IN PRODUCTION · ISSUE 326

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「点が線の外に出たら、異常。」この号が見るのは読み方ではなく、その線が何の上に引かれているかのほうです。

管理図〔測った値を時系列に打って、ばらつきが偶然の範囲か異常かを見分ける図〕の引き方も、どの図を選ぶべきかも書きません。

扱うのは6点。全文まで読めたのは6点のうち1点で、それも後の刷りの複製です。読めていないものについては書きません。

出発点は1931年の書籍です。査読誌の論文ではなく、方法の提示です。限界の線をどこに引くかについて、著者はこう書いています——"the basis for such limits must be, in the last analysis, empirical."(そうした限界の根拠は、突き詰めれば経験的なものでなければならない)。

では、ばらつきの何倍のところに引くのか。乗数を選ぶ段で、こうあります——"Experience indicates that t = 3 seems to be an acceptable economic value."(経験が示すところでは、3が経済的に受け入れられる値と思われる)。理論が平均とばらつきを与え、限界の位置は経験が正当化する、という組み立てです。この号が読めたのは後の刷りの複製で、頁では引けません。

(仮ビジュアル)暗い室内の黒い壁ぎわに立ち、窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性
線の位置を決めたのは、確率ではなく経験でした。 Visual: ALIFE

だからこの線は、三つの前提の上に立っています。工程が落ち着いていること。測定が同じ条件のかたまりで取れていること。そして、前の値が次の値を引きずっていないこと。前提が崩れれば、同じ点でも読みは変わります。

01前の値を引きずる測定に標準の図を当てると、深刻に誤導しうる。1988年に Journal of Business & Economic Statistics 6巻1号へ出た論文。抄録の逐語——"In the face of these effects, standard control-chart procedures can be seriously misleading."(そうした効果のもとでは、標準の管理図の手順は深刻に誤導しうる)。誤警報がどれくらい増えるのか、頻度も件数も、公開されている範囲には書かれていません。この号が到達したのも、その抄録までです。

02時系列で手当てする道はあるが、要る技能の水準が違う。1995年に Production and Operations Management 4巻3号へ出た論文が、実施上の限界として挙げます——"its implementation requires some sophisticated statistical skills, whereas standard control charts require only elementary statistical knowledge."(その実施にはいくらか高度な統計の技能が要るが、標準の管理図に要るのは初歩的な統計の知識だけである)。選ぶことが、経営の考え方・統計の技法・計算という三つの問いを生む、と同じ抄録は続けます。到達は抄録まで。

03理論と適用をめぐる争いは、頻繁で、しばしばとても激しい。2000年に Journal of Quality Technology 32巻4号へ出た論文が、査読誌の上で論点を整理しています——"Disputes over the theory and application of these methods are frequent and often very intense."(これらの手法の理論と適用をめぐる争いは、頻繁で、しばしばとても激しい)。ただし同じ抄録は、その不一致のいくつかに決着をつけ、実務家と研究者の意思疎通を良くすることが目的の一つだ、とも書きます。到達は抄録まで。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と向き合っている写真
三つとも、管理図で品質が上がると示した研究ではありません。 Visual: ALIFE

教材でよく見る言い方を、原典の側から見直します。どれも「間違い」ではなく、限定が落ちると意味が変わる、という話です。

01「線の外=統計的に有意な異常」——その関係自体が、まだ論点です。2000年の論文が並べた論点の一覧を、そのまま置きます——"the relationship between hypothesis testing and control charting, the role of theory and the modeling of control chart performance, the relative merits of competing methods, the relevance of research on SPC and even the relevance of SPC itself."(仮説検定と管理図の関係、理論の役割と管理図の性能のモデル化、競合する手法どうしの優劣、SPC研究の妥当性、そしてSPCそのものの妥当性)。先頭に来ているのは、片づいた結論ではなく、争点のほうです。

02「前提は現場で満たせて当たり前」——原典が先に、難しいと書いています。1988年の抄録は、統計的管理状態を独立で同じ分布に従う値を生む工程として定義したうえで、厳密な意味でそれを実際に達成するのはしばしば難しい、自己相関などの系統的な時系列の効果がしばしば大きい、と続けます。温度も寸法も、連続して測れば前の値と次の値は似ます。前提が満たせないことと、測り方が悪いことは、同じではありません。

03「本に書いてあるなら確か」——書籍は由緒で、効き目の検証ではありません。1931年の一冊も、前提と限界を正面から扱う2019年の第8版の教科書も、査読誌の論文ではありません。後者は合理的部分群が6章2節、自己相関のある工程の図が第10章、と所在までは確かめましたが、本文には到達していないので中身は書きません。もう1点、1986年の書籍は、公開されている経路をいくつ当たっても本文に届きませんでした。その中身は、この号に1行もありません。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具、中央は窓の外を見る女性、右は玄関の床のコートと鍵
確かめられていたのは、線の外ではなく、線の手前でした。 Visual: ALIFE

到達がそろっていません。全文まで読めたのは6点のうち1点で、それも後の刷りの複製のため、頁では引けません。3点は公開されている抄録まで、1点は版と章立てまで、1点は本文に届いていません。読めていないものについては書きません。

標本の偏りも断っておきます。ここまでの証拠は、連続して測る工程や、統計の道具がよく使われる場から採られたものが多く、ひとりで少量を作る場の話ではありません。これは特定の研究の主張ではなく、この号の見方です。同じ条件のかたまりが取れないなら、線は引けても意味は弱くなります。前提が満たせないことは、恥ではありません。満たしたふりをして線を信じるほうが、危ういだけです。ばらつきを、その場にいた誰かの注意不足に置き換えないでください。

線は、自分が何の上に立っているかを、
自分では教えてくれません。

ここから先は、研究が命じた順番ではありません。ここからはALIFEが提案する実践の入口で、研究結果そのものではありません。数値の良し悪しも、誰かの作業も採点しません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    ふだん記録している測定値(重さ・寸法・時間・温度・回数など)を一種類選び、今日の日付と直近の並びを書き写す。人の名前も、会社の名前も書きません。

  2. 02LOOK

    隣り合う値が、前の値に似ていないかを見る。似ていたら「似ている」と一言だけ添える。高い低いの判定はしません。

  3. 03MARK

    その測定が同じ条件でまとめて取れているかを見て、怪しければ印を付ける。印が付いたら、そこで終わりです。

10分。採点はありません。**同僚や部下の作業を評価・格付けする課題ではありません。**新しく測りに行かず、手元にある記録だけで行います。厨房でも、荷さばきでも、事務の記録でも、同じ形で書けます。しんどくなったら中止を。仕事のことで眠れない、気持ちの沈みが続くというときは、この課題より先に、信頼できる相談先や医療・支援の専門家へ。

6点の著者を突き合わせると、1988年と1995年の2点は、第一著者を共有する連作です。独立した六つの点検が並んでいるわけではありません。それに、読めた範囲——全文まで読めた1点と、公開されている抄録まで読めた3点——に、管理図を入れたら品質が上がったかを測ったものはありません。それでも残ったのは「図があれば客観的に分かる」ではなく、線の位置を決めたのは経験で、線が意味を持つかどうかは前提のほうが決める、という向きでした。数えられていたのは点の位置。数えられていなかったのは、その数字がどう取られたか、のほうです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「工程を数字で管理するには?」を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。