IN LOGISTICS · ISSUE 397
● 12 SEC「返品の流れを整える」という言い方には、たいてい二つの前提がくっついています。送るときの流れを逆に回せばいい、そして、うまく整えればコストは消える。読めた範囲の研究は、そのどちらも確かめていませんでした。
測られていたのは、別のことです。米国の大手アパレル小売2社の自社の物流データ(2019〜2021年)を推計した2025年の研究では、遠くから戻る分が返品輸送の排出に占めた割合が、片方で91%、もう片方で64%でした。この号は、業種をまたいで借りられる返品率も、整えたら何割下がるという数字も書きません。
リバースロジスティクス(reverse logistics)は、売ったあとに商品が客の側から戻ってくる物流です。返品・交換・回収・修理・再販・リサイクル・廃棄が入ります。2006年の査読誌に出た枠組みは、インドの文脈で特定の商品カテゴリに絞って返品の量を見積もり、処分の仕方・施設の位置と能力・戻す流れをまとめて決める形です。見積もりの値は、関係者84人への非公式な聞き取りから。原著自身が置いた限界は “No free choice of facility locations.”(施設の場所は自由に選べない)。逆流ぜんぶに通る段階論ではありません。

逆向きの流れをまとめて見渡した総説は2015年に出ています。2007年1月から2013年3月までに出た382本を選んで整理し、研究の空白がどこにあるかを挙げたものです。返品が、前へ送る仕事のついでではなく別の研究の集まりとして扱われてきたことは、ここまでは言えます。では、実際の返品はどこまで測られているのか。読めた範囲で測られていたのは、三つでした。
012社の推計では、遠くが9割と6割。2025年の査読誌。米国の大手アパレル小売2社の自社の物流データ(2019〜2021年)を、ライフサイクル評価と排出係数のモデルで推計した研究です。返品を1か所へ集める会社では、1,000マイル(約1,600キロ)超を戻った返品が2021年に29,143トンのCO2——その会社の返品輸送の排出の91%。拠点を分けている会社では6,686トン(同64%)。梱包は1社あたり年1,100〜1,750トン。自社の記録からの推計で、網の形を割り付けて比べた実験ではありません。
02返品の中身の実データは、1社ぶん。同じ2025年の別の査読誌。英国で2番目に大きい通販専業のファッション小売1社のデータを、文献の整理と合わせた混合手法で解析し、何がどんな理由で戻るのかの型を出した研究です。標本は1社・1分野で、業種をまたいで返品率を比べられる作りではありません。「業種ごとの返品率」を、この研究から読み取ることはできません。
03208件の自己申告では、正の関連。2019年の査読誌。インドの電子産業へ700通の質問紙を送り、分析に使えた208件を、回答どうしの結びつきをたどる統計のモデルにかけた調査です。予測が正確だと答えた側ほど、逆物流の運用成績も良いと答えていました。予測そのものが難所だと示した研究ではありません。原著自身の限界は “data are collected only from Indian electronics industry”(データはインドの電子産業からのみ)。

自分がいまどちら側にいるかは、数字の扱い方に出ます。
01返品率◯%を、出どころなしで置いている。読めた範囲で、返品の中身を実データで分解した研究の標本は、通販専業のファッション小売1社ぶんでした。誰が・どの分野で・何を分母に数えたのかを言えない%は、自分の見積もりには使えません。
02返品を、1件ずつの送料で締めている。2社の推計で開いたのは、1件あたりの運賃ではなく、どこから戻ってくるかの分布でした。遠くから戻る分が、返品輸送の排出の91%と64%を占めています。ただしこの2社で測られたのは排出で、費用の内訳ではありません。
03返品は読めないもの、と置いている。208件の自己申告では、予測が正確だと答えた側ほど、運用の成績も良いと答えていました。読めないものとして脇へ置いた側がどうなるかは、この調査では測られていません。自己申告どうしの関連で、予測を良くすれば成績が上がると試した実験ではありません。

射程を先に置きます。全文まで読めたのは6点のうち0点で、6点とも公式の要旨の範囲までです。読めていないものについては書きません。標本も偏っています——2006年の枠組みと2019年の調査はインド(特定カテゴリの返品と電子産業)、2025年の2本は英国の小売1社と米国の小売2社です。要旨まで読めた6点の要旨の範囲に、日本の小さな商いを標本にした記述はありません。
数字の性格も分けておきます。29,143トン・6,686トン・91%・64%・1,100〜1,750トンは、2社の自社の記録をもとにした推計で、割り付けて比べた実験の値ではありません。208件は自己申告どうしの関連です。382本は、2007年1月から2013年3月までに出た論文を選んで整理した本数であって、効果の大きさではありません。
同じ「返品」でも、遠くから戻る分が
返品輸送の排出に占めた割合は、9割と6割に開いた。
整えれば消える、という話にはなりません。読めた範囲で測られたのは、返品の負荷がどこに乗っているかの分布であって、消し方ではありませんでした。2022年の査読誌が出した、返品を循環へ戻す三段階の枠組みも、数理のモデルと、家電を扱うEC1社の事例までです。自分の商いのどこに乗っているかは、他人の分布からは出てきません。
TRY IT TODAY
- 01LIST
思い出せる返品・交換を、一件ずつ書き出す。
- 02NOTE
各件に、戻ってきた理由と、送料以外にかかった手間を添える。
- 03RECORD
最後にその品がどうなったか——再販・修理・値下げ・廃棄——を一語で記す。
2社の推計で9割と6割に開いたのは、戻ってくる距離のほうでした。それは他人の網の形で出た分布で、自分の返品がどこからどれだけ戻っているかは、自分の記録からしか出てきません。数字を借りるより先に、一件書く。読めた範囲で言えるのは、ここまでです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「返品の流れを整えるには?」を、もっと深く学ぶ。→