IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 311
● 12 SEC「まとめて買えば、安くなる。」この号が見るのは値切りの腕ではなく、そのまとめ買いを実際に測った研究が、何をどこまで測ったかです。
調達コスト〔仕入れにかかる費用の全体〕を下げるといえば、まず出るのが集中購買〔ばらばらの発注を一本の契約にまとめること〕と相見積もり。どちらも動かすのは値札の数字です。動いたのが価格なのか、費用の全体なのかは、別に確かめないと分かりません。
扱うのは6本。うち5本が二人の著者に集まっていて、独立した6つの検証ではありません。決裁権も交渉力も前提にしません。
1995年に International Journal of Physical Distribution & Logistics Management 25巻8号へ出た論文が、その道具を一言で定義しています——"Total cost of ownership is a methodology and philosophy which looks beyond the price of a purchase to include many other purchase-related costs."(総保有コストとは、購入の価格の先を見て、購入にまつわる多くの他の費用を含める、方法であり思想である)。
調べたのは11社の事例で、使われ方は仕入先の選定と仕入先の評価に分かれました。最安値を探すための計算ではありません。同じ著者が1993年に9社を調べた論文は、費用の項目立てと、導入の難しさを並べています——下に積まれた費用は値札に書かれておらず、集めにくい。

では、まとめれば下がるのか。下がった、と測った研究があります。同じ研究が、その幅がどこから出た数字かも書いています。
01一国の公共部門の枠組み契約で、価格は市場より低いと報告された。フィンランド政府の調達です。中央でまとめた契約の価格を、市場価格と比べた実測。ただし比べたのは選ばれた二つの区分だけ——"in two selected categories: flights and office supplies"(選ばれた二つの区分、航空券と事務用品において)。業種も規模も仕組みも違えば、同じ幅にはなりません。
02幅の下の端は8%でトナー、上の端は37%で最も柔軟な条件の航空券。"savings between different individual products tested ranged from 8% (toner cartridges) to 37% (flights with very flexible contract and cancellation terms)"(試した個々の製品ごとの節減は、8%(トナーカートリッジ)から37%(とても柔軟な契約・解約条件の航空券)まで幅があった)。事務用品5品目の平均は25%、航空券は最安値を基準にすれば19%。価格ベースで、遵守や調整の費用は入っていません。
03同じ研究は、入札にかかる事務の側も測っている。各機関がばらばらに行う入札は1件あたり約167時間・5,845ユーロ、全政府向けの中央契約1件は約1,030時間・約2万ユーロ。使えるのは約90機関。"With full compliance … savings of over 1,5 million € can be achieved … by moving to a centrally tendered framework agreement in one category"(全面的に遵守されたとき、一つの区分を中央で入札する枠組み契約に移せば、150万ユーロを超える節減が得られうる)。

その節減は、契約が守られたときの数字です。有効な契約があるのに現場が契約の外で買う行動——契約外購買〔マーベリック購買〕を扱った研究が、別に2本あります。
01「契約さえ結べば安さは残る」——残らないことがある、と2009年の論文。Journal of Business Ethics 85巻2号。系統的な文献レビューで契約外購買の形を並べ、意図しないものから、あからさまな妨害までの幅があるとしました。購買の実務家への面接でその形を確かめ、枠組み契約の便益は組織全体の遵守があってはじめて出る、と書いています。
02「価格は下がるがコストは下がらない」——この一般則を、あの研究に負わせない。8〜37%を出したのと同じ研究が、事務費用の節減も測っています。漏れの話の出どころは、契約外購買を扱った別の2本のほう。そちらの逐語——"Maverick buying prevents the full utilization of volume discounts negotiated, and also raises unnecessary process costs."(契約外購買は、交渉した数量割引の完全な活用を妨げ、不要な事務費用も上げる)。
03「守らせるなら賞罰」——一国の質問紙の結果は、そう出ていない。2011年の Journal of Purchasing and Supply Management 17巻3号。同じ国の政府調達の質問紙で、三つの型を試した研究です。原典の言い方では、買い手の裁量を狭めればどの型も減らせる、訓練も助けになる。性別や在職年数は影響せず、遵守の風土も遵守と結びついていませんでした。割り付けた実験ではありません。

この号は、いくら下がるかを書きません。全文まで読めたのは6本のうち1本——8〜37%を出した研究だけで、それも著者本人が博士論文にまとめた版です。学術誌に載った版にも同じ数字が同じ形であるかは、照合できていません。残る5本は公式の抄録までです。
射程も狭い。一国の公共部門の枠組み契約の、二つの区分の個別品目を市場価格と比べた価格差です。事務費用のほうも、時間は回答者の見積もりであって計測記録ではなく、式は入札の直接費用しか見ていない、と原典が断っています。この6本を当たった範囲では、日本の企業を対象にした測定は見当たりませんでした。
"Investing in reward and sanction systems, however, does not appear to be helpful in reducing the three types of maverick buying tested for in this study."
(報奨と制裁の仕組みへの投資は、この研究で試した三つの型の契約外購買を減らすのに、役立つようには見えない)
効き目が出たと報告されたのは賞罰ではなく、買う人がどこまで自分で決められるかの側でした。ただしこれは一国の公共調達の質問紙です。あなたの職場でそうなる、とは書けません。
TRY IT TODAY
- 01PRICE
紙かメモアプリに今日の日付を書き、最近の仕入れや買い物を一つ選ぶ。いちばん上に、支払った価格を書きます。
- 02UNDER
その下に、届いてから今日までにかかった手間や費用を、思い出せるだけ並べる。送料、検める時間、手直し、置き場、切り替えの面倒。金額は要りません。
- 03COUNT
最後に、**並んだ項目の数を1つの数字**で書き添える。総額は出しません。数えきれない項目があれば、そう書いて終わりです。
年代順に。1993年、9社の事例から費用の項目立てと導入の難しさ。1995年、11社の事例と、価格の先を見るという定義。1999年、その情報を計算に載せて仕入先を選ぶ仕組みが示され、二つの製品群での実装で現行の実務に比べ10%を超える潜在的な節減が見込まれると報告された。2009年、契約外購買の形が並べられ、2011年、一国の公共部門で価格差と事務費用が測られ、同じ年に契約外購買の要因が質問紙で試された。
6本のうち5本は、二人の著者に集まっています。3本が同じ一人、2本がもう一人。しかもその3本は、同じ国の同じ公共調達が材料です。独立した6つの検証ではありません。今日残せるのは、一つの買い物と、その価格と、価格の下に並んだ項目の数。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「調達コストを下げるには?」を、もっと深く学ぶ。→
