IN MARKETING · ISSUE 367
● 12 SEC大きく打ち出した一言の下に、小さな但し書きを添える。条件も例外も書いてある——そう思えたとき、告知は整って見えます。
ただ、書式として但し書きを備えたことと、それが読み手に届いたことは別でした。この号が全文まで読めたのは、挙げた7点のうち4点です。読めていないものについては書きません。削るのは、必要な但し書きを付けさえすれば誇大は防げる、という約束のほうです。
2017年、消費者庁が『打消し表示に関する実態調査報告書』を公表しています。そこでは、目立つ表現で品質や取引条件を強調した表示を強調表示、そこから「一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となるものに関する表示」を打消し表示と呼びます。但し書きは、例外的に使われるべきものとして置かれています。

では、その但し書きは届いているのか。読めたのは、日本の公的な実態調査が一つ、海外の広告を対象にした研究が二つ、そして開示そのものを論じた一冊です。測ったものも、国も、時期も違います。一つの主語に束ねず、年と対象を添えて順に置きます。
01打消し表示に気づいた人は、5.8%〜15.7%だった。2017年に公表された公的な実態調査。全国の成人男女1,000人(有効回答ベース・日本の人口構成に合わせたもの)へ、調査のために作った動画3点・Web画面2点・紙面1点を見せたアンケートです。表示例①で各強調表示に気づいた回答者(592人・713人・138人)を分母にすると、打消し表示を見落としていた人は84.3%〜94.2%、気づいた人は5.8%〜15.7%でした。聞き取りによる調査で、店頭の売上を測ったものではありません。
02義務づけた免責表示に、便益の証拠は見つからなかった。2012年に出た論文。抄録はこう書きます——“The authors find no evidence that consumers benefit from government-mandated disclaimers in advertising”(著者らは、広告における政府が義務づけた免責表示から消費者が便益を得るという証拠を見いだせなかった)。著者ら自身の実験では、法が義務づけた免責表示を添えた側で、資格を持たないほうの歯科医を勧めた人が13%から21%へ増えました(317人・2007年11月・商業施設での対面聞き取り)。
03脚注は目的を果たさないことがある——ただし、逆向きの報告も。1988年に出た論文は、打消しの脚注が「意思決定のためのより完全な情報を与える」という本来の目的を果たさないことがある、と報告しました。ただし同じ抄録は逆向きの知見も書きます——“it does positively affect consumers’ comprehension of disclaimer-related claims”(打消しに関係する主張についての理解は、たしかに向上させる)。左右したのは、脚注の型と、活字の大小という見せ方のほうでした。

手元の告知にも、見分けの手がかりがあります。効いたかどうかの判定ではなく、いまどちら側にいるかを見るための3つです。ここでも、根拠にした資料は1つずつ別のものです。
01但し書きを付けたこと自体を、誇大でない証拠として数えている。2012年の論文が見いだせなかったのは、まさにその証拠でした。付けてはいけない、という話ではありません。備えることと、読み手の理解を助けることが別だった、という話です。書式の点検が通ったことは、それが働いたことを示しません。
02条件を、いちばん小さい活字に寄せている。2017年の実態調査で、打消し表示に気づいた人は5.8%〜15.7%でした(表示例①で各強調表示に気づいた回答者が分母)。1988年の論文も、活字の大小という見せ方が受け手の思い込みの作られ方を左右しうると書いています。置き方のほうは、書式の点検には現れません。
03広告であることを、書き添えていない。消費者庁は公式ページに「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」と示しました。事業者の広告なのに、それと分からないように見せる表示のことです。2023年10月1日から施行されており、レビューの依頼や告知の出し方に、この線は直接かかります。個別の表示が合法か違反かは、ここでは判定しません。

並んでいるのは、別々の二つの筋です。効き目を調べた研究はいずれも海外の広告を対象にしたもので、2012年の論文は関連する18の実験研究を検討し、知覚・態度・決定を調べた15の研究で効果が無いか有害だったと書きます。もう一方は制度上の事実で、日本の景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法・昭和37年法律第134号)が引いた線のほうです。制度も文脈も別なので、混ぜて一つの結論にはしません。
開示そのものを広く論じた2014年の書籍は、“mandated disclosure rarely works”(義務づけられた開示が働くことは、まれである)と要約されています。ただし到達できたのは出版社の要旨までで、本文は読めていません。そして1988年の論文のように、打消しに関係する主張の理解はむしろ向上したという報告もあります。読めた範囲では、「開示はいつも効かない」とまでは書けません。
書式の点検が通ったことは、
それが届いたことを示さない。
それでも、この号は「但し書きをやめたほうがいい」とは書けません。読めた範囲で言えるのは、付けたかどうかと、届いたかどうかは別だということ。そして、書き手が守る線のほうは、効くか効かないかとは別に、現に動いたということです。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分がこれまでに出した告知を一つ選ぶ。チラシでも、投稿でも、商品説明でもよい。
- 02COPY
その中でいちばん大きく打ち出している主張を、一つ書き写す。
- 03MARK
条件や例外を添えた但し書きが、どこに・どのくらいの大きさで置かれているかを書き添える。無ければ「無し」と書く。
但し書きが整っていると、告知は誠実に見えます。ただ、整って見えているのは書き手の側の点検で、読み手の目に届いたかどうかを、書式のほうは表示しません。2017年の調査で打消し表示に気づいた人は5.8%〜15.7%、法が義務づけた免責表示を添えた実験では、劣るほうを勧めた人が13%から21%へ動きました。読めた範囲で確からしくなったのは、「点検を通せば防げる」のほうではありませんでした。
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