IN LOGISTICS · ISSUE 385
● 12 SEC順路を組み直せば、距離は減る。その話には、たいてい削減率が付いてきます。この号が見に行ったのは、正しいかどうかではなく、その数字がどこで測られたかです。
ある研究は、算法が組んだ順路で総労働時間が5%減ったと報告しています。ただし、その5%を出したのは、実際には走っていない仮想の班でした。同じ研究の実地では、別の数字が出ています。
どの車が、どの荷物を、どの順で回るかを決める問題を、専門の言葉で配車問題(Vehicle Routing Problem)と呼びます。1959年、燃料を運ぶトラックの一隊をどう割り振るかを数学の問題として定式化した論文が、経営科学の学術誌に出ました。半世紀を超える蓄積があり、由緒は本物です。ただしその最初の論文の要旨には、こうも書かれています——“No practical applications of the method have been made as yet.”(この方法の実際の適用は、まだ行われていない)。

では、その後の半世紀で何が確かになったのか。読めた範囲で確かになっていたのは「入れれば最適になる」という因果ではなく、数理の側の発展と、教科書の配車と現場の配車が別物だということでした。三つに分けます。
01伸びたのは、厳密解と近似解の両方だった。2009年、50年を振り返る総説が学術誌に出ています。その要旨にあるのは“major developments in the fields of exact algorithms and heuristics”(厳密な算法と、発見的な解法の両分野での大きな発展)という書き方でした。読めたのは要旨までで、そこに「実務は近似解に頼る」とは書かれていません。両方が伸びた、が要旨の言い分です。
02学術の配車と、市販ソフトの配車には隔たりがあった。2012年の論文は、学術研究が扱う配車問題と、市販の配車ソフトが実際に扱える問題・使う解法を突き合わせ、要旨で“existing application and research gaps are identified”(既存の応用と研究の隔たりが特定される)としています。2014年の総説も、時間指定・積載・拘束時間・道路事情を複数抱えた配車を、教科書の一問とは別の難しさとして整理しました。どちらも要旨までです。
03第1の実地試行で、算法の側が回りきれなかった。2016年の研究は、オランダの移動警備会社1社の巡回車で実地の試行をしています。第1の試行では、1日ぶんの静的な仕事48件のうち、従来の手順で回った対照の班は未訪問0件。算法が組んだ班は16件(48件中の33.33%)が未訪問で、6件が遅れました。第2の試行では算法の班の未訪問は2件・遅れ5件まで減り、著者は実運用にも組み込めると結論しています。著者自身が“More than one third of the jobs were not finished in Pilot 1.”(第1の試行では、3分の1を超える仕事が終わらなかった)と書いています。

削減率を見たときに、手元で確かめられることが三つあります。どれも正誤の判定ではなく、その数字がどこで出たかの見分けです。
01比べた相手が、書かれていない。削減率は差である以上、何と比べた差かが要ります。2016年の研究の5%も、対照の班との比較として書かれていました。比較の相手が示されていない削減率は、どの決め方の順路と比べたのかが読めません。
02走った記録なのか、計算の結果なのか。その研究には、実地で走った班と、走らせずに計算した仮想の班の両方があります。総労働時間5%減は後者——第2の試行で取れたデータをもとにした模擬試行——の値でした。走った側では、48件中16件が未訪問です。
03前提のどれが、範囲の外にあるか。教科書の配車は、届け先も需要も道の速さも確定している前提で組まれます。当日の追加、時間帯の詰まり、拘束時間の上限、積載の偏り——このうちどれが扱われていないかで、削減率が届く範囲は変わります。

この号が全文まで読めたのは、使った6点のうち1点です。残りは要旨まで、あるいは書誌の実在までで、読めていない範囲のことは書きません。実地の試行も1社・1日ぶんの巡回警備という範囲のもので、宅配にも、数個の発送にも、そのまま当てはめられません。
検証されていないことは、間違っていることではありません。近似の解法が、素朴な決め方より良い順路を出すことはありえます。この号が分けているのは良し悪しではなく、その削減率がモデルの中の比較値なのか、走った後の実測なのかという層のほうです。
モデルの中で消えた距離が、
道の上でも消えたかは、別に測らないとわからない。
だから、削減率を前にしてできることは、判定ではなく、自分の配送の前提を書き出しておくことです。前提が紙の上に出れば、その数字が自分の現場を含む前提で出たのか、最初から範囲の外なのかに、見当がつきます。
TRY IT TODAY
- 01LIST
直近に自分が出した配送か発送を一つ選び、届け先の数・時間の指定・使った便・当日変わったことを書く。
- 02MARK
削減率をうたう方法を当てるとしたら、その前提から外れそうなものに印をつける。どちらが正しいかは書かない。
- 03COUNT
印の数を一つの数字で書き添える。0件でも、そのまま記録する。
1959年の定式化は本物で、その後の研究も積み上がっています。ただし由緒は数式の話であって、あなたの道路の話ではありません。読めた範囲で確かなのは、教科書の配車と現場の配車が別物だというところまで。削減率が現場でどうなるかは、走った後に、別に測らないとわかりません。
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