IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 318
● 12 SEC「監査して、行動規範への適合を確かめれば、責任ある調達は担保できる。」仕入れの話には、この一言がよく付いてきます。第三者が見にいって、報告書がそろえば、担保した——そういう形です。
いちばん直接の記録は、2007年に出た研究です。ある大手スポーツ用品企業の仕入先——51カ国・800を超える工場の労働条件を、1998年から2005年まで監査したデータを分析しました。結論は、監査だけでは限られた成果しか生まなかったように見える。
この号は、監査をやめよとも、増やせとも言いません。見るのは「担保した」という言葉の重さのほうです。
責任ある調達(responsible sourcing、人権や環境に配慮した仕入れ)を確かめる手つきとして広く使われているのが、仕入先の工場を訪ね、行動規範に合っているかを点検する監査です。
監査が残すのは、見にいった日に報告された違反の件数です。現場で起きていることそのものではなく、来た人が書きとめた分だけが記録になります。この二つは近いようで、同じではありません。

この主題には、監査の記録そのものを数えた研究があります。会社を追った観察であって、監査のやり方をくじ引きで割り付けた実験ではありません。まず、三本が印字している数字を並べます。
01八年ぶん追って、監査だけの成果は限られていました。2007年に ILR Review 61巻1号へ出た研究は、ある大手スポーツ用品企業の51カ国・800を超える工場の監査データを、1998年から2005年まで分析しました。逐語は——多大な努力と投資にもかかわらず、「監査だけでは限られた成果しか生まなかったように見える」。ただし同じ論文は続けて、根本の原因に取り組む他の介入と組み合わせたときには、労働条件はかなり改善したように見えるとも書いています。
02報告される違反の数は、監査の設計で動いていました。2016年に Strategic Management Journal 37巻9号へ出た研究は、世界最大級の社会監査会社が2004年から2009年に行った監査を分析しました。推定に使った標本は66カ国・5,819工場の16,795件で、期間中に2回以上監査された工場に限られます。逐語は——「監査人が以前にその工場を監査していたとき、チームの経験や訓練が乏しいとき、チームが全員男性のとき、そして監査費用を被監査側が払っているとき、監査人はより少ない違反を報告する」。
0315%ポイント下がったのは、賃金と労働時間でした。2017年に Management Science 63巻3号へ出た研究は、同じ供給網の11の途上国・300を超える工場を差分の差分法(前後の変化を、介入を受けなかった側と比べる推定)で分析しました。無駄を省く生産方式の採用は、賃金と労働時間に関わる基準の不順守が15%ポイント下がったことと結びついていた一方、健康・安全の基準については効果が認められませんでした。

「監査した」が「担保した」に変わっていくとき、言葉はだいたい三か所で滑ります。どれも、原典の言葉を並べれば見分けがつきます。
01「労働条件が改善した」とは書けません。2017年の研究で15%ポイントの改善が見られたのは、賃金と労働時間に関わる不順守です。健康・安全の基準には効果が認められませんでした。日本語の「労働条件」はその両方を含むので、まとめて言い換えると、効果の無かった領域まで効果があったように読めてしまいます。同じ論文は、結びつきの筋道も「管理システムの改善ではなく、労使関係の変化を通じて」と限定しています。
02「通った」は、現場の状態だけを映しません。2016年の四つの条件——同じ監査人が再び訪れる、チームの経験や訓練が乏しい、全員が男性、そして費用を被監査側が払う——のもとで、報告される違反は少なくなっていました。実際の違反が減ったのか、報告が減ったのかを、この観察は分けていません。分母は5,819工場の16,795件、しかも2回以上監査された工場に限られます。
03「ISO準拠」は、認証を意味しません。ISO 20400:2017 の正式な題は "Sustainable procurement — Guidance"、すなわち手引きです。公式の説明も、調達に持続可能性を組み込むための指針を示す、までです。社会的責任の手引きである ISO 26000:2010 の公式ページは、さらにはっきりと——「認証を目的とせず、それに適さない〔…〕。要求事項を含まないため、そうした認証は適合の証明にはならない」。

全文まで読めたのは、七点のうち三点です。二点は公式の抄録まで、二点は規格の公式ページの説明までで、規格そのものの条文は有償のため読んでいません。読めていないものについては書きません。
標本の偏りも置きます。ここまでの数字は、輸出向けの製造業の供給網という、監査がよく行われ、記録が残る領域から採られています。監査が入らない小さな取引は、はじめから標本の外です。しかも2007年と2017年は同じ一社の供給網で、著者を一人共有しています。独立した点検が三つ並んでいるわけではありません。数字を、自分の身のまわりの仕入れにそのまま当てないでください。
監査だけでは、限られた成果しか出ませんでした。
動いて見えたのは、根本の原因に触れたときです。
ここから先は、研究が命じた順番ではありません。三本が測ったのは、監査の記録に何が書かれたかです。ここからはALIFEが提案する実践の入口で、研究結果そのものではありません。仕入先も、監査機関も、評価しません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
「責任ある調達」「持続可能」「行動規範」といった言葉を含む文書を、手元から一つ選ぶ。自分で作ったものでも、受け取ったものでもかまいません。会社の名前も人の名前も書きません。
- 02COPY
その文書が何を根拠に「担保した」「準拠した」と述べているかを、紙かメモに書き写す。良し悪しは判定しません。書いてある言葉をそのまま写すだけです。
- 03MARK
写した根拠に、(1)要求事項があって第三者が認証したもの、(2)手引きへの準拠、(3)自己申告、のどれかの印を付ける。見分けがつかないものには「不明」と書く。
三本を並べて確からしくなったのは、「監査すれば担保できる」という結論ではなく、監査が何を数えているかという手前の事実でした。数えているのは、報告された違反の件数です。誰が来て、誰が払ったかで、その件数は動いていました。増えたのは監査の枚数と規格の名前で、今日残るのは判定ではありません。紙が一枚と、「不明」と書かれた欄が、いくつか。
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