IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 317

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「三社から見積を取れば、価格は下がって、不正も防げる。」仕入れの手引きには、この一言がたいてい載っています。三通そろえば手続きは通り、選んだ理由もあとから説明できます。この号が見るのは値段の下げ方ではなく、その三通が何の証拠として数えられているかのほうです。

1993年に出た入札の研究は、談合が持ち回りの形をしていなかったと報告しました。輪の中の何社もが同じ案件に入札し、本気だったのは一社で、残りは高い入札を出していた。負けるために出された見積が、書類の中にあったということです。

この号は、取引先を疑う手順も、不正を見抜く方法も書きません。書くのは、読めた範囲の研究が何を測ったか、だけです。

相見積もり(複数の会社から見積を取ること)は、一社の言い値で決まるのを防ぎ、選んだ理由をあとから第三者へ説明できるようにするための統制です。公共の競争入札も、同じ考え方の上に立っています。

外形が整うことと、競争が起きたことは別です。三通の見積書は、三社が独立に値を付けた証拠にはなりません。あとから確かめられるのは、そろっているか、安いほうに出したか、記録があるか——紙の上までです。

(仮ビジュアル)石造りの建物の広い階段を、黒いロングコートと白いワイドパンツの女性が、ひとりで下りている写真
三通そろえば手続きは通る。通ったことと、競争が起きたことは別。 Visual: ALIFE

では、入札の記録そのものを数えた研究は、何を見たのでしょうか。競争と談合のどちらでそのデータが説明できるかを統計で判別しようとする手続きは、2003年に発表されたものをはじめ、いくつも作られています。ここではまず、よく引かれる二本が印字している中身を、順に並べます。

01談合は、持ち回りではありませんでした。1993年に Journal of Political Economy 101巻3号へ出た研究は、州の高速道路工事の入札を、1980年代前半の記録で調べました。要旨の逐語は——「談合は、入札を持ち回る仕組みの形をとらなかった」。輪の中の何社もが、ほとんどの案件に入札していました。

02本気は一社、残りは高い値。同じ要旨は続けてこう書きます——「一社が本気の入札者で、他方が偽の高い入札を出した」。入札前の会合の役割は、本命とその金額を決めることにあり、ほかの会社はそれに合わせて高い値を出していた、と作業論文の版は説明しています。

03約42,000件のうち、約37%。2022年に同じ誌の130巻5号へ出た研究は、日本の国が発注した建設工事のほとんどを覆うデータ——約42,000件の入札・落札額の合計およそ400億ドル——を調べ、競争的な挙動と一致しない業者を1,000社以上特定しました。逐語は——「これらの入札者は約15,000件を落札した。標本の案件総数のおよそ37%にあたる」。

(仮ビジュアル)暗い室内の黒い壁ぎわに立ち、窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性
持ち回りではなく、本命と高い値。数えられたのは入札の記録のほう。 Visual: ALIFE

数字も手がかりも、置き場所を間違えると逆の意味になります。取り違えやすいところが三つあります。

01「37%」は、件数の割合です。分母は落札額ではなく、標本の案件総数です。約15,000件を約42,000件で割った値であって、金額の比ではありません。日本の国の公共建設という文脈の数字で、期間は2003年4月から2006年12月。自分のまわりの発注や、民間の相見積もりにそのまま当てる値ではありません。

02安いから正しい、ではありません。1993年の研究は、見分ける筋道も示しました。逐語は——「輪の高いほうの入札の順位分布は、同じ費用の指標と関係を持たず、輪の最も安い入札の分布とも違っていた」。輪の外の会社の入札と順位は、抱えている工事量のような費用の指標と結びついていた。手がかりは金額の高さではなく、金額が費用で説明できるかでした。

03統制を足すと、通る形も伝わりうる。談合の検知を総説した研究は、偽の入札についてこう書きます——「それらの入札は期待利得を最大にするようには置かれておらず、ただ競争の外観を与えるためだけにある」。1996年に出た書籍は、表題そのものが腐敗の統制が政府を機能しなくすると言っています。ただしこの号が読めたのは、その本の書誌までです。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
分母・手がかり・統制。取り違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは、六点のうち四点です。しかもその四点は、刊行前の稿や著者が公開した版で、出版社の組版とは別の文書でした。一点は政策文書の原文、残る一点は書誌だけ。読めていないものの中身は書きません。

測られた場所も、狭いところに寄っています。証拠はいずれも公共の調達——1980年代前半の州の高速道路工事、中西部の道路舗装工事、2003年からの日本の国の建設発注——から採られ、記録に残らなかった民間の小さな取引は標本に入っていません。数字が示すのは割合そのものではなく、外形が中身を保証しないという向きのほうです。

そろっていたのは、三通の紙でした。
競争していたかどうかは、別の話でした。

ここから先は、研究が命じた順番ではありません。三本の研究が測ったのは、入札の額と順位と、その散らばり方です。ここからはALIFEが提案する実践の入口で、研究結果そのものではありません。相手を疑う課題でも、不正を見つける課題でもありません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    同じ品目についての見積を、複数社ぶんひと組取り出す。過去のもので構いません。無ければ、自分が調べた複数の価格の記録でも成立します。

  2. 02COPY

    紙かメモに、各社の合計金額と、内訳の項目をいくつか書き写す。会社の名前は書かず、A・B・Cとだけ置きます。

  3. 03MARK

    金額の差を一つずつ見て、作業量・数量・資材・距離といった費用の理由で説明できるかを、項目ごとに印を付ける。最後に、説明できない差の件数を数えて書く。

10分。採点はありません。**取引先に問い合わせない、疑いを伝えない、誰かを告発しない。手元の紙の上だけで完結させます。**仕入先や同僚を評価・格付けする課題ではなく、発注や契約の判断にも使えません。組織に属していなくても、最近の買い物で価格を見比べた記録が一つあれば成立します。しんどくなったら中止を。仕事のことで眠れない、気持ちの沈みが続くというときは、この課題より先に、信頼できる相談先や医療・支援の専門家へ。

政策の側も、この形に触れています。2012年のOECDの勧告は、前文でこう述べています——「公共調達の規則のいくつかは、競争を弱める意図がないときでさえ、意図せず談合を助けることがある」。規則のいくつかは、それを逃れる側に通る形を伝えてしまうことがある——勧告はそう認めています。今日残るのは判定ではありません。紙が一組と、費用で説明できなかった差の件数が、いくつか。それだけです。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。