IN LOGISTICS · ISSUE 387
● 12 SEC運ぶお金を減らしたい。だから内訳を出す——どの荷に、どの作業に、いくらかかっているのか。ですが、そこで動くのは多くの場合割り付けのほうです。一台ぶんの燃料や手間を、どの荷にいくら乗せるかという分け方の約束事。付け替えても、その日に出ていった総額は1円も減りません。
では運賃そのものはどうか。この号が当たった原典は5点、全文まで読めたのは2点でした。うち1点は米国の長距離トラック輸送1,933,299件の記録から、運賃の水準ではなく引き受けてもらえた割合のほうを測っています。読めていないものについては書きません。
トラック一台の燃料費・人件費・車両費は、その日に積んだ複数の荷が一緒に使っています。だから「この荷のコスト」は、実費が決まっていても、分け方を決めるまでは決まりません。作業の手間で割る、重さで割る、容積で割る、便の数で割る——同じ一日の同じ実費でも、割り方を替えれば各荷の数字は別のものになります。

要旨まで読めた2000年の事例研究は、活動基準の原価計算(作業ごとに資源の使われ方をたどって費用を結びつける方法)を、ある物流事業者へ当てはめた事例です。抄録は “This application of ABC costing to a logistic operator illustrates the main difficulties and benefits of this approach.”(活動基準の原価計算を物流事業者へ当てはめたこの適用例は、この方法の主な難しさと利点を示す)と書きます。難しさと利点であって、削減の証明ではありません。
01前の時期の振る舞いは、一つの例外を除き次の引き受け率と結びつかなかった。米国の長距離トラック(ドライバン・250マイル超)の1,933,299件、荷主71社、一次の運送会社1,650社、2015年9月から2019年5月までの取引記録です。荷が空いていた時期に荷主が市場より高く払っても、こまめに荷を出していても、次の混み合う時期の引き受け率(頼んだ荷のうち引き受けてもらえた割合)は上がっていませんでした。無作為に割り当てた実験ではなく、記録の分析です。
02応じていたのは、同じ時期の振る舞いのほうだった。逆に、同じ混み合う時期に市場より高く払い、荷をこまめに出している荷主は、引き受け率の高いほうと結びついていました。著者はこの組み合わせを “carriers are myopic”(運送会社は近視眼的だ)と書き、前の空いた時期の良い振る舞いに、次の混み合う時期の高い引き受け率で報いることはしない、と続けます。
03一つずつの効きは小さいかもしれない、と著者が書いている。同じ論文は、これらの振る舞いは単独では、混み合う時期の引き受け率全体への影響が小さいかもしれないと書いています(組み合わされば、より大きいかもしれない、とも)。向きが見えたことと、大きさが分かったことは別です。

この分かれ方は、一人で運び、一人で送っている側の手元にも、形になって出ます。
01「削減率」の中身を、分けていない。下がった数字が、割り付けを付け替えた分なのか、その月の相場が緩んだ分なのか、実際に出ていかなくなった分なのか。三つは別々に数えられますが、一つの削減率にまとめると見分けがつきません。付け替えの分は、別の荷の負担が同じだけ増えています。
02相場が緩んだ月を、自分の手柄にしている。要旨まで読めた2022年の研究は、米国の一車貸切のスポット運賃(その都度の市場価格で決まる運賃)について、ほぼ即時の価格指数の推定量をつくり、日ごとの変動を時系列のモデルで評価しました。燃料サーチャージと車両の余力を考慮すると、急な変動の当座の影響が小さくなることも観察しています。
03「長く付き合っているから」を、根拠にしている。上の1本が測った範囲では、前の時期に良く振る舞ったことは、一つの例外を除き、次の時期の引き受け率に返っていませんでした。返っていたのは、同じ時期に払っている額と、荷の出し方のほうです。米国の長距離トラックで、荷主71社の記録での話であり、別の土地や別の運び方に広げられるものではありません。

この号が当たった原典は5点。全文まで読めたのは2点、要旨まで2点、残る1点は題名と書誌までです。その1点は、複数の主体が輸送費を分け合うときの費用の配分を扱ったものですが、中身は確かめていません。だから「公平な分け方に唯一の正解はない」とは、この号では書きません。
全文まで読めた2点も、範囲が違います。1点は米国の長距離トラックの取引記録で、測っているのは引き受け率という一つの指標で、運賃の水準そのものではありません。もう1点は定期コンテナ海運を扱った数値例のモデルで、需要を平均100・標準偏差25の正規分布と置いた仮の数字です。原著自身、モデルの結果を実データや事例と突き合わせることを今後の課題に挙げています。実データの1点と、モデルの1点を同じ根拠として並べません。
返っていたのは、いま払っている分だった。
前の時期の分は、おおむね返っていなかった。
だからこの号は、「関係を育てても無駄だ」とは書きません。読めた範囲が言うのは、前の時期の分と、いまの分は、別々に測られていたというところまでです。そして手元の削減率のほうは、付け替えた分と、相場の分と、実際に減った分が、まだ分けて数えられていないだけかもしれません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
直近に払った(または見積もった)運送の費用を一つ選び、今日の日付と一緒に書く。
- 02SPLIT
紙を左右に分け、左にその費用を「割り付けで決まる分」と「そのときの相場で決まる分」に、思い出せる範囲で分けて書く。
- 03MARK
相場で決まっていて自分では動かせない分に印を付け、右にその印の数を1つの数字で書く。
「分析して◯%下げた」という一文には、少なくとも三つの別のものが混ざります。付け替えた分、相場が緩んだ分、そして本当に出ていかなくなった分。読めた範囲で確かなのは、一つ目が総額を減らさないことと、二つ目が自分の外で日ごとに動いていることの二つでした。三つ目が残っているかどうかは、一つ目と二つ目を分けたあとにしか見えません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「輸送コストを下げるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 標準偏差
- ばらつきの大きさを表す値。大きいほど、人によって結果がばらばらだったことを意味します。
