IN PRODUCTION · ISSUE 324

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「段取りは10分未満にできる。」この号が見るのは縮め方ではなく、その数字が原典でどう書かれていたかのほうです。

段取り〔別の品種を作るために、型・治具・設定を切り替える作業〕は、機械を止めないとできない内段取りと、動かしたまま先にできる外段取りに分かれます。治具の作り方も、どの設備を入れるべきかも書きません。

扱うのは7点。うち3点は著者を共有します。独立した検証ではありません。全文まで読めたのは3点で、うち2点は刷りの別が分からないスキャンです。

出発点は1985年、英訳で広く知られるようになった書籍です。査読誌の論文ではなく、手法の提示です。そこに定義が置かれています——"performing setup operations in under ten minutes, i.e., in a number of minutes expressed in a single digit."(段取りの作業を10分未満、すなわち一桁で表せる分数で行うこと)。

ところが、その直後に但し書きが続きます——"Although not every setup can literally be completed in single-digit minutes, this is the goal of the system described here, and it can be met in a surprisingly high percentage of cases."(すべての段取りが文字どおり一桁分で終えられるわけではないが、これはここで述べる仕組みの目標であり、驚くほど高い割合で達成できる)。できない場合でも大幅な短縮はたいてい可能だ、とも同じ段落にあります。

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートと白いワイドパンツの女性が、ひとりで下りている写真
10分未満は、著者自身が「目標」と書いた数字でした。 Visual: ALIFE

名前の由来も同じ本にあります——"In the hope that any setup could be performed in under ten minutes, I named this concept 'single-minute exchange of die,' or SMED."(どんな段取りも10分未満でできるようにという願いを込めて、私はこの考えをSMEDと名づけた)。内と外の区別も、1950年に一台の機械を見て気づいた、と同じ本が書きます。

もう一冊、1988年に英訳された書籍は、小さな単位で作る段取りが増えるから段取りは速くなければならない、と位置づけ、自社の型替えが1940年代の2〜3時間から、1950年代に1時間未満、さらに15分ほどへ、1960年代後半には3分へ縮んだ、と書きます。著者の回想であって、対照を置いて測った記録ではありません。

01手法そのものを正面から検討した研究は無かった、と2000年の論文が自ら書いた。International Journal of Production Research 38巻11号。事例研究を一つ伴う、査読誌の論文です。冒頭の逐語——"To date, no known critical evaluation of the methodology has been undertaken."(今日まで、この方法論に対する既知の批判的評価は行われてこなかった)。この号が到達したのは公式の抄録までです。

02内から外への移し替えを最優先する作法は、常に有効な経路とはかぎらない。同じ抄録から——"the 'SMED' methodology … need not always represent an effective improvement route."(SMEDの方法論は、常に有効な改善経路を表すとはかぎらない)。移し替えを先にやるという順番そのものが、常に効くとはかぎらない、ということです。到達したのは、ここでも公式の抄録までです。

03130本を集めた2019年のレビューが公開している抄録は、分類の軸までしか書かない。The International Journal of Advanced Manufacturing Technology 102巻。SMEDに関する文献130本を対象にした文献レビュー(最新動向の総覧)で、抄録が挙げるのは分類の軸——分野、領域、研究の方法、道具、実施、結果、国——までです。その130本のうち何本が事例研究だったのか、報告された削減率がどこからどこまでだったのかは、有料の本文の側にあります。読めていないので、この号は書きません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆の3本の脚が支えているコンソールテーブル
三つとも、SMEDを入れれば縮むと示した研究ではありません。 Visual: ALIFE

手引きでよく見る言い方を、原典の側から見直します。どれも「間違い」ではなく、限定が落ちると意味が変わる、という話です。

01「外に移せば縮む」——移し替えは、作業の中身そのものを減らしません。2000年の論文は、見落とされる道も名指ししています——"does not sufficiently promote some important improvement options, particularly those that seek to reduce the duration of existing changeover tasks or eliminate them altogether."(いまある段取り作業の所要時間を縮めるか、作業自体をなくす道を、十分には促さない)。2007年に Gestão & Produção 14巻2号へ出た論文(ポルトガル語・全文公開)も、外へ移すこと自体は作業の内容と、実行すべき作業の総量を減らさないと書きます。縮むのは機械が止まっている時間で、仕事の量ではありません。

