IN ORGANIZATIONAL FORTUNE · ISSUE 287
● 12 SEC「あの人が抜けたら、うちは止まる。」組織的持続可能性が指すのは、そこです。一人や一箇所に寄りかからずに働きが続いている状態で、環境への配慮でも格付でもありません。
では、測れるのか。測ったと書かれた数字は、二つの入口から来ていました。人が抜けた出来事の前後を比べる自然実験と、個人に配る自記式の質問票〔答える本人が記入する形式〕です。後者で答えるのは個人であって、組織ではありません。
まず、出来事の側。2020年の論文は、経営の最上位にいる人の入院を使い、企業とその人の組み合わせを固定したまま推定しました。交代ではなく、同じ人が一時的にいなくなる前後です。
材料は、デンマークの12,753社・133,219企業年・1996年から2012年。物差しは株価ではなく、会計上の営業利益率(平均8.6%ほど)です。入院は、そのうち1日以上が9,363(7.0%)、うち5日以上が2,945(2.2%)、亡くなった年は0.2%でした。
結果は日数で分かれます。単純な比較では5日以上で産業の基準を1.6%下回り、平均からは17〜19%の落ち込みだと原典は換算。固定した推定では、1日から4日は係数−0.00240〔回帰係数=利益率がどれだけ動いたかの数〕で明確な差とは言えず、原典も「短い入院は、業績に意味のある効果を持たない」。5日から9日は−0.00617で10%水準、10日以上は−0.00983で1%水準〔有意水準=偶然でも出る見込み。1%のほうが厳しい〕。
換算は、10日の入院で平均から5.8%、利益率そのものでは0.5パーセンテージポイント〔割合そのものの差。8.6%が8.1%になれば0.5ポイント〕。ただし前の年の入院には有意な効果が見られず、原典は「利益率は速やかに戻り、翌年には二つの部分標本で同じくらいになる」。

では、永久に抜けたときは。出来事が起きていない組織は、どう測るのか。
01入院した日数を物差しにする——デンマークの12,753社。一時的な不在を使う設計。限界: 対象は従業員20人以上・資産500万米ドル以上の企業です。
02創業した人が亡くなった前後——ノルウェーの新設企業73,500社のうち約1,500件。永久の不在。1999年から2015年の新設企業の全数から約1,500件の死亡を、差分の差〔前後の変化どうしを引き算する測り方〕で比べます。対応づけた標本の全体で、生存10.3パーセンテージポイント・売上約60%・資産58%・賃金53%・雇用21%・利益36%。4人未満は主に生存に、最大の層(創業時9人以上)は売上約54%・雇用約45%、生存は約3%で明確な差とは言えません。限界: 閉鎖企業を0のまま残し、係数を百分率に直した値。抄録は60%を大きい側に割り当てますが、本文で60%が付くのは全体(大きい側は約50%低い)。
03登記の記録で年齢と死亡率を測る——ミュンヘンおよび上バイエルンの171,502件。1990年の論文は1980年から1989年の商工会議所の記録で、若い組織ほど失敗しやすいという1965年以来の仮説は、西ドイツの事業組織の死亡ハザードの良い表現ではないと示しました。段は三つ——171,502件を入手、155,415件で生存時間を計算、記入の無い115,070件が落ちて40,345件、多変量は40,018件。落ちた側の死亡リスクは高い、と原典は書きます。限界: 手工業・農業関連・医師・建築士・弁護士は対象外。

出来事が起きていない組織で「疲弊」を測った数字は、たいてい個人が自分について答えた質問票の集計です。2015年のレビューは、三つのデータベースを2014年10月まで検索して92件を同定し、およそ10件中8件が同じ一つの自記式の尺度で測っていました〔伏せたのは尺度の名前です〕。92も8/10も研究の数と割合で、人の割合ではありません。統合ではなく数え上げです。
得点は抑うつの尺度と.60を超える相関がしばしば観測され、例では r = .68〔r は二つの測り方がどれだけ一緒に動くかを表す数。1に近いほど同じもの〕。レビューは二つの区別を概念として脆いとも書き、その例の2013年の研究は筆頭著者自身の先行研究です。世界保健機関の2019年5月28日付の説明は「それは医学的な状態としては分類されていない」、置かれた章は健康状態や保健サービスとの接触に影響する要因で、職業上の文脈に限るとも明記。
01「主要な人が抜けると、組織は傾く」——経路も、続く長さも別でした。一時的な不在(入院)で下がったのは同じ年のうち、翌年には戻っていました。永久の不在(死)のほうは持続的だと報告されています。規模で経路も分かれます。別の役員では同様の効果が出ておらず、原典は最高経営責任者は特異だと書きます。個人の資質の話に変えないこと。分けたのは、交代の混乱と、その人にしか通っていない構造です。
02「組織の疲弊は、割合で言える」——有病率は不明だと原典が書きます。原典の一文は「合意された診断基準が無いことを考えれば、厳密に言えば、有病率は不明である」。分類の上でも、医学的な状態ではありません。だからこの号は、割合を書きません。
03「組織が若いうちが、いちばん危ない」——置き換えた側にも留保があります。要旨は、死亡率は資源賦存に応じて創業後1年から15年に頂点を迎えると書きます。ただし一枚岩ではありません。モデルを置かない推定では頂点は創業後6か月から9か月。1年から15年は法形式で割った話で、簡易営業者は1年から2年、商業登記の企業は11年から15年。後者は観測期間の111か月を超えるため慎重に、と原典が脚注で断ります。規模を統制しても法形式の差は残りますが、原典は法形式を追加の指標と書くだけで、どちらが主かは比べません。

全文まで読めたのは、七つの資料のうち六つ。読めていないものについては書きません(抄録までの1件は2010年の刊行版。同じ研究の作業論文版は全文まで読みました——生命科学の研究者112人の早く予期せぬ死で、共同研究者の、質を調整した論文産出率が平均5%から8%、持続的に低下。標本は企業ではなく個人です)。標本は企業と登記記録、査読誌92件、そして米国の生命科学者。無作為に割り付けた実験は、読めた範囲に1本もありません。
これは、あなたや誰かの状態を測る記事ではありません。組織や経営への助言でもなