IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 314

(仮ビジュアル)暗い寝室で、白い枕に頬をつけて目を閉じ、白い掛け布団にくるまって眠っている女性を横から写した写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「リアルタイムで見えれば、早く気づける。」監視の道具には、たいていこの一言が付いてきます。この号が見るのは、どれを選ぶかではなく、「気づける」という言葉の中身のほうです。

手がかりは、供給の研究ではありませんでした。1995年、大学生138名に、当たり外れの混じる警報を出した心理実験があります。報告されたのは——約9割の人が、すべての警報には反応しなかった、ということでした。

この号は、監視の道具を勧めも止めもしません。扱うのは、気づくことと、動くことのあいだにある隙間のほうです。

監視の画面に映るのは、届いたか、間に合ったか、数は足りたか——納期どおり・数量どおりに届いたかを見る指標(OTIF=On-Time-In-Full、時間どおり・満数で、の意)です。ただし、赤く光った瞬間に手が動くわけではありません。

光ったあとの隙間には、いくつものものが詰まっています。誰がそれを見るのか。手は空いているのか。他の仕事とくらべて、どのくらい急ぐのか。そもそも、その知らせは信じてよいのか。どれ一つとして、監視の道具が答えてくれるものではありません。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
映るのは、届いたか・間に合ったか・数は足りたか。光った先で何が起きるかは、映らない。 Visual: ALIFE

では、その隙間で何が起きるのか。いちばん確かめられているのは、飛行機の警報を模した、実験室の心理実験のほうでした。分野が違うからこそ、借りるのは数字ではなく、機序のほうです。

011995年の実験は、学生138名の模擬警報で測られた。大学生138名が、頭を使う作業をしながら、信頼度の違う警報(真の警報が25%・50%・75%混じるもの)を受けました。要旨の一文は——「ほとんどの被験者(約90%)は、すべての警報に反応するのではなく、応答率を、真の警報が出る見込みに合わせた(確率マッチ)」。残る約10%は、全か無かの極端な取り方をしています。

021988年の短評と1984年の書籍は、中身まで読めていない。音響の学会誌の短評欄に載った2頁の論考「なぜ人は我々の警報を切るのか」(原著研究ではなく、要旨も付いていません)と、誤報の心理を扱った書籍(査読誌ではありません)。この号が到達したのは、どちらも題名と掲載先まで。中身は引きません。

032012年の総説は、病院の医療機器のアラームを整理した。2000年1月1日から2011年10月1日までに出た72本を統合したレビューで、誤報の多さ・当たりの少なさ・標準化の欠如・機器の数の多さという、多面的な問題として整理されています。これは病院の機器の話であり、読者自身の健康の話でも、供給の話でもありません。数値は持ち込みません。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
実験室の模擬警報・題名までの二点・病院の機器。確かめられたのは、この三つ。 Visual: ALIFE

もう一つの売り文句は、「協働で監視すれば、需給は合う」。相手と情報を共有し、一緒に予測し、一緒に補充する仕組み(CPFR=Collaborative Planning, Forecasting, and Replenishment、協働的な計画・予測・補充)のことです。

2013年の研究は、ある携帯電話の作り手と、その米国の全国小売の相手のあいだの、9つの製品ライン・2年半の運用データを追いました。報告されたのは学習曲線です——予測の精度は導入の直後に改善するが、改善の速度はしだいに鈍る。在庫はいったん増え、しばらくしてから減りはじめる。

01「監視を入れれば、早く気づいて先手が打てる」。監視が生むのはアラートであって、対応ではありません。1995年の実験が測ったのは応答の率で、誤報が混じると分かったとき、人はそれを見込みのほうへ合わせました。ただしこれは実験室の学生138名の記録であり、仕事の現場を測ったものではありません。

02「協働で情報を共有すれば、需給は合う」。2013年の実データが報告したのは学習曲線で、入れた直後に在庫がむしろ膨らむ時期がある、という形でした。一方、2018年に別の著者が出した研究は、イベントスタディ法とCOMPUSTATのデータで、採用した会社に複数の業績指標の有意な改善を見いだしたと書いています。時間差の話は、こちらの論文のものではありません。

03「画面が細かく光るほど、取りこぼさない」。監視に映るのは、自分が受け取る側の指標です。滞りの源は、しばしば見渡せない上流の深い層にあります。光る回数と、動ける回数と、源の見える範囲は、それぞれ別のものです。手元に遅れとして現れたときには、源のほうではもう時間が経っています。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
学生の模擬警報・学習曲線と有意な改善・下流だけが光る。間違えやすいのは、この三か所。 Visual: ALIFE

六点のうち、全文まで読めたものは一つもありません。四点は公式の要旨まで、二点は題名と掲載先までです。読めていないものについては書きません。2018年の研究も、要旨の結論の一文までしか読んでいません。

測られたものの限定も置きます。1995年の実験は、実験室の大学生138名が模擬の警報に反応した記録で、仕事の現場ではありません。2012年の総説は病院の医療機器の話で、その数値を供給に読み替えることはしません。2013年の研究は、一つの作り手と一つの小売の相手の、9つの製品ラインの記録です。この号は、監視の道具を勧めも止めもしません。

実験に参加した学生のほとんど(約9割)は、すべての警報には反応しませんでした。
応答の率を、当たる見込みのほうへ合わせたのです。

では何ができるのか。気づいた数と、動いた数を、分けて数える——これは研究が命じた順番ではありません。1995年の実験が測ったのは応答の率、2013年の研究が測ったのは精度と在庫、2018年の研究が測ったのは業績の指標です。ここからはALIFEが提案する実践の入口です。

相手に問い合わせません。仕入先や同僚を評価しません。数えるのは、自分の手元に届いた知らせの数だけ。二つを一緒にすると、光った回数だけが増えていきます。

TRY IT TODAY

  1. 01COUNT

    今日1日に自分の手元へ届いた知らせ・警告・通知を、1件ずつ数え取りの印で記録する。在庫や納期の知らせ、システムの通知、メールの警告。中身は書きません。

  2. 02SPLIT

    そのうち、自分が実際に何か手を動かした件数を、別の列に数える。動かなかったものに理由は書きません。数えるだけです。

  3. 03WRITE

    一日の終わりに、二つの合計と、その差を1行書き添える。日付・気づいた数・動いた数・差の4点がそろえば完了です。

10分。採点はありません。**相手に問い合わせません。仕入先や同僚を評価・格付けする課題ではありません。**取引や発注の判断にも使えません。組織に属していなくても、自分の作業のあいだに受け取った知らせを同じ形で数えれば成立します。しんどくなったら中止を。仕事のことで眠れない、気持ちの沈みが続くというときは、この課題より先に、信頼できる相談先や医療・支援の専門家へ。

六点の著者に、名前の重なりはありません。1984年の書籍、1988年の短評、1995年の実験、2012年の医療の総説、2013年と2018年の供給の研究——分野も、設計も、測ったものも別々です。ただし、独立した六つの検証でもありません——後ろの二本は、同じ協働の仕組みを別のやり方で測った二本です。並べて確からしくなったのは、道具の性能ではなく、「気づける」という言葉の中身のほうでした。今日残るのは判定ではありません。数字が二つと、その差が一行。それだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「供給の滞りに早く気づくには?」を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。