IN BRAND · ISSUE 344
● 12 SECいいイメージと並べて、何度も見せる。そうすればそのイメージがこちらの名前に移って、狙った連想ができあがる——見せ方の相談には、たいていこの筋書きが付いてきます。
この号が見るのは、並べ方ではありません。その筋書きが、どこまで確かめられているかのほうです。どんな連想をどう作ればよいかは、書きません。
連想とは、その名前を聞いたときに頭へ浮かぶ結びつき——言葉・気分・場面のことです。あるものを、好ましい別のものと対にして繰り返し見せると、そのものへの好き嫌いが対にした相手の側へ動く。この現象を評価条件づけと呼びます。
2010年に心理学の総説誌へ出たメタ分析は、この現象を扱った研究を集めてこう報告しました——“Across a total of 214 studies included in the main sample, the mean EC effect was d = .52, with a 95% confidence interval of .466-.582.”(主要標本に含めた計214件の研究全体で、評価条件づけの平均効果は d = .52、95%信頼区間は .466-.582 だった)。d は研究どうしを比べるための目盛りで、一般的な目安では0.5あたりが中くらいにあたります。

ただし、この平均は条件をならした値です。同じメタ分析は、効きが強くなる側と弱くなる側を並べていて、そこから先で、研究どうしの言い分が食い違います。
この号が当たったのは6点。全文まで読めたのは1点で、5点は公開されている要旨までです。読めていないものについては書きません。
01214件の平均——気づきが高いほうが、強かった。同じメタ分析は、効きが強くなる側をこう並べます——“EC effects were stronger for high than for low contingency awareness, for supraliminal than for subliminal US presentation, for postacquisition than for postextinction effects, and for self-report than for implicit measures.”(効果は、気づきが低いより高いとき、意識下より意識できる提示のとき、消去後より獲得直後のとき、そして潜在的な測り方より自己申告のときに強かった)。四つとも、見せ方と測り方の違いです。
02116人の2実験——顕在では動かず、潜在でだけ動いた。2008年に消費者研究の専門誌へ出た参加者計116名の2実験は、すでによく知られた飲料ブランドを扱いました。“Explicit attitudes for mature brands were unaffected by evaluative conditioning.”(よく知られたブランドへの顕在的な態度は、評価条件づけの影響を受けなかった)。動いたのは潜在的な測り方のほうで、しかももともとどちらかへ強い選好を持たなかった参加者に限られ、選択に表れたのは認知負荷をかけたときだけでした。
03手続きしだい——直接と間接で、必要な見せ方が違う。2010年に同じ専門誌へ出た研究は、道筋が二つあると整理しました——“Indirect evaluative conditioning requires repeated presentations of a brand with the same affective stimulus. Direct evaluative conditioning requires simultaneous presentation of a brand with different affective stimuli.”(間接的な評価条件づけは、同じ感情的刺激とブランドの提示を繰り返すことを要する。直接的な評価条件づけは、異なる感情的刺激とブランドを同時に提示することを要する)。直接のほうが、後から揺さぶられても崩れにくいと報告されています。

読めた三本は、どれも「並べれば狙った連想ができる」を測っていません。それでも、見せ方の相談では次の三つの言い方が、当たり前のように出てきます。
01「気づかれないうちに、刷り込める」2010年のメタ分析が並べた条件では、効きが強いのは気づきが高いほう、意識できる提示のほうでした。気づかせないほど強くなると報告した研究は、読めた範囲にありません。ただしこれは平均をならしたうえでの比較で、次の項のとおり、別の測り方では違う報告があります。
02「気づいていなければ、効かない」これも、そのままでは言えません。2008年の実験は“Contingency awareness was not necessary to change implicit brand attitudes.”(潜在的なブランド態度を変えるのに、随伴性への気づきは必要ではなかった)と報告しています。平均としては気づきの高いほうが強く、個別の実験では気づきなしでも潜在的な指標が動いた。どちらかを正しい値として選ぶことは、読めた範囲ではできません。
03「一度うまく作れば、あとは固定される」2010年の研究では、同じ条件づけでもやり方によって、後からの崩れにくさが違いました。2008年の実験で選択に表れたのは認知負荷をかけたときだけで、動いた相手も、もともと強い選好を持たなかった人に限られています。できた連想がそのまま保たれると測った報告は、読めた範囲にありません。

食い違いは、この分野の中で知られています。2007年にオープンアクセスで公開されている総説は、評価条件づけが複数の過程から起こりうるとしたうえで、こう書きます——“This could explain why there are so many conflicting results about the conditions under which evaluative conditioning can be found.”(これは、評価条件づけが見いだされる条件について、なぜこれほど多くの食い違う結果があるのかを説明しうる)。2014年に出た別の総説も、気づきの役割をめぐる議論と不一致を整理し直しています。
そして標本です。ここまでの証拠は、対にした刺激を見せる実験から採られています。参加者の国・年齢・場面は、読めた要旨には書かれていません。長い年月をかけて積み上がる実際の商いの連想が同じ向きで動くかは、読めた範囲では確かめられていません。この号は、どんな連想をどう作ればよいかを書きません。
気づきが高いほうが強かった、と214件の平均は言う。
気づきは必要ではなかった、と116人の実験は言う。
だから、最初にできるのは、連想を仕込みにいくことではありません。いま自分が、何と何を並べているかを、手元で数えてみることです。並べているものを知らないまま足すと、何が動いたのかも分からなくなります。
TRY IT TODAY
- 01WRITE
自分の名前や店に結びつけたい言葉を三つ、今日の日付と一緒に書く。
- 02TRACE
三つそれぞれについて、いまの発信物のどこがそれを支えているかを書き出す。写真、文章、包み、あいさつなど。
- 03MARK
支えが見つからなかった言葉に印を付け、印の数を書き添える。
この号は、狙った連想の作り方を、ひとつも書きませんでした。書けたのは、214件の平均が測ったもの、116人の実験が測ったもの、手続きで変わったものが、それぞれ別だというところまでです。
平均は気づきの高いほうが強いと言い、個別の実験は気づきは必要でなかったと言う。割れたままが、いま読める範囲です。差し出せるのは並べ方までで、結ぶかどうかは、受け取る側の記憶の中にあります。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「連想を設計するには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 効果量 d・g
- 2つのグループの平均の差を、ばらつきの大きさで割った値。一般的な目安では 0.2=小、0.5=中、0.8=大。g は d を小規模研究向けに補正したものです。
- 95%信頼区間
- 推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
- メタ分析
- 同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。