IN LOGISTICS · ISSUE 389
● 12 SEC「配送費の最大50%はラストワンマイルが占める」。物流の話は、たいていこの一文から始まります。最後の区間を工夫で制すれば、費用の半分に手が届く——という筋書きです。
ところが、その割合を測った研究に行き着きません。全文まで読めたのは7点のうち1点で、読めていないものについては書きません。要旨まで読めた5点の要旨の範囲にも、配送費に占める単一の割合を確定した記述はありませんでした。この号は「どうすれば制せるか」を書きません。数えられている量と、モデルの中の数字を分けるところまでです。
ラストワンマイル(last mile)とは、荷物が最後に届け先へ渡る区間のこと。2014年の会議録に載ったコストモデルの研究は、この区間を、配送のなかで費用がかかり、効率が悪く、環境負荷も大きい区間のひとつとして位置づけました。2018年の系統的レビュー(対象47本)も、この区間の型を整理しますが、費用に占める割合は、読めた要旨には示していません。「高い区間のひとつ」は順位の話で、「いつでも◯割」は水準の話です。
2018年のレビューは、配送の型を、送り手が押し出す型・受け手が引き取る型・その混合に分けて整理しました。2014年の研究のほうは、ラストマイルの型を作り、その特性を独立変数にして総費用を試算する道具を組み立てたものです。どちらも、読めた範囲では、費用に占める割合を測った調査ではありません。

では、この区間で実際に数えられている量は何か。日本の宅配便の取扱個数は、令和5年度に約50.7億個(平成22年度は約32.2億個)と公表されています。その荷物について、年2回の定点で測られている公的な数字があります。
01数えられているのは、再配達の割合。国土交通省が年2回(4月と10月)行うサンプル調査では、宅配便の個数のうち令和6年10月期に約10.2%、同年4月期に約10.4%が再配達でした。走った後に数えられた実測で、モデルの中の削減ではありません。同じページは、再配達を労働力に換算すると年間約6万人の運転者分にあたるとも記しています。
02時間枠を狭めると、モデルの中で30〜45%高い。2009年の査読誌の研究は、届け先の密度と配送時間枠の長さが経路の効率をどう変えるかを調べ、3時間の時間枠は、不在でも置ける9時間枠より30〜45%高いと報告しました。ただし実運用の実測ではなく、実務家への聞き取りから設定値を取ったルーティング実験の中の比較です。
03モデルの中でいちばん減ったのは、受け手の移動。同じ2009年、英国の一つの州の世帯データベースを使った研究は、郵便局・スーパー・駅などを受け取り拠点にした場合を計算しました。最も得をするのは受け手で、移動費用は最大90%減——ただしモデルの中の値です。運ぶ側の移動費用の減りはずっと小さく、効いたのは初回配送の失敗が2割超、営業所へ取りに行く人が3割超といった条件が揃ったときでした。

自分がいま、どちらの数字を見ているのか。手がかりは、言い方のほうに出ます。
01他人の網で作られた割合を、目標にしている。読めた要旨にあったのは、この区間が費用・効率・環境負荷の面で厳しいという順位の観察でした。何割になるかは、網の形・届け先の密度・都市か地方か・企業向けか消費者向けかで動きます。丸めた一つの割合は、自分の届け先で測った値ではありません。
02数えられた割合を、誰かの責任に読み替えている。再配達率は「この区間で何が起きたか」を測った数字で、「誰が悪いか」を決める数字ではありません。同じ公的ページが引く2022年の調査では、再配達になった理由の約2割が「配達されることを知らなかった」でした。知らせる側と受け取る側の、どちらの側にもかかる量です。
03一つの数字が下がったところで、見るのをやめている。非対面の受け取りは、再配達という数えられた量を下げます。いっぽう2022年の実証研究は、6〜9か月にわたって非対面配送を使った9世帯への聞き取りを中心に、受け手の体験という別の物差しを記述しました。片方が良くなっても、もう片方が自動的に良くなるわけではありません。

ここまでの数字には、それぞれ届く範囲があります。時間枠と密度の比較は設定値を置いた実験の中の値で、受け取り拠点の最大90%減もモデルの中の値です。受け手の体験を記述した研究は9世帯への聞き取りが中心で、そのまま多くの世帯へ広げられる大きさではありません。再配達率は日本の宅配便を対象にしたサンプル調査で、企業間の輸送や海外の事情を測ったものではありません。
出どころについても、言い切れるのは読めた範囲までです。要旨まで読めた5点の要旨に、配送費に占める割合を確定した記述はありませんでした。題名までしか届かなかったものが1点あり、その中身については書きません。
「高い区間のひとつ」は、順位の話。
「いつでも半分」は、水準の断定。
割合を下げること自体より先に、自分の側で数えられる量を決めるほうが早い——というのが、この号の読み筋です。数えられた量があってはじめて、工夫の中身を後から確かめられます。
TRY IT TODAY
- 01LIST
直近2週間で自分が受け取った、または送った荷物を、手元の通知や不在票から思い出せる範囲で並べる。
- 02SORT
各件に「一発で渡った」「再配達になった」「非対面で置かれた」のどれかを、自分で決めた定義のまま印を付ける。
- 03COUNT
三つの内訳の件数と、自分が使った定義を書き添える。会社名や配達員の評価は書かない。
「最大50%」は覚えやすく、資料に載せやすく、話の入口として便利です。いっぽう、自分の手元で数えられるのは、荷物が一発で渡ったかどうかという件数のほうでした。割合が下がったように見えるとき、たいてい動いたのは一つの軸で、まだ数えていない軸がその隣にあります。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「ラストワンマイルを制するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 系統的レビュー
- あらかじめ決めた基準で研究をもれなく集めて整理する方法。数値の統合(メタ分析)まで行わないこともあります。