IN RESEARCH & DEVELOPMENT · ISSUE 302
● 12 SEC「18か月ごとに2倍。」——一度は聞いたことがあるはずの周期です。この号は、その数字が正しいかどうかを判定しません。開くのは出どころのほうです。どの技術が伸びるかも、どの方式を選ぶべきかも扱いません。会社名も製品名も人名も出しません。
射程を先に。使った資料は6点、本文の全文まで読めたのは5点です。査読前の版は要旨までで、読めていない部分を読めたことのようには書きません。
いちばん有名な見通しの出どころは、特定できます。1965年4月19日に出た、ある業界誌の記事です。業界誌の記事であって、査読の手続きを通った論文ではありません。書いてあるのは三つ。一つめは、何が増えているか——「最小の部品費用で作れる複雑さが、およそ年に2倍の割合で増えてきた。」増えているのは性能でも速度でもなく、費用がいちばん安くなる点での部品の数です。
二つめは、期間です——「少なくとも10年は、ほぼ一定のままだと考えない理由はない。」少なくとも10年であって、永久ではありません。三つめは、具体的な予測。1975年までに最小費用あたりの部品数は65,000個になる、と数字で書かれています。期限と数字の入った、10年ぶんの見通しでした。

その10年後、同じ人物が学会の予稿で傾きを直しています(学会の予稿であって、査読誌ではありません)。一文はこうです——「新しい傾きは、10年代の終わりまでには、1年ごとではなく2年ごとの倍化に近づくかもしれない。」1年ごとが、2年ごとになりました。呼び名が付いているものは、この時点で一度、本人の手で書き換えられています。
01「18か月ごと」は、1965年の記事にも1975年の改訂にも出てきません。この号が当たったのは、その二つの本文です。その範囲で、この値は見つかりませんでした。原典の周期はおよそ1年、改訂後は2年。18か月はちょうどその中間ですが、中間を取った、と書いた原典もありません。
02呼び名を誰が付けたのかも、辿れません。2015年に、ある技術系の雑誌(雑誌であって、査読誌ではありません)が由来を調べた記事を出しています。層を分けて書きます。由来は依然として不明瞭だと書いたのは歴史の研究者で、その一句をこの記事が引いています。記事を書いた本人も、よく名前が挙がる人物が名付けたという説の裏づけは見つけられなかった、と書いています。名付けたとされる本人の回想は、取材のやりとりのなかで話に浮かび上がった、というものです。
03書き換わったのは周期で、落ちたのは期限でした。1965年の記事には、少なくとも10年、という期限が入っています。いま流通している言い方に、期限は付いていません。周期は置き換わり、期限は消えました。

では、こういう見通しはそもそもどれくらい当たるのか。2013年に査読誌へ出た研究が、正面から測っています。62の技術について費用と生産量のデータを集め、将来の費用を言い当てる六つの立て方を比べたものです。結果は、しばしば言われるほど一方的ではありません——「もっとも良い予測を出すのは積み上がった生産量を軸に置く側だが、時間を軸に置く側も、大きく引き離されてはいない。」
同じ要旨は、なぜ差が小さいのかも書いています。費用が時間とともに指数的に下がり、生産量が時間とともに指数的に増えていれば、二つは見分けがつかなくなる。この二つの当てはまりはほぼ同じだ、と。どちらが正しいかという問いは、この場面では立ちません。
01「法則どおりに進んできた」——約束されていたのは、10年ぶんでした。期限は原典の本文に印字されています。それを外して読むと、看板だけが残ります。
02「技術の進歩は予測できない」——2013年の研究は、逆を書いています。同じ研究の一文は「技術の進歩は予測可能である。ただし、対数誤差の平方根が、予測の期間に比例して、典型的には年率2.5%で大きくなる。」です〔対数誤差=倍率のずれを対数の目盛りで測った誤差〕。予測できる、と、いつまで予測できる、は別のことです。3年先の線と15年先の線を、同じ太さで描くことはできません。
03「1本の線が出る」——2016年の研究が出したのは、幅の見積もりでした。53の技術の履歴を使い、費用の低下を、ばらつきを持った歩みとして書き直した研究です。誤差の分布を時間の関数として近似的な閉じた形で導き、多くの技術と多くの期間の予測誤差が、同じ一つの分布の上に重なることを示しています。ただし、この号が読んだのは査読前に公開された版です。

標本を断ります。62の技術も53の技術も、費用と生産量の記録が残っている技術から集められたものです。どちらも過去へさかのぼって当て直す試しで、無作為に割り付けた実験ではありません。だから、この号はどこにも「〜が〜を起こした」とは書いていません。
不在の射程も書いておきます。「18か月」を探したのは、1965年の記事と1975年の改訂、この二つの本文です。その範囲で見つからなかった、というだけで、ほかのどこにも無いとは書きません。呼び名の由来も同じで、不明瞭だと書いた文章に行き当たったところまでです。
線は引けます。
落ちたのは、期限のほうでした。
次の3行は、研究が命じた順番ではありません。測られたのは技術の費用と生産量で、見かけた予測を書き写したとき何が起きるかを確かめた研究は、この号は扱っていません。ここからはALIFEが提案する記録の入口です。
TRY IT TODAY
- 01PICK
自分の分野で見聞きした「◯年後にはこうなる」という言い方を1つ選び、その中身だけを1行書く。媒体名も人名も書きません。
- 02NOTE
それが**いつ、どの種類の場所で**言われたかを添える。業界誌か、学会の予稿か、査読誌か、雑誌か。分からなければ「不明」と書く。
- 03CHECK
最後に、**期限が付いていたか**——いつまでの話か——だけを見る。付いていなければ「期限の記載なし」と書く。記録はこの3行だけです。
線の引き方から、道具の話へ移ります。技術ロードマップという枠組みを整理した2004年の論文が、査読誌にあります。約40のロードマップを調べ、16の大きな型に分類したものです。要旨の書き方に注意が要ります——「この技術は、乱れた環境を生き延びる助けになりうると提案される。」提案される、です。同じ要旨は、ロードマップは形式の上では見かけほど単純ではなく、その作成にはかなりの難しさが伴う、とも書いています。
全文を当たった範囲に、この枠組みを導入した組織とそうでない組織を比べた測定は出てきません。整理と手順の提案であって、導入したらどうなったかを測った研究ではないということです。図が一枚に収まることと、中身が確かめられていることは、別です。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「技術ロードマップを描くには?」を、もっと深く学ぶ。→