IN LOGISTICS · ISSUE 388
● 12 SEC約束した日に、頼まれたものが全部そろって届いたか。届けの仕事には、それを一つの割合で言い表す数字があります。納期遵守率、あるいはオンタイム・イン・フル——約束の日時どおりに、欠けなく届いた注文の割合です。
パーセントで印字され、線が引かれ、合格か未達かが決まる。いちばん厳格な顔をした数字です。けれど数える前に、決めなければならないことがいくつもあります。先に断ると、この号は守り切る方法を書きません。
納期遵守率は、約束の期日を守れた注文の割合をいいます。オンタイム・イン・フルは、そこへ「頼まれた品が全量そろっていたか」を重ねた割合です。どちらも、数えれば出てくる事実のように見えます。
けれど数える前に、決めることがあります。約束の日を相手の要求日にするか、こちらの回答日にするか。時間の幅をその日きっかりにするか、前後1日までにするか。全量の線をどこに引くか。そして誰が測るか。この四つは、読み解くためにこの号が置いた枠であって、どれかの研究がそう定めたものではありません。

読めた層は、そろっていません。この号が引いた6点は、いずれも要旨までで、本文まで読めたものはありません。読めていないものについては、そこに書かれていること以上を書きません。測られた場面も個人の商いではなく、大きな製造業とその供給者、3者を組にした一つの取引、小売の会社1社——いずれも会社どうしの継続的な取引です。
01136組の取引で、送り手は自分を高く見ていた。大きな製造業の会社と、その最も重要な供給者。この二者を一組にして、同じ注文の流れを両側から測った質問紙の調査があります。集まったのは136組。見つかったのは四つの有意なずれで、そのうちの一つが “suppliers overestimate their performance compared with the ratings of customers.”(供給者は、顧客の評価と比べて自分の成績を過大に見積もる)でした。割り付けのない調査で、対象は会社どうしの重要な取引です。
02正しい測り方は、一つに決まらなかった。物流の成績をどの指標で測るかについて、会社ごとに違ってよいとする枠組みが2004年と2007年に出ています。掲げた目標に照らして自分に固有の測定の必要を見極め、それに最も合う指標を選ぶ、という組み立てです。ただしこの2本は同じ4人の連作で、要旨はほぼ同じ文面でした。独立した二つの証拠として数えられるものではありません。
03既存の指標が、現場の目標とずれていた。小売の物流で、3か月のあいだ会社に入り込んで進めた研究があります(アクションリサーチ)。そこで報告されたのは、小売側がいま使っている配送の成績指標と、小さな店舗の物流が目指しているものとの “misalignment”(ずれ)でした。1社の中の話で、新しい指標に入れ替えた後の効果を比べた試験ではありません。

自分が出した数字でも、相手から受け取った数字でも、見るところは同じです。どの定義で数えたかが、その数字に添えてあるかどうか。
01定義を書かずに、割合だけが回っている。約束の日をどちらに取ったか、幅をどれだけ見たか、全量の線をどこに引いたか、どちら側が測ったか。これを書かない割合は、緩めた結果なのか厳しくした結果なのかが分かりません。四つという整理そのものは、この号が読み解きのために置いた枠で、研究がそう定めたものではありません。
02自分の記録だけで、合格を出している。136組を両側から測った調査で見つかったのは、供給者が自分の成績を顧客の評価より高く見積もっていたことでした。送り手の記録で合格が出ていることと、受け手が困っていないことは、別々に測られた別の数字です。会社どうしの取引での観察で、個人の受け手へ一度だけ届ける場面を測ったものではありません。
03期日の一点だけで、良し悪しを決めている。届ける仕事の質を受け手の知覚から捉えた研究は、大きな物流の会社の四つの顧客区分で九つの構成概念を確かめ、区分ごとに推定値が違うことから「区分ごとに仕立てるべきだ」と結論しました。期日はその中の一部です。満点でも実感が付くとは限らない——ここから先は、その多面性を踏まえた、この号の読み筋です。

「測り方は場面で変わる」という続きが、ここで出てきます。2009年に、顧客・供給者・物流の会社の3者を一組にした研究が、納期をあらかじめ組んでおく取引での成績モデルを作りました。ただし著者自身が限界の節にこう書いています——“A single case study limits the levels of external validity and reliability to analytical generalization.”(単一の事例研究は、外的妥当性と信頼性を分析的一般化の水準に限定する)。場面が変われば測り方も変わる、と一般に確かめた研究ではありません。
そして測られたのは、どれも会社どうしの継続的な取引です。送り手と受け手が同じ一人である場面は、読めた要旨の範囲には見当たりません。二者のずれが起きないかわりに、自分で決めた定義に自分で合格を出す、という別の偏りが入ります。
同じ納品に、二つの成績がついた。
高く見ていたのは、送った側だった。
だから、割合を上げる手順はこの号にはありません。読めた範囲で確かめられていたのは、同じ取引を両側から測ると数字が食い違うことと、どの指標を選ぶかは掲げた目標しだいだということ、この二つです。上げ方でも、正しい定義でもありません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
直近に自分が出した、または受け取った納品を一つ選び、日付だけを書く。
- 02DEFINE
それを「守れた」と数えるなら、どの定義になるかを書く。約束の日・時間の幅・全量の線・測る側。
- 03MARK
定義を一つだけ緩めると合格と不合格が入れ替わる箇所に、印を付ける。どちらが正しいかは書かない。
並べ直すと、こうなります。136組を両側から測った調査では、送り手は自分の成績を相手の評価より高く見積もっていた。指標の選び方に唯一の正解はなく、掲げた目標から選ぶものだとされた。小売の1社では、いま使っている指標と現場が目指すものがずれていた。割合が合格に見えるとき、その線を引いたのが誰かを思い出せるか——読めた範囲から残るのは、その一点です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「納期を守り切るには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。