IN BRAND · ISSUE 352
● 12 SEC古びて見えないように、ロゴも、色も、言い回しも、時代に合わせて手を入れ続ける。見せ方の相談には、たいていこの筋書きが付いてきます——変えることは若返ることで、若返ることは善いことだ、と。
この号が見るのは、更新の手順ではありません。変えれば若返る、若返るのは善い——その一方向が、どこまで測られているかのほうです。刷新すべきかどうかは、書きません。
ブランド刷新とは、ロゴや見せ方を時代に合わせて手直しし続けること。ノスタルジアは、過去への郷愁——古いものを懐かしく感じる気持ち。ブランドコミットメントは、その名前への思い入れの強さです。
2010年に商品・ブランド管理の専門誌へ出た研究は、運動靴の2ブランドを題材に、角ばっていたロゴを丸くする度合いを変えて反応を調べました。632名のフィールド実験です。要旨が挙げる結果は、一つの向きには揃いませんでした。

割れたのは、見た目の中ではありません。相手が既にどれだけ思い入れているかの側です。思い入れのない人に新鮮に映る変化が、思い入れのある人には、馴染んだものを取り上げられる出来事になります。
01632名の現場実験——反応の向きが、思い入れの強さで割れた。2010年の研究の要旨はこう書きます——“Strongly committed consumers view these changes negatively; weakly committed consumers view them positively.”(強く思い入れている客はこれらの変更を否定的に見る。弱くしか思い入れていない客は好意的に見る)。測られたのはブランド態度で、売上ではありません。
02ロゴへの評価は、態度の変化を部分的にしか媒介しない。同じ要旨は、ロゴへの評価が刷新と思い入れの組み合わせの効きを媒介する、と書き、限界の節では、それは部分的な媒介であって変化を完全に説明するものではない、と断ります。見た目の評価だけでは、態度の変化は説明しきれていません。
03続く2本——和らぐ条件と、受け入れにくさが調べられた。2011年に消費者マーケティングの専門誌へ出た同じ著者らの研究は、2つのフィールド実験(商業施設で声をかけた一般の人と、学部生)で、角から丸への変更への否定的な反応が、自己の捉え方と噛み合うときに和らぐと報告しました。2019年の論文は、“consumers who are most attached to the brand are least receptive to logo redesigns”(ブランドにもっとも愛着している人が、ロゴ刷新をもっとも受け入れない)と述べます。

古いことは直すべき負債なのか。ここには別の系列の研究があります。懐かしさを呼び起こす広告への反応を測った2本で、どちらも公開されている要旨までしか読めていません。要旨が書いている分だけ、向きと、その向きが出る範囲を並べます。
012004年——懐かしさの手がかりは、思考の種類に影響した。要旨は、懐かしさの手がかりが広告を見ている間に浮かぶ“the type of thoughts”(思考の種類)に影響し、その思考の過程が広告とブランドへの態度に影響するようだ、と述べます。良い方向とも悪い方向とも、要旨は明言していません。
022014年——効きが際立ったのは、購買意図とブランド態度。広告されたブランドと過去に個人的なつながりがあった人ほど、懐かしさの効きが購買意図とブランド態度で際立った、と報告されています。過去の接触という条件が付く範囲の話です。
03同じ研究の非対称——広告への反応には、条件が付かなかった。ところが同じ研究は、“this effect was not observed for ad-focused responses”(この効果は広告志向の反応では観察されなかった)と書きます。広告関与と広告態度では、過去のつながりに関係なく、懐かしい広告のほうが好意的な反応を生みました。条件が付く側と付かない側が、一つの研究の中で分かれています。

まず、どこまで読めたかです。この号が当たったのは6点で、本文まで読めたものはありません。6点とも、公開されている要旨までです。要旨に書かれていない人数・効果の大きさ・実施国については、書いていません。
そして、標本の狭さです。ロゴの3本のうち、2010年が扱ったのは運動靴という一つの分野、2011年の2つは商業施設で声をかけた一般の人と学部生でした。2019年は、標本も設計も要旨に書かれていません。懐かしさの2本が測ったのは広告への反応です。読めた範囲に、屋号で商う個人の見せ方を扱った研究はありません。変えないことに価値があるかどうかも、ここでは決まりません。この号は、刷新すべきかどうかを書きません。
“Thus, logo evaluation partially mediates this change in brand attitude, but it does not fully explain the change in brand attitude after exposure to logo redesign.”
したがって、ロゴへの評価はこのブランド態度の変化を部分的に媒介するが、ロゴ刷新に触れたあとのブランド態度の変化を完全に説明するわけではない。
2010年の研究が、自分の限界として置いた一文です。ロゴへの評価は橋渡しの一部で、残りが何なのかは、この研究では分かっていません。見た目を変えたときに動くものが、見た目の評価だけで説明できるわけではない、ということです。
もう一つ、「古びている」と教えてくる数字のほうです。ブランドの価値評価を整理した2009年のレビュー(要旨まで)は、評価には多様な手法があり、どの手法も道具と同じで、ある目的には向き別の目的には向かない、と述べ、分類を難しくしているのは自社の販売のために手法を差別化しようとする専門の会社だ、とも書きます。
測り方が目的で選ばれるなら、その数字は測定であると同時に選択でもある——ここまでは要旨に書かれていることで、そこから先は、研究が測った結果ではなくALIFEの読みです。
TRY IT TODAY
- 01SOURCE
今日の日付を書き、自分の屋号や見せ方を「古い」と感じた場面を一つ書く。その感じが自分の観察から来たのか、誰かの数字や指摘から来たのかを、一語で添える。
- 02PAIR
変えたいものを書き出したら、その隣に、変えたくないもの——守りたい一貫性——を同じ数だけ書く。
- 03NOTE
もし更新するなら、誰の、どんな馴染みを損なう可能性があるかを一つ書き添える。更新するかどうかは、いま決めない。
一つ。632名のフィールド実験で、同じ刷新への反応が思い入れの強さで逆を向いたこと。二つ。ロゴへの評価はその変化を部分的に媒介するだけで、完全には説明しないと研究自身が書いていること。三つ。広告への反応では、過去のつながりに関係なく、懐かしいほうが好意的に受け取られたこと。
今日残せるのは、判断ではありません。変えたいものと、その隣に同じ数だけ並べた守るもの。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「時代に合わせて更新するには?」を、もっと深く学ぶ。→