IN RESEARCH & DEVELOPMENT · ISSUE 295

(仮ビジュアル)暗い背景の石の台に、白い発酵乳の瓶と、切り漬けを詰めた低いグラスと、琥珀色の発酵茶が入った細長い容器が、三つ横に並んでいる静物写真● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

「特許◯件。」——数字が一つ置かれると、たいていそれは発明の量として読まれます。この号が見るのは、多いか少ないかではなく、何を数えた数字か、のほうです。

1990年の総説にこうあります——このデータの砂漠のなかで、特許統計は、素晴らしい豊富さと客観性の蜃気楼として立ち上がってくる。書いたのは批判者ではなく、同じ総説で、困難にもかかわらず特許統計は興味深い、その理由を示す、と宣言している側です。

使った資料は6本。全文まで読めたのは4本、うち3本は雑誌に載る前の作業論文の版で、残る2本は抄録〔冒頭の要約〕まで。雑誌に載った版の本文まで読めたものは、1本もありません。

定義から。公的機関が毎年出す資料の2025年版にこうあります——出願数として各国・地域の特許官庁に、直接なされた特許出願、PCT出願によってなされた特許出願の両方をカウントしている。査読誌ではありません。

数えているのは、官庁になされた出願の回数です。理由も同じ資料に——特許は属地主義で、権利化したい複数の国に出願がなされるため、ある国からの出願を重複して数えている可能性がある。同じ発明を3か国に出せば、3件です。

数を分母ごとに分けます。世界全体の出願数は2023年で355万件。「日本への」出願数は同年30.0万件、うち日本に居住する出願人からが76.3%。分母が変わります——「日本からの」全出願数のうち55.1%(2023年)が日本の官庁への出願。30.0万件に掛かるのは76.3%のほうです。

(仮ビジュアル)薄暗い部屋の黒枠の大きな鏡の前で、黒いローブ姿の女性が鏡に映った自分と静かに向き合っている写真
出願数として数えているのは、官庁になされた出願の回数。同じ発明を3か国に出せば3件になる。日本の公的機関が公表している資料の定義・2025年版。 Visual: ALIFE

重複を除く数え方も同じ資料に——パテントファミリーとは優先権によって直接、間接的に結び付けられた2か国以上への特許出願の束である。これを数えれば同じ出願を2度数えずにすみ、発明の数にほぼ等しくなる、と資料自身が書きます。

パテントファミリー数の割合は2020年で12.9%、8件に1件ほど。日本は同年68.3%が単国出願、31.7%が複数国出願。同じ「特許件数」が、二通りの数え方を指しています。

01制度の上で、権利になりえない発明。1990年の総説の第3節に三つが並びます——すべての発明が特許になりうるわけではなく、すべての発明が特許にされるわけでもなく、特許にされた発明どうしも、その「質」において大きく異なっている。「蜃気楼」の一節は別の節にあります。

02権利にできるが、出願されない発明。1993年の欧州の調査(有効回答604社)が測ったのは、特許出願がなされた発明の割合。製品で平均35.9%、工程で24.8%——19業種の、売上で重みづけた率です。対象の発明は1990年から1992年、読めたのは抄録まで。

03出願されたが、中身の大きさが違うもの。同じ総説が紹介する1957年の郵送調査。1938年・1948年・1952年に登録された特許の2%無作為標本で、正の利得があったと答えられた特許(関係する回答の約20%)は平均577,000ドル、中央値およそ25,000ドル。分母を広げれば平均は112,000ドル、中央値はゼロ近辺以下です。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
権利になりえない・出願されない・中身の大きさがまるで違う。1990年の総説が並べた三つの層。逐語は作業論文の版から。 Visual: ALIFE

2005年の研究は、1851年と1876年の万国博覧会の出品から約15,000件の発明(12か国と10か国)を集めました。特許法を持たない国の発明者は特許の重要でない少数の業種に集中し、持つ国の発明は多様。変わったのは量ではなく、分野の広がりです。

この号が使ったのは、雑誌の版の約15,000件です(2003年の作業論文版は出品物を13,876件と19,076件超、データを32,952件と書きます)。

どう数えるか。2013年の研究は、ある国の発明者が出したすべての優先権出願を、官庁を問わず数える指標を提案します。序論に、この号の芯が——基準となる日付、割り当ての基準、集計の水準に応じて、特許の件数は非常に大きく変わりうる。

