IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 316
● 12 SEC「毎月すり合わせれば、需給は合う。」仕入れと販売の話には、この一言と一緒に、段階の物差しが付いてきます。あなたの会社はレベル2、目指すべきはレベル4——そう診断する道具です。この号が見るのは段の上げ方ではなく、その段がどこから来たかのほうです。
2012年、この主題の文献を集めて分類した体系レビューが出ました。要旨が総括しているのは、成熟度モデルも、測定も、業績に関わる概念も、統一された枠組みが無い、ということです。
2021年には、学術と実務の両方を集めた別のレビューが、順序について書いています。実証の証拠を先に得たのは、学術ではなく実務の側でした。この号は、会議をやめよとも、続けよとも言いません。
S&OP(Sales & Operations Planning、販売と生産の計画のすり合わせ)とは、売る側の見通しと、作る・仕入れる側の都合を、ふつう月に一度、突き合わせる会議のことです。売れる見込みと、作れる・仕入れられる量がずれていないかを、定期的に確かめます。
この会議には、成熟度モデルという物差しがしばしば添えられます。段ごとに、そろえる手順や、共有する情報や、関わる人の範囲が決められ、上の段ほど整っているとされる。そして、段を上るほど業績が上がるという含意で語られます。確かめたいのは、その含意の裏づけの厚みだけです。

この主題には、集めて数えたレビューが何本もあります。会議のやり方を比べた実験ではなく、書かれた論文を集めて分類した研究です。まず、いちばんよく引かれる三本が、要旨に何を印字しているかを並べます。
01271本を集めて、揃っていなかったのは物差しでした。2012年に International Journal of Production Economics 138巻1号へ出た体系レビューは、文献を271本集めて分類しました。掲げた目的の一つは、S&OPが企業の業績へ与える影響について量的な証拠を集めることです。その要旨の逐語は——「成熟度モデル、S&OPの測定、企業の業績に関わる構成概念について、統一された枠組みが無い」。同じ要旨は、科学的に健全な調査や事例研究がさらに要る、とも書いています。
02実証の証拠を先に出したのは、実務の側でした。2021年に Review of Managerial Science 16巻2号へ出たレビューは、学術と実務の両方から292本を分析しています。要旨の逐語は——「実証の証拠は、まず実務者によって得られ、その後に、近年になって関心を高めた学術によって受け取られた」。ただしこのレビューは、実証研究に絞り、概念的な論文を含めていないことを自ら限界として書いています。
03よく引かれる五段階は、15社の聞き取りでした。2007年に The International Journal of Logistics Management 18巻3号へ出た研究は、自ら探索的と題し、文献の見直しと15社への深い聞き取りから五段階の枠組みを組み立てました。著者自身の限定の逐語は——「標本の規模が小さいため、結果は予備的な洞察を与えるものにとどまると考えるべきである」。会社の規模や作り方の型と、計画の統合の度合いのあいだにはほとんど関係が見られなかった、とも書かれています。

段の物差しの話は、取り違えやすいところが三つあります。どれも、原典の言葉を並べれば見分けがつきます。
01「少ない」が付いていたのは、別の話でした。2012年の要旨で「少ない」が付くのは一か所だけです。それは——「財務の計画をS&OPへ統合したことを報告した研究は、少ない」という文で、多くの論文が期待した成果は部門をまたぐ計画の統合だった、という文に続く但し書きです。読めた要旨と導入の範囲に、業績への効果を測った研究の多寡を数えた文は見当たりません。本文は読めていないので、そこに何があるかは書きません。
02段の高さは、効果の証明ではありません。五段階の枠組みは、聞き取りから組み立てた予備的な見取り図であって、段を上ると業績が上がることを確かめた実験ではありません。しかも2012年のレビューは、成熟度モデルと測定と業績の概念に統一された枠組みが無いと書いています。物差しが揃っていなければ、段の高さを研究をまたいで足し合わせることもできません。
03診断モデルの中身は、読めていません。よく引かれる診断モデルの一つは、2005年に Journal of Business Forecasting 24巻3号へ出たものです。発行元は自誌を「予測・需要計画・S&OP・分析の、情報に通じた実務家のための第一の刊行物」と位置づけています。実務誌であり、査読の有無は発行元が公表していません。本文は会員の壁の向こうにあり、この記事は届いていません。届いていないものの中身は書きません。

全文まで読めたのは、六点のうち一点もありません。五点は公式の抄録まで、残る一点は本文に届かず、載った雑誌の性格だけを確かめました。読めていないものについては書きません。この号が引いた言葉は、すべて要旨と発行元の頁にあるものです。
測られたものの限定も置きます。六点のうち四点は文献を集めて分類したレビューで、会社を追った記録ではありません。2018年のレビューは五つのデータベースから2000年から2017年の571本を評価して68本を採り、S&OPの設計が業種や複雑さや組織の特性に依存すると報告しました。2014年のレビューは99本を六つの調整の仕組みに整理しています。どれも効果の大きさを測ったものではありません。この号は、会議をやめよとも、続けよとも言いません。
集まったのは、271本でした。
揃っていなかったのは、物差しのほうでした。
ここから先は、研究が命じた順番ではありません。四本のレビューが測ったのは、書かれた論文の分布と、枠組みがあるかないかです。ここからはALIFEが提案する実践の入口で、研究結果そのものではありません。会議のやり方は変えません。誰の評価もしません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
直近の、需要と供給に関わる会議のメモか計画表を一つ選ぶ。自分が作ったものでも、受け取ったものでもかまいません。会社の名前も、人の名前も書きません。
- 02COUNT
そこで数字になっている費用——売上の見込み、在庫、仕入れ額など——を書き出して、件数を数える。金額の大小は比べません。
- 03LIST
数字になっていない費用——切らす、急に切り替える、無理を通す——を思いつくかぎり書き出して、件数を数える。金額は付けなくてかまいません。
六点の著者を突き合わせると、2012年と2021年の二つのレビューは、著者を二人ぶん共有しています。独立した二つの点検ではありません。それでも、並べて確からしくなったのは「段を上れば合う」という結果のほうではなく、その段を測る物差しが、まだ揃っていないという手前の事実でした。増えたのは段の数と診断の細かさで、今日残るのは判定ではありません。紙が一枚と、金額の付いていない欄が、いくつか。それだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「需給を合わせ込むには?」を、もっと深く学ぶ。→