IN PRODUCTION · ISSUE 331
● 12 SEC「OEEを上げれば、生産性が上がる。」この号が見るのは上げ方ではなく、その数字が原典でどう書かれていたかのほうです。
設備総合効率〔OEE〕——可用率・性能率・良品率という三つの割合を掛けて作る、一つの数字の話です。計算の手順も、どの機械から手をつけるかも書きません。
扱うのは6点。うち2点は同じ一つの由緒から来ていて、独立した6つの検証ではありません。
出発点は、1988年に英訳された書籍です。28-29頁に、経験上の理想の条件として三つの値が並びます——可用率は90%より上、性能率は95%より上、良品率は99%より上。そのうえで、掛けるとこうなる、と書きます——0.90×0.95×0.99。原典の表記は「85+%」で、検算すると84.6%です。
続く二文が、この数字の身分を決めています——"This figure is not just a remote goal. All the PM prize-winning companies have an equipment effectiveness greater than 85 percent."(この数字は、単なる遠い目標ではない。PM賞を受けた企業はすべて、85%を超える設備総合効率をもっている)。目安として置かれただけの数字ではなく、限られた集まりの実績として書かれています。
その章は、手前でこう始まっていました——ある工場の設備総合効率が85%を超えると聞けば、設備は効率よく有効に動いていると考えてよさそうに思える。だが、どんな計算方法で、どんなデータにもとづいて出した値なのか。同じ語を使う会社は多いが、計算の方法は大きく食い違う、と。数え方への注意は、原典の側にすでに書かれています。

11年後、International Journal of Operations & Production Management 19巻1号55-78頁へ出た査読誌の論文が、三つの製造組織の測定の仕組みを評価しました。抄録が挙げた共通の弱点——"A common weakness of the systems was that they did not measure flow orientation or external effectiveness to any great extent."(それらの仕組みに共通した弱点は、流れへの向きと外部有効性をほとんど測っていないことだった)。
流れ〔工場の中をものがどう流れているか〕と、外部有効性〔納期どおりに客へ届いているか〕。OEEが数えるのは一台の機械の時間と速さと良品で、この二つはその外にあります。同じ抄録は、複雑さと、継続的な改善の欠如も弱点に挙げました。
0185%は、三つの割合を掛けた結果だった。1988年に英訳された書籍の28-29頁。経験上の理想の条件として可用率90%超・性能率95%超・良品率99%超を挙げ、掛け合わせて「85+%」と書いています。検算すると0.90×0.95×0.99は84.6%で、原典の表記は切り上げです。書籍であって、対照を置いて効き目を測った研究ではありません。
02原典は、遠い目標ではなく実績だと書いた。同じ頁の続きは、PM賞を受けた企業はすべて85%を超える、と書きます。設備保全の賞を受けた企業という、限られた集まりの実績です。同じ書籍の巻末は、この賞が日本で毎年、設備保全をやり切った工場に贈られるものだと書き、1971年から1982年までに二つの部門で29社と22社が受けたこと、受賞した企業の一覧が載っていることを記しています。
031999年の抄録は、弱点のあとに改善の余地も書いた。最終文——"Field experiments in the studied organisations showed that use of OEE in combination with an open and decentralised organisation design could improve several of those weaknesses."(調べた組織での現地の実験は、開かれた分権的な組織設計と組み合わせてOEEを使えば、それらの弱点のいくつかを改善しうると示した)。弱点の指摘だけを取り出すと、この締めが落ちます。

手引きでよく見る三つの言い方を、原典の側から見直します。どれも「間違い」ではなく、限定が落ちると意味が変わる、という話です。
01「85%は世界クラス」——読めた範囲に、その語はありません。1988年の英訳の全文を当たった範囲では、"world class" の語は本文に見当たりませんでした(ヒットしたのは巻末の他書の広告文が一つだけで、別の話です)。「世界クラス」は、実務の側で広まった呼び名です。その呼び名を明記した団体の一次の文書には、この号は行き着いていません。
02「うちのOEEは○○%」——どの定義で数えたかで動きます。2020年の Computers & Industrial Engineering 145巻106518の論文の抄録は、国際規格が二つの定義を与えていると述べ、こう書きます——"the ISO22400 standard versions seem to diverge one from the other and from the original Nakajima's TPM formulation."(規格の版どうしが、また元のTPMの定式とも、食い違って見える)。到達したのは公式の抄録までです。
03「OEEは決まった指標」——並んでいるのは、改変版のほうです。2020年の Applied Sciences 10巻18号6469の系統的レビューは、一般検索で得た862本から、重複の除去と選定基準の適用を経て186本を対象にしました(1996年から2020年・102誌)。元の型を少し変えた式や、それを土台にした別の指標が並ぶ、と本文は書きます。2008年の査読誌の論文の抄録も、派生した名を五つ挙げています。

標本と場面を断っておきます。この6点が扱うのは、量産の設備をもつ工場と、そこを調べた研究です。1999年の論文が見たのは三つの製造組織、2020年のレビューが数えたのは186本の文献でした。OEEを上げた現場と上げなかった現場を比べた試験は、この6点の中にありません。
到達もそろっていません。全文まで読めたのは6点のうち2点。三つの論文は公式の抄録まで、残る1点は発行元の団体が実在することまでで、「85%は世界クラス」と明記した一次の文書には行き着いていません。読めていないものについては書きません。
数えられたのは、一台の時間と速さと良品。
数えられていないのは、流れと納期のほうです。
ここから先は、研究が命じた順番ではありません。ALIFEが提案する実践の入口です。設備の設定も、作業の手順も変えません。人の評価にも使いません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分がふだん目にする効率・稼働・生産性の数字を一つ選び、今日の日付といっしょに書く。人の名前も、会社の名前も書きません。
- 02SPLIT
その数字の分母——何分の何か——を、分かる範囲で書き写す。分からなければ「分からない」と書きます。値の高い低いは書きません。
- 03MARK
その数字が数えていないもの(流れ・待ち時間・納期など)を一つ書き添える。三つ書けたら終わりです。
6点の出どころを突き合わせると、掛け算の定式と85%という数字は、同じ一つの由緒から来ています——1988年に英訳された書籍と、その系譜につながる団体の資料。独立した6つの点検ではありません。読めた範囲で残ったのは「85%を目指せば生産性が上がる」ではなく、その85%が三つの割合の掛け算の答えで、原典では受賞企業の実績として書かれていたという事実でした。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「生産性を上げるには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 系統的レビュー
- あらかじめ決めた基準で研究をもれなく集めて整理する方法。数値の統合(メタ分析)まで行わないこともあります。