2019年の研究は、ハードディスク装置の産業(1976年から1998年)で、発明を直接に測った物差しと特許件数を比べます。三点——特許は当てずっぽうよりよく発明を予測する。実際に発明した条件では複合企業や大きな企業ほど多く特許を取る。改正は関係を定常でなくするようだ。比較には注意を、が結び。

01「件数を見れば、どれだけ発明が生まれたか分かる」。数えているのは出願の回数で、発明ではありません。同じ発明を3か国に出せば3件。同じ頁の数字も混ぜないでください。2023年の30.0万件は「日本への」出願数で内訳が76.3%、55.1%は「日本からの」出願の内訳。掛け合わせると、どちらでもない数に。

02「特許にならなかったものは、たいした発明ではない」。出願されるのは3件に1件ほど、業種で桁が違います。製品は繊維の8.1%から医薬の79.2%、工程は繊維の8.1%から精密機器の46.8%。合わせて50%超は四業種だけ。差の一部は、発明の多さではなく、その業種で出願する習わしです。

03「足し上げれば、全体の大きさが分かる」。平均と中央値は20倍以上離れていました。ここで逆接を落とさないでください。第一の発見は逆で、所有者の55%超、無回答を非使用とみなせば約41%が商業的に使われたと答えました。総説は——ほとんどの特許は決して使われず、意味のある経済的な出来事と結びついていない、というのは正しくない。

(仮ビジュアル)縦に3分割された写真。左は乱れた寝具のベッド、中央は窓の外へ目を向ける女性、右は玄関の床に脱ぎ置かれたコートと鍵
数えているのは出願の回数・出願されるのは3件に1件ほど・分布はごく少数に引っ張られている。取り違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

標本の偏りを断ります。証拠は、欧州の産業企業604社(1990年から1992年・19業種)、19世紀の博覧会の出品者、ハードディスク装置の産業(1976年から1998年)、1938年・1948年・1952年に登録された特許の2%から。出願する余力のない発明者や、記録に残らなかった発明は入りません。小さい企業では使用の割合(71%)も無回答も高い、と原典が断ります。

どの研究も、無作為に割り付けた実験ではありません。だから「〜が〜を起こした」とは書きません。1957年の郵送調査は孫引きです。発明のうちどれだけが出願されるかを日本について測った査読研究は、読めた範囲にありません(無いことの証明ではありません)。

公的資料の定義では、数えているのは官庁になされた出願の回数。
同じ発明を3か国に出せば、3件になります。

次の3行も、研究が命じた順番ではありません。書き写したとき何が起きるかを確かめた研究は、扱っていません。判定はしません。良い悪いも書きません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    この1週間で見かけた「特許◯件」型の数字を1つ選び、見た場所の種類だけを書く(社内の資料、報道、交流サイト)。**媒体名も会社名も人名も書きません。**

  2. 02NOTE

    何を数えたものかの定義が添えられていたかを見る。あれば1行だけ書き写し、なければ「定義の記載なし」。正しいかは判定しません。

  3. 03CHECK

    対象の国・地域と、いつの数字かが書かれていたかを見る。あればそのまま写し、なければ「記載なし」。記録は、この3行だけです。

5分。採点はありません。定義を辿りに行くのは、この課題の外です。**出願するか、権利になるかの判断には使えません。**自分の発明を検索の対象にしないでください。誰にも見せず、提出もしません。

年の順に。1990年、総説が三つの層を並べる。1998年、欧州604社の調査が、出願されるのは製品35.9%・工程24.8%だと測る。2005年、博覧会の約15,000件が、変わるのは量ではなく分野の広がりだと示す。2013年に数え方の提案、2019年に比較の注意、2025年に二通りの定義。35年で足されたのは、数え方の但し書きのほうでした。

確かめられたのは三つ。数えているのが出願の回数であること。重複を除く数え方が別にあり、発明の数にほぼ等しいと資料が書いていること。「蜃気楼」を書いたのが、擁護を宣言している側だったこと。扱いやすさが正確さと取り違えられていく——というのが、この号の読み筋です。残せるのは、数字と、定義の有無と、対象と年。3行の記録が、1件残るだけです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS「発明を権利にするには?」を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

中央値
全員を並べたときの、ちょうど真ん中の人の値。平均と違って、極端な値に引っ張られません。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。