IN LOGISTICS · ISSUE 399
● 12 SEC数字で管理すれば、現場は良くなる。物流でもよく言われます。測ること自体は、公的に後押しされてきました——国土交通省は主な施策のひとつに「物流生産性向上の推進」を挙げ、物流の全体方針である「総合物流施策大綱」も、いまは2026年度から2030年度までの版が置かれています。
ただし、測るのが良いことだ、ということと、何を測れば良くなるかが分かっている、ということは別です。この号は、どの数字を追うべきかを書きません。読めた範囲で、追っている数字のほうが何を捉え損ねうるか、までです。
KPI(重要業績評価指標)とは、仕事の良し悪しを測るために選んだ数字のことです。物流なら、積載率、リードタイム(注文から到着までの時間)、納期の遵守率などがあたります。測るという作業の前に、どれを選ぶかという手順が必ずあります。2007年に査読誌へ出た総説は、抄録でその手順のほうを問いとして立てていました——“Now the question is whether traditional performance measures can be used and out of them which ones should be given priority”(いま問題なのは、従来の業績指標が使えるのか、そのうちどれを優先すべきか、である)。

この総説が抄録で書いているのは、答えではなくそこまでです。従来の指標のいくつかは新しい環境には適さないかもしれない、という留保を置き、そのうえで主要な指標を見きわめようと試みた、と自ら述べています。以下は、抄録まで読めた範囲で言えることだけです。
012007年の時点では、問いのまま置かれていた。この総説は、題名が示すとおり1995年から2004年までの文献を対象にしています。抄録の結びは “an attempt has been made in this paper to determine the key performance measures and metrics”(本稿では主要な業績指標を見きわめようと試みた)で、その土台は文献の調査と報告された事例だと書かれています。試みたという目的の宣言までで、どれを優先すべきかの答えは、抄録には印字されていません。
02この調査では、平均のほうに直接の関連が見られなかった。2007年に別の査読誌へ出た研究は、ある専門職団体の名簿1,264名を枠として402社へ質問紙を送り、210社から回答を得ました。抄録の結果は二つ。リードタイムのばらつきが大きいほど、組織の財務業績は低い。そして “average supply chain lead-times have no direct impact on financial performance”(平均のリードタイムは財務業績に直接の影響を持たない)。割り付けのある実験ではなく、質問紙で測った関連です。
03三つの次元は、必ずしも奪い合わないと書かれていた。2010年に査読誌へ出た研究は、物流の業績を効率(少ない資源でこなす)・有効性(求めに応える)・差別化(他と違う価値を出す)の三つの次元からなるものとして測りました。抄録はその三つを “not necessarily trade-offs, but rather are complementary”(必ずしもトレードオフではなく、むしろ補完的である)と述べています。効率を上げれば応えが犠牲になる、という通念とは逆向きの結論です。 組織の成果は回答した管理者の知覚で測られています。

自分がいま何を測っているのか。手元の言い方のほうに、手がかりがあります。
01平均だけを、書きとめている。届くまでの日数を平均で持ち、遅れた日をならしている。平均を持つこと自体は誤りではありません。ただし210社が答えたその調査では、財務業績と結びついていたのはばらつきのほうで、平均には直接の関連が見られませんでした。平均だけを残すと、ばらつきは記録に残りません。
02一つの数字が上がったことを、改善と呼んでいる。積載率のような一つの数字が上がったとき、それがどの次元の話かは、その数字だけでは分かりません。2010年の抄録は三つの次元を補い合うものとして測っており、一つに丸めた数字が三つのどれをどれだけ捉えているかまでは、そこに書かれていません。
03指標の一覧を、外から借りてきている。2018年に査読誌へ出た計量書誌の研究は、1991年から2014年までの234本を引用のつながりから調べ、この領域の論文数はここ数年で最も速く増えており、伝統的な指標からより高度な測定の仕組みへ移ってきた、と報告しています。数が増えたことは、自分の商いに合う一つがその中にある、という意味ではありません。

この号が使ったのは5点です。全文まで読めたのは1点、3点は抄録まで、残る1点は公的な資料のページを2026年9月18日に見た範囲で、読めていないところのことは書きません。
標本の偏りも書いておきます。抄録まで読めた二つの調査は、いずれも質問紙に答えられる規模の組織が対象でした。一日に数個を送る商い、催事の搬入出、運送を外に頼んでいる小さな事業にそのまま当てはまるとは、どの抄録にも書かれていません。
210社が答えた1本の調査で、
結びついていたのは、ばらつきのほうだった。
その調査の抄録には、続きもあります。需要の不確かさが大きいほどリードタイムのばらつきも大きく、生産の手順が定型的であるほどばらつきは小さい、という関連。いっぽう製品の複雑さと組織の規模は、ばらつきとも平均とも関連が見られませんでした。ばらつきの大きさは、扱うものの難しさや事業の大きさだけでは説明されていません。
だから、いま追っている数字を捨てる必要はありません。先にできるのは、その数字が平均なのか、回数なのか、割合なのかを書き分けて、何が記録から落ちているかを一度だけ見ておくことです。読めた範囲に、自分の商いで何を測れば良くなるかを示した研究はありませんでした。
TRY IT TODAY
- 01PICK
いつも気にしている物流の数字を一つ書く(かかった日数、遅れた回数、送料など)。
- 02SORT
それが平均か、回数か、割合かを書き分ける。
- 03RECORD
その数字に残らないもの(ぶれ、待ち時間など)を、一つだけ書き添える。
1991年から2014年までの234本を数えた研究が報告したのは、論文数が近年もっとも速く増え、伝統的な指標からより高度な仕組みへ移ってきたことでした。増えていると報告されたのは、論文の本数です。そのうちどれを優先すべきかという問いは、2007年の抄録では問いのまま置かれていました。その隣で、財務と結びついていたのは平均ではなくばらつきのほうで、三つの次元は必ずしも奪い合わないと書かれている。測るのは良いことです。その先を埋めるのは、数字の本数ではありません。
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