02「15分で戻る」——止まっていたのは、段取りの前後にもありました。同じ2007年の論文の事例。ブラジル・カンピナス地域にある金属機械の多国籍企業の一拠点で、20を超える工程がつながった自動化ラインを190分間、1個ずつ出来高を計った記録です。SMEDは適用済みで、段取りの見込みは15分でした。製品が1個も出なかったのは30分、立ち上がり後も出来高ゼロの分が合計14分、減速・段取り・立ち上がりを合わせた損失は65.5分。1ラインの1回の記録で、ほかの現場の値ではありません。

03「本家が言うなら確か」——本は由緒で、効果の検証ではありません。1985年も1988年も書籍で、査読誌の論文ではありません。手法を読み替えて位置づけ直す論文は2007年に IEEE Transactions on Engineering Management 54巻1号98-111頁として出ていますが、発行元が抄録を公開していないため、この号は題名と巻号までしか読めていません。中身は書きません。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具、中央は窓の外を見る女性、右は玄関の床のコートと鍵
測られていたのは、機械が止まった時間の外側でした。 Visual: ALIFE

標本の偏りを断っておきます。事例として残るのは、大きく縮んだ側です。あまり縮まなかった段取りは、たいてい事例になりません。これは特定の研究の主張ではなく、この号の見方です。事例の削減率をそのまま自分の目標に据えると、届かなかったときに、道具ではなく人のほうが責められます。縮まなかった原因を、その場にいた誰かの注意不足に置き換えないでください。

到達もそろっていません。全文まで読めたのは7点のうち3点で、うち2点は刷りの別が分からないスキャンなので、頁では引けません。2000年と2019年の論文は公開されている抄録まで、2007年の読み替えの論文は題名と巻号までです。読めていないものについては書きません。「SMEDで◯%縮んだ」型の集計も、公開されている範囲に分母が無いので引きません。

一桁分は、届いた記録です。
全員への約束では、ありません。

ここから先は、研究が命じた順番ではありません。ここからはALIFEが提案する実践の入口で、研究結果そのものではありません。同僚の作業も、あなたの段取りの速さも採点しません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    最近やった段取りを一つ思い出し、今日の日付と、その手順を順番に書く。人の名前も、会社の名前も書きません。

  2. 02SORT

    各手順の横に、止めないとできない(内)か、動かしたまま先にできる(外)かを書く。迷ったものは「迷った」と書いて構いません。

  3. 03COUNT

    内と書いた手順を一つ選び、外へ移せそうか、その作業を短くできそうか、そもそも無くせそうかを、一言ずつ添える。三つ並べたら終わりです。

10分。採点はありません。**同僚や部下の作業を評価・格付けする課題ではありません。**書くのは自分の記憶だけで、実際に速さを競ったり、その場で手順を変えたりはしません。設備の購入や改善の提案を求める課題でもありません。厨房でも、荷さばきでも、事務の切り替えでも、ひとりで全部回している場合でも、同じ形で書けます。しんどくなったら中止を。仕事のことで眠れない、気持ちの沈みが続くというときは、この課題より先に、信頼できる相談先や医療・支援の専門家へ。

7点の著者を突き合わせると、2000年の論文・2007年の読み替え・2007年の事例は、一人の著者を共有します。うち二つは、さらに三人を共有します。1985年と1988年の書籍も、同じ生産方式の内側の書き手同士です。独立した点検が7つ並んでいるのではありません。それでも残ったのは「こうすれば一桁分になる」ではなく、数字の隣に最初から但し書きがあったという事実でした。数えられていたのは、機械が止まっていた時間。数えられていなかったのは、その前後で静かに落ちていた出来高のほうです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「段取り時間を縮めるには?」を、もっと深く学ぶ。→

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。