力に分けました。要旨にあるのは “customer-focused capabilities are directly related to performance, but that information-focused capabilities are not”——客に向いた力は業績と直接に結びつくが、情報を扱う力はそうではない、という一文です。後者は前者を経由して、間接的に結びついていた、とも書かれています。標本の業種・国・規模も、業績が自己申告か客観の数字かも、要旨には印字がありません。
02結びつきは、三つの面をまとめた測り方の上での話だった。2010年の研究(要旨まで)は、物流の業績を、効率・有効性・差別化という三つの面を束ねた測り方として扱い、組織の成果と正の関係にあったと報告しています。三つの関係についても、要旨は “not necessarily trade-offs, but rather are complementary”——必ずしもトレードオフではなく、むしろ補完的だ——と書いています。組織の成果は管理職が答えた知覚で、それが参加企業の二次的な財務データと強く相関した、とも印字されています。
03持ち物にも結びつきはあり、組み替える力のほうが強かった。2026年の研究(要旨まで)は、タイの貨物取扱業の経営層250人への横断調査です。物流の資源そのものも競争優位と有意に結びつき、そのうえで、状況に合わせて組み替える力のほうが強い結びつきを示した、という相対の比較でした。競争優位は、組織の業績の分散の53.4%を説明したとあります。自己申告の横断調査なので、どちらが先かは分けられていません。

自分の商いでも、「うちの強みは届け方だ」という言い方は出てきます。そのときに起きやすいことを三つ、日ごろの言い方のほうから並べます。どれも、直すべき欠点としてではなく、見分けるための目印として置きます。
01成功した話ばかりが、手元にたまっている。うまくいった会社の話は語られ、同じことをして消えた会社の話は、はじめから集まりません。成功例だけを並べて「だから物流は競争力になる」と結ぶと、聞こえなかった側が数に入らないまま残ります。これは研究が測った結果ではなく、この号の読み筋です。
02強みの出どころを、持ち物のほうだけで説明している。設備や仕組みを挙げて強みを説明しているとき。読めた要旨では、資源そのものにも有意な結びつきがあり、そのうえで組み替える力のほうが強い結びつきでした(タイの貨物取扱業の経営層250人・横断調査)。どちらか一方だけの話ではありません。
03その速さが、誰の時間で買われているかを数えていない。早朝・深夜・休みの返上。帳票に出ない時間で、速さや積み方の数字は良く見せられます。読めた要旨に、この点を測った印字はありません。強みの足元を一度見ておく、というのもこの号の読み筋のほうです。

全文まで届いた出典は、この号にはありません。だから、要旨に印字のないことは書けません——2001年の研究の標本が、どの業種・どの国・どの規模なのかは、読めないままです。6点のうち1点は書誌の記録だけ、もう1点は題名までで、題名から分かるのは、対象が持ち帰り型の飲食の配達だということだけでした。
それから、1999年・2001年・2010年の三つには、同じ研究者が重なって加わっています(題名まで届いた2003年の1点も同じ)。独立した三つの確かめとしては数えられません。加えて、標本が読めた範囲では、部門や経営層が答える規模の企業が対象でした。一人で発送を回す商い、催事の搬入出、外注に任せる小さな事業は、この標本の中にいません。
タイの250人では、持ち物にも結びつきはあった。
そのうえで強かったのは、組み替え方のほうだった。
だから「物流を競争力に変える」は、設備を買えば付いてくるものでも、号令ひとつで揃うものでもなさそうです——少なくとも、読めた要旨はそう読める向きに並んでいます。ただし、読めた要旨で測り方が分かるものは自己申告の調査で、どれも順序までは分けられていません。先に強い会社が、組み替える力も持っていた、という向きは残ります。
TRY IT TODAY
- 01WRITE
今日の日付と、自分の届け方の「強み」を一つ書く。速さ・確かさ・ていねいさ・安さなど、言葉はそのままでよい。
- 02SORT
その強みが「持っているもの」から来たのか「組み替えたこと」から来たのかを、一語で分類する。迷ったら両方と書く。
- 03NOTE
その強みが、誰かの早朝や深夜の上に立っていないかを一言だけ書く。自分自身のぶんも数に入れる。
「物流が強い」と聞いたら、問えることは二つあります。その強みは、持ち物から来たのか、組み替え方から来たのか。そして、その速さは誰の時間で買われているのか。読めた要旨が答えているのは前の問いのほうまでで、後ろの問いは、まだ測られていません。測られていないことを、強さの証明にはできません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「物流を競争力に変えるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
