IN SOURCING & SUPPLY · ISSUE 309
● 12 SEC品質・価格・納期・対応に点をつけ、重みをかけて合計する。高い順に並べれば、良い仕入先が上に来る——仕入先選びには、たいていこの表が使われます。この号が見るのは、どの項目を入れるべきかではなく、その合計点が、どこまで選んでくれるのかのほうです。
いちばん有名な下敷きは、1983年に Harvard Business Review へ出た記事。査読を経た論文ではなく、経営コンサルティング会社の在籍者が書いた実務誌の記事です。そこで四つに分けられたのは、仕入先ではなく、買っている品目のほうでした。
20年後、査読誌がこの枠を点検します。測定こそが弱点で、理論は測る手順を与えていない、と。ただし同じ論文は、批判のほうも大部分は退けられた、とも締めています。
1983年の記事が提案したのは、二つのものさしで調達品目を四つに分けることでした。利益インパクト(その品目が損益に与える影響の大きさ)と、供給リスク(切れたときにどれだけ困るか)。分けられるのは購入している品目であって、相手ではありません。
ものさしの中身も、1983年の記事では開いたままです。利益インパクトは購入量でも、総購入費に占める割合でも、製品品質や事業成長への影響でも定義できる。供給リスクは入手可能性、供給者の数、競合する需要、内外製の余地、保管の危険と代替の可能性から評価する。「または」で並ぶ選択肢であって、計算式ではありません。
同じ考え方を仕入先との関係のほうへ広げた論文は、1997年に別の雑誌へ出ています。表が仕入先を並べはじめるのは、そこから先です。

では、点のつけ方は誰が決めるのか。2003年に Journal of Purchasing & Supply Management 9巻5-6号へ出た論文が、そこを文献横断で点検しています。
01測定は、この手の分類の枠すべてにとっての弱点だと書かれた。逐語は——「測定は、すべてのポートフォリオの枠にとってのアキレス腱だと考えられている」。1986年の先行研究の結論として引かれています。理論は測るための処方も手順も与えていない、とも続きます。
02重み付けは「もっとも重要な工程でありながら、同時にきわめて主観的」。この一文は同論文の地の文ではなく、1997年の別の論文(105頁)をこの論文が要約した形で出てきます。何を項目に入れ、どれだけの重みをかけるかは、決める人たちが合意するしかない——と続きます。
03境目が引けなければ、分類も、そこから出る推奨も恣意的になる。逐語は——「区画の判別に問題があるなら、品目の分類は恣意的になり、示される推奨も恣意的になる」。さらに、区画のあいだをどう動かすかについて、この枠は指針を与えていないとも書かれています。

では、この枠には根拠が乏しいのか。同じ論文は片側に振れていません。実務での実際の使われ方はほとんど分かっておらず、刊行物の多くは概念的か逸話的である——そう書いたうえで、要旨は「探索的な事例研究にもとづき、この枠への批判は大部分が反論され、退けられてきた」と締めます。
その事例研究は、オランダの工業系企業3社への聞き取り28回。統計的な代表性を狙って選んだ標本ではない、と著者自身が断っています。
01「表を埋めれば、良い仕入先が出てくる」。出てくるのは合計点です。同じ論文の結びは、表を埋めることは分析の出発点であって終着点ではない、と書きます。経験を積んだ使い手は、埋めたあとに議論と手直しをしていた——というのが3社の聞き取りの所見です。
02「この枠を使えば、仕入先選びが上手くなる」。同じ2人が2005年に出したのは質問紙調査です(オランダの購買の職能団体の会員1,153人に配布・有効回答238・回収率20.6%)。測られたのは使っているかどうかと、購買部門の位置づけ・専門性との関連。大きい会社が使っている見込みは中小企業のおよそ2.6倍でした——オッズ比で、1なら差なし、1より大きいほど起こりやすい関連です。うまく選べたかを測った数字ではありません。
03「四つの区画には、良し悪しの順番がある」。1983年の記事が四つの区画それぞれに書いたのは、必要な情報の細かさと、決める人の水準です。良い区画・悪い区画の順位づけはありません。区画のあいだの移動については、2003年の論文が「指針を与えていない」と書いたとおりです。

全文まで読めたのは六点のうち三点です。あとの三点は、二点が公式の抄録まで、一点は書誌の情報までしか読めていません。読めていないものについては書きません。だから、重み付けの主観性を最初に書いた1997年の論文も、2003年の論文が要約した形でしか引いていないと断ってあります。
測られた場所も狭い。聞き取りはオランダの工業系企業3社、質問紙は同じ国の製造業の購買担当者です。日本の商いも、一人で発注も検品も回している小さな現場も入っていません。この号は、仕入先を格付けする道具を配りません。値切り方も、契約の条文の読み方も扱いません。
表を埋めることは、分析の出発点であって、
終着点ではない——2003年の論文の結びです。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは枠の使われ方であって、あなたの表の正しさではない。ここからは、ALIFEが提案する実践の入口です。仕入先を評価も格付けもしません。
TRY IT TODAY
- 01LIST
いま仕入先を見るときに使っている項目を、思いつくまま書き出す。3つでも8つでもかまいません。**会社名も人の名前も書きません。**仕入れのない働き方なら、頼む相手を選ぶときの項目で同じことをします。
- 02WEIGHT
その一つひとつに、自分がどれだけの重みを置いているかを、言葉か割合で書き添える。合計が100にならなくてかまいません。**正しい重みを探す課題ではありません。**
- 03NOTE
いちばん重い項目の横に、「いつ・なぜそう置いたか」を一言。思い出せなければ「思い出せない」と書いて先へ進みます。
年代順に並べ直すと、重なっているのは著者のほうです。2003年の聞き取りも、2005年の質問紙も、同じ2人。別のデータですが、同じ国の、同じ研究計画の系統から出ています。六点は、独立した六つの検証ではありません。——というのが、この号の読み筋です。
確かめられたのは三つ。どう測るかは主観的な合意で決まること。実務での使われ方の実証は乏しいこと。区画の移動については何も教えてくれないこと。そして、批判のほうも大部分は退けられている。今日残せるのは判定ではありません。項目がいくつかと、重みと、一言。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「良い仕入先を選ぶには?」を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- オッズ比
- ある状態の「起こりやすさの関連」を表す倍率。1なら差なし、1より大きいほどその群で起こりやすい関連です(確率が何倍、という意味ではありません)。
