IN MARKETING · ISSUE 355
● 12 SEC名コピーを集めれば、型が見えてくる。見えた型を自分の告知に当てはめれば、心は動く——言葉の相談には、たいていこの筋書きが付いてきます。書店にも、効いた一本を並べて型に分類した本が並んでいます。
この号が見るのは、型の作り方ではありません。効いたと確かめられているのは、どこまでかのほうです。どの型が売れるかは、書きません。
コピーは、決めた訴えを実際の言葉と表現に彫る仕事です。ここで問うのは、その言葉と表現のほうが、どこまで、どんな条件で効くのか。
1995年に市場調査の専門誌へ出た研究は、同じ地域で世帯群を分けてテレビ広告を出し分ける389件の実地試験——出す量の試験と、広告の中身の試験の合計——を束ねました。うち140件では、出稿主が質問票にも答えています。出し分けは世帯の単位で、効き方は実際の購買で測られました。

結果は、二つの側で形が違いました。増やす側に、条件は付いていません。 いっぽう中身を変える側には、カテゴリの限定と、「確率」という言い方が付きます。この非対称が、要旨の書き方そのものです。
01増やす側に、条件は付かなかった。同じ要旨は、競合に比べて広告予算を増やすことは概して売上を増やさないと書きます。カテゴリの限定も、期間の限定も、ここには付いていません。ただし当時のテレビ広告を専用の計測網で測った試験であり、手渡しの紙や短い投稿に同じ大きさで移るとはかぎりません。
02変える側には、売り場の条件が付いた。同じ要旨は、ブランド・広告の中身・媒体の組み立てを変えることが、購買の機会が多く、店頭の売り場づくりが弱いカテゴリで、テレビ広告が売上に良い影響を与える確率を上げると書きます。売上が動いた、ではありません。どのカテゴリでも、とも書かれていません。
03創造性は、二つの面で見られていた。2020年に商学の専門誌へ出たまとめは、67本の論文から集めた93のデータ群・878の効果量(効き方の大きさ)を束ね、広告の創造性に頑健な正の効き方があるとしたうえで、新規性と適切さの両方——目新しさと、伝えたい中身に沿っていること——を見る必要があると整理しました。効きは関与の高い商品のほうで強く、同じ要旨は、売上との接続は今後の研究課題だとも述べています。

自分がいま、型の側に立っているのか。手元の言葉と、その言葉の評価のしかたに、手がかりがあります。次の三つは、いずれも要旨に印字のある向きから起こしました。
01笑いが取れたから、伝わったと思っている。2009年に商学の専門誌へ出たユーモア広告のまとめは、369の相関を束ね、ユーモアが広告への態度・注意・前向きな感情に加えて購買意図も有意に高めると書きます。ただし効き方の大きさは上位の指標へ行くほど縮み、広告への態度への値は、ブランドへの態度への値の2倍でした。同じ要旨は、出し手の信用は有意に下がるとも述べます。
02同じ一本を、いつでも出している。2001年に市場調査の専門誌へ出た研究は、無料通話の紹介サービスの広告反応を細かい単位の計量モデルで調べ、論拠に寄せた訴え・専門家の語り手・否定の枠で言う言い方は新しい市場でとくに効き、感情に寄せた訴えと肯定の枠は古い市場のほうで効く、と報告しました。同じ言葉の効き方が、市場の段階で入れ替わっています。
03事前テストの点を、売上の予告だと思っている。1995年の同じ要旨は、標準的な想起と説得の事前テストの指標と、売上への効きのあいだに強い関係は見られなかったとも書きます。点が付くことと、売れることは、別の物差しでした。事前テストで良い点が付いた広告が、売上でも良かったとはかぎらない、という形です。

では、手がかりは何も無いのか。2016年に商学の専門誌へ出た研究は、自分で学んだ17人の素人が96組の印刷広告を、証拠に基づく説得の原則への沿い方で採点しました。点の高いほうを選ぶと75%の組で効いたほうを当て、事前テストは59%、多少の経験がある人の判断は55%、当てずっぽうなら50%です。比べた相手は、素人の下した10,809件の判断と、多少の経験がある人の2,764件の判断、そして288件の事前テストの予測でした。
ただし、これは公式ではありません。同じ要旨は、対象が関与の高い実用品の広告であること、使えた効き方の指標が翌日の想起という代わりの物差しであることを、限界として断っています。当てるための点検表であって、書くための式ではありません。どの型が売れるかは、この6点の範囲では書けません。
写せるのは型のほうで、
中身が効いたのは、条件つきだった。
査読を経ていない整理も、一つ並べておきます。2013年に経営の実務誌へ出た論考は、ドイツの日用品90ブランド・437のテレビ広告キャンペーン(2005年1月〜2010年10月)を素材に、創造性の高いキャンペーンへ投じた1ユーロは、そうでないキャンペーンのほぼ2倍の売上への効きを持ったと述べます。
同じ論考は、ボディローションと洗顔のカテゴリでは、創造性を足すと売上への効きが2%近く下がったとも書きます。査読を経た効果の測定としては扱いません。
TRY IT TODAY
- 01LIST
自分が過去に出した告知や紹介文を、手元から三つ書き写す。
- 02MARK
それぞれに「目新しさ」と「中身に沿っているか」を、あるかないかで印を付ける。
- 03COUNT
両方に印が付いた数を、1つの数字で書き添える。良し悪しの評価は書かない。
型は写せます。写せないのは、目新しさと中身が揃った、その一本に固有の差のほうでした。しかもその効き方には、売り場の条件が付き、市場の段階で入れ替わり、上位の指標へ行くほど縮む、という形も付いています。
同じ2020年の要旨は、目新しさは主に気持ちの移りにつながり、適切さは合図として働く、とも分けて書いていました。片方でもう片方を埋め合わせられる、とは書かれていません。全文まで読めたのは6点のうち1点。読めていないものについては書きません。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「コピーで心を動かすには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量
- 差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。