IN LOGISTICS · ISSUE 395
● 12 SEC運ぶ手段を選ぶ話は、たいていモーダルシフトへ行き着きます。トラックで運んでいる荷を、鉄道や船へ移す。環境にいいのだから、きっと安くもなるはずだ——この号が見るのは、その橋がどこで架かったのかです。
この号が引いたのは7点。本文の全文まで読めたのは2点で、公式の要旨までが3点、書誌と題名までが2点です。読めていないことは書きません。 どの手段なら安いかの手引きも書きません。
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること。公的な資料に置かれた定義です。同じ資料は、1トンの貨物を1キロ運ぶとき(1トンキロ)に出る二酸化炭素の量を並べます。営業用貨物車が195グラム、航空が103グラム、船舶が41グラム、鉄道が19グラム。鉄道はトラックのおよそ10分の1、船舶はおよそ5分の1にあたります。

同じ資料は、転換すれば鉄道でおよそ90%、船舶でおよそ79%、航空でおよそ47%のCO2削減になるとも示します。2024年度の試算です。ここまでは、そのまま受け取ってよい数字です。
ただ、この資料が並べているのはCO2の量であって、運賃ではありません。運賃の欄は、そこにありません。同じ資料には、モーダルシフトはおおむね500キロ以上の長距離輸送でないと難しいと考えられてきたが、最近では300〜400キロの例も増えている、とも書かれています。距離という条件のほうが、先に置かれている。
01教材に載る四つの言葉は、そのまとめ自身の枠ではなかった。複数の手段を組み合わせる貨物輸送の障壁を集めた2023年のまとめは、1996〜2022年の104件を分析し、31の障壁を六つのまとまり(ターミナル/輸送網/管理/規制と補助金/配送の特性/相互運用性)へ整理しました。この号の教材が挙げる「コスト・時間・信頼性・柔軟性」の四語がそろって出るのは、事業モデルの不在を論じた節で2009年の別論文を引く一文だけです。全文まで読めています。
02その著者は、障壁に重要度の順位を付けていないと書いている。同じまとめの限界の節に、特定された障壁は相対的な重要度で順位付けしていないとあります。引用の頻度で順位を付ける手はあるが正確ではない、障壁どうしのつながりも扱えていない、と続きます。「障壁の中心はこれだ」という総括は、そのまとめが自ら避けたものでした。
03切り替えの意欲は、慣れの側へ引き戻されていた。2017年の研究は、ドイツの貨物輸送の幹部92件への質的な聞き取りから、道路単独から鉄道を組み合わせる輸送への切り替えの意欲を調べました。損失回避や感応度の逓減といった偏りは、促進要因と障壁のどちらの受け取り方も弱めるのではなく強めていたと報告されます。促進側に挙がったのは運転者の労働条件・環境上の制約・燃料の高値。読めたのは公式の要旨までです。

環境の数字と運賃の数字を、どこで結んでしまったか。手元の言い方のほうに出ます。
01環境にいいのだから安いはずだ、と続けている。公的な資料が示したのは1トンキロあたりのCO2で、鉄道は営業用貨物車のおよそ10分の1でした。同じ資料に、運賃の比較はありません。CO2が10分の1であることは、運賃が10分の1であることを意味しません。二つは、別々の欄にある数字です。
02四つの言葉を、まとめの結論として引いている。「コスト・時間・信頼性・柔軟性」は、2023年のまとめの枠組みではなく、そこが2009年の別論文を引いた一文の中の言葉でした。まとめ自身の枠は六つのまとまりと31の障壁で、著者は順位を付けていないと明記しています。孫引きの四語を原典の看板に見立てると、順位の無いものに中心ができます。
03一つの調査の結果を、どこの荷にも当てはめている。2026年のモロッコの調査は、道路運送・荷主・物流事業者・専門家から483件の有効回答を集めました。経済・エネルギー・環境の三つの受け取り方はどれも意欲と正の関連で、いちばん強く結びついていたのはエネルギー面、次いで環境、経済はより穏やかでした。著者は、知覚に基づく回答と偏りうる集め方という限界を書いています。読めたのは要旨まで。

「手段を変えればこれだけ安くなる」という削減の幅は、この号では書きません。引いた7点のうち、全文まで読めた2点の本文にも、要旨まで読めた3点の要旨の範囲にも、運賃の削減幅にあたる数は見当たりませんでした。中国の政策の効き方を扱った2026年の論文は、書誌と題名までしか届いていません。中身を読めていないので、その結論はここでは運びません。
標本も断っておきます。切り替えの意欲の材料は、ドイツの幹部92件への聞き取りと、モロッコの483件の質問紙です。どちらも荷を手配する側に何が起きるかの話で、業種も国も違います。障壁のまとめの104件には、業界の報告17件が含まれます。1日に数個を送る商いに、そのまま当てはまる数ではありません。 鉄道や船がそもそも選択肢に入らないことは、工夫の不足ではありません。
10分の1と書いてあるのはCO2の欄で、
運賃の欄は、その資料に無い。
だから、環境にいいという一行を見たら、それがどの欄の数字かを探します。1トンキロあたりのCO2なのか、運賃なのか。公的な資料が示していたのはCO2のほうで、示してあるから、そこまでは確かです。
なお、行きだけでなく帰りの流れまで含めた見取り図は、2007年1月から2013年3月までの382本を見渡した2015年の総説にあります。この号は、行きの手段の選び分けまでにとどめます。
TRY IT TODAY
- 01PICK
直近に自分が出した発送を3件選び、今日の日付と一緒に書く。
- 02SPLIT
各件に、量・距離・締め切り・実際に使った手段の4つを横に書く。
- 03MARK
手段を決めているように見える要素に1つだけ印を付け、印の数を数える。
モーダルシフトという言葉には、便利な顔があります。環境にいいと言えて、公的な数字まで付いてくる。けれどその数字が並べていたのは、1トンキロあたりのCO2でした。安いかどうかは、別の欄にある。どの欄の数字を見ているか。 それが、この10分の1の読み方です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「輸送手段を使い分けるには?」を、もっと深く学ぶ。→