IN BRAND · ISSUE 339
● 12 SECいい名前が付けば、半分は成功したようなものだ。屋号やサービス名を考えていると、どこかでこの言葉に出会います。
この号が見るのは、名前の付け方ではありません。名前の音について何が測られ、どこで測られたのかのほうです。良い名前を選ぶ手順の号でも、誰かの名前を採点する号でもありません。
音象徴(phonetic symbolism)とは、音そのものが意味の手がかりを運ぶ、という考え方です。小さく鋭い印象を運ぶ音と、大きく丸い印象を運ぶ音がある——そういう、音と意味のゆるいつながりを指します。
2000年にマーケティングの専門誌へ出た研究は、要旨で、二つの研究の結果としてブランド名の音が“its size, speed, strength, weight”(大きさ・速さ・強さ・重さ)といった製品についての情報を伝えうると書き、支える宣伝があってもなくても伝わると述べます。音が印象を運ぶこと自体は、繰り返し報告されています。

では、その印象は何を動かすのか。ここから見るのは、好みの向きが条件で入れ替わった実験、実際にテストされた広告の名前を集めた分析、そして音の違いが商品の感じ方を変えるかを試した実験の三つです。この号が当たったのは6点。全文まで読めたのは1点で、5点は公開されている要旨までです。読めていないものについては書きません。
01好みは、売り物と噛み合うかで向きを変えた。2007年に消費行動の専門誌へ出た研究は、二つの実験で、母音だけが違う架空のブランド名の組を見せ、どちらが好きかを答えてもらいました。要旨によれば、母音が運ぶ印象——小ささや鋭さ——がその商品にとって望ましいときは名前が好まれ、望ましくないときは“they preferred the same names less”(同じ名前を、より好まなかった)。印象そのものが良くない母音の語は、商品によらず最も好まれていません。
02実際にテストされた広告の名前は、480件あった。2003年に広告の専門誌へ出た分析は、商業のコピーテスト会社の結果を使いました。テスト対象の広告に出てくるブランド名480件を23の言語的特徴でコード化し、名前の記憶との関係を回帰で調べています。三つの特徴が記憶と正の関係にありましたが、“but only for less familiar brands”(ただし、なじみの薄いブランドに限って)。架空名でも実験室でもなく、測られたのは記憶です。
03大学生には、音の違いが味の想像に出た。2004年に消費行動の専門誌へ出た研究は、全文まで読めた1点です。母音だけを変えた架空のアイスクリーム名を二つ用意し、126名と111名の大学生が参加する二つの実験を行いました。一つ目では、名前が手がかりになると伝えた条件で、なめらかさや濃さの評価が平均5.06と4.25に分かれています。著者らは、この働きは意識の外で自動的に起きると述べます。

ここまでの三つは、どれも名前を変えたあとの売れ行きを追っていません。それでも、名前の話では次の三つの言い方が、当たり前のように出てきます。
01「あの名前だから売れた」その言い方に出てくるのは、生き残った名前だけです。同じ音で始まって消えた名前は、後から数えられません。ただし、これは読めた研究が測った結果ではなく、この号の読み筋です。成功した名前の共通点を原因として確かめた研究は、当たった6点の中にありません。
02「どうせ実験室の話でしょう」そう言い切るのも早すぎます。2003年の分析が扱ったのは、実際にテストされた広告の中の実在するブランド名480件でした。ただしそこで測られたのは名前の記憶で、しかも三つの特徴で関係が見えたのはなじみの薄いブランドに限られていました。
03「名前を変えれば、売れるはずだ」読めた範囲で測られていたのは、好み(2007年)、商品の感じ方(2004年)、好ましさと位置づけ(2001年)、人格の印象(2012年)、名前の記憶(2003年)です。売上やシェアを結果として測った研究は、当たった6点の中にありません。音が少し好みを動かすことと、名前が売れ行きを決めることは、別の話です。

まず、「どれも架空の名前を使った実験室の研究だ」とは書けません。架空の名前だと読めた範囲で確かめられたのは2点——2007年の研究(要旨に架空のブランド名と明記)と、全文まで読めた2004年の研究(“fictitious or unfamiliar words”=架空または不慣れな語、と本文に明記)です。2000年・2001年・2012年の三つは、読めた要旨の範囲に「架空の名前」や「学生」にあたる語がありません。そして2003年の分析は、実際にテストされた広告の実在名を扱っています。
もう一つは、この号が書かないことです。名前を変えると売上がどれだけ動くかを、この号は書きません。読めた範囲で測られていたのは好み・判断・印象・記憶で、売れ行きではないからです。標本も断っておきます。全文まで読めた1点の参加者は大学生126名と111名で、国名は読めた本文に印字がなく、この号も書いていません。残る5点は要旨までで、参加者の人数は読めていません。
三つの特徴が記憶と結びついたのは、
なじみの薄いブランドに限られていた。
だから、最初にできるのは、名前を付け直すことではありません。自分の屋号やサービス名を声に出して、その音から受ける印象を書き出し、自分が差し出しているものと見比べてみることです。噛み合うかどうかは、読めた研究が実際に扱った数少ない条件の一つでした。
TRY IT TODAY
- 01SAY
自分の屋号かサービス名を今日の日付と一緒に書き、声に出して二、三回読む。
- 02WRITE
その音から受ける印象を3語と、自分が差し出しているものを一文で書く。
- 03MARK
3語と一文を見比べ、噛み合っている箇所とずれている箇所に印を付ける。
この号は、良い名前の付け方を、ひとつも書きませんでした。書けたのは、名前の音について何が測られ、どこで測られたかまでです。好みは売り物との噛み合いで向きを変え、実際にテストされた広告のブランド名480件では、三つの特徴で関係が見えたのはなじみの薄いブランドに限られていました。名前の音が動かせると確かめられているのは、いまのところ、そこまでです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「名前とロゴを決めるには?」を、もっと深く学ぶ。→