IN LOGISTICS · ISSUE 396
● 12 SEC在庫や荷物を、どこに何か所置くか。自宅にまとめるか、実店舗と外の倉庫に分けるか。網——荷物を置く場所と、その間を結ぶ運び方のつながり全体——を組む判断です。「きちんと設計すれば最適になる」という言い方には、数理の裏付けがあります。
ただし最適とは、与えた前提の中での最適です。この号が当たった原典は6点、全文まで読めたものはありません。要旨まで読めたのが4点、残る2点は題名と巻号までです。読めていないものについては書きません。そして、シラバス側が「集約は弱い」の根拠に置く2本は、読めた範囲では、それを実証した研究ではありませんでした。
要旨まで読めた2005年の研究は、まず前提のほうを名指しします。古典的な立地のモデルは、拠点について “once constructed, the facilities chosen will always operate as planned”(いったん建てられた拠点は、常に計画どおりに動き続ける)と暗黙に仮定している、と。現実には、悪天候・労働争議・所有者の交代などで拠点は時折止まる——同じ要旨は、そう続けます。

その研究は、拠点が止まったあとに余分にかかる輸送費——期待失敗コスト——を設計に織り込むモデルを立て、日々の運用費と、失敗を勘定に入れた期待費用とのトレードオフ曲線を描きました。要旨まで読めた範囲で言えるのは、ここから先の3つです。
01わずかなコスト増で信頼性は大きく上がる——ただし、曲線の上で。2005年の研究の結論は “substantial improvements in reliability are often possible with minimal increases in operating cost”(信頼性の大きな改善は、運用費のわずかな増加で得られることが多い)。ただし、そこで実証と呼ばれているのは、距離の合計を小さくする問題と、固定費つきの立地問題に基づくモデルで描いたトレードオフ曲線の上での話です。動いている物流網の運用記録ではありません。裏返せば、費用だけを最小にした網は、止まったときの費用を勘定に入れていません。
02翌年の1本は、同じ向きの補強ではなく、別の物差しだった。同じ著者らが2006年に出した研究は、期待費用を最小にしながら、どの筋書きでも「最善だった場合との差」を一定以下に抑えるという、別の頑健性の尺度を立てています。2005年の「期待失敗コストを織り込む」とは測り方が違います。著者自身も “For many instances of the problems, finding a feasible solution, and even determining whether the instance is feasible, is difficult”(問題の多くの実例では、解を見つけることも、そもそも解があるかを判定することさえ難しい)と書き、実行不能を判定する仕組みも併せて示しています。
03根拠に置かれた1本は、強く設計するための手法だった。集約ハブを扱う2021年の研究は、要旨の範囲では、集約ハブを使う網を障害に強く設計するための手法の提案です。“To lessen network failure risks, disruption is dealt with using backup facilities, fortification of facilities, and multiple sourcing simultaneously.”(網が止まる危険を減らすため、障害には予備の拠点・拠点の強化・複数調達を同時に用いて対処する)。費用と時間を同時に小さくする二目的の数理計画として定式化し、イランで医薬品の流通を担う受託事業者1社を当てはめて解いた、と書かれています。

この分かれ方は、自分で運び、自分で送っている側の言い方にも、そのまま出ます。
01モデルの上の実証を、現場の実測として読んでいる。「わずかなコスト増で信頼性が大きく上がる」は、要旨の逐語と一致します。ただし、その裏づけはモデルの上に描いたトレードオフ曲線です。実際に動いている網で、費用をどれだけ増やすとどれだけ止まりにくくなったかを測った数字ではありません。
02二つの「集約」を、一つの言葉で束ねている。2022年の研究が扱うのは、意思決定をどれだけ中央に集めているかという、組織の側の度合いのほうです。中国の製造業213社への自己報告の質問紙で、サプライチェーン全体のJIT(必要なときに必要なだけ運ばせるやり方)と、供給側および社内の乱れリスクとの結びつきを、その度合いが増幅するという調整の効果が報告されました。拠点を物理的に一か所へ集めることの効果ではありません。
031社への適用を、実運用の証拠にしている。2021年の研究が当てはめたのは1社——イランで医薬品の流通を担う受託事業者です。要旨の範囲では、これは立てたモデルを解いて妥当性を確かめるための適用例であって、その網を実際に組み替えて、前と後を測った報告ではありません。

この号が当たった原典は6点。全文まで読めたものはありません。要旨まで読めたのが4点、残る2点——施設の立地とサプライチェーン管理を扱ったレビューと、動的な立地モデルの枠組み——は、題名と巻号までです。中身は確かめていないので、「モデルと実務は乖離している」とは、この号では書きません。
要旨まで読めた4点も、動いている網で費用と止まりにくさを測ったものではありません。二つは定式化とモデルの上の曲線、一つは受託事業者1社への適用、一つは自己報告の質問紙です。どう設計すれば何割下がる・止まりにくくなる、とは書きません。
止まらない前提で立つモデルは、
止まったときの費用を、数えていない。
だからこの号が運べるのは、設計の数理が実在することと、その設計が現実でも最適だと確かめられたことは、別、というところまでです。シラバス側が「集約は弱い」の根拠に置く2本も、読めた範囲では、集約ハブを強く設計する手法の提案と、意思決定の集権度を測った質問紙の、二つに分かれていました。
TRY IT TODAY
- 01LIST
自分が荷物や在庫を置いている場所を、思いつくかぎり挙げて、今日の日付と一緒に書く。
- 02NOTE
それぞれの脇に「そこが1日使えなくなったら、何が止まるか」を一言で書く。
- 03MARK
いちばん多くが止まる場所に、印を1つ付ける。減らせ・増やせは書かない。
一か所にまとめるか、分けて置くか。読めた範囲は、その答えを持っていません。持っていたのは、いちばん安い設計を出すモデルが、止まるという前提をそもそも置いていないことと、それを織り込み直す数理が曲線の上には実在すること、この二つでした。手元でできるのは、どこが止まると何がまとめて止まるのかを、まだ誰も止めて試していないうちに書き出しておくことだけです。
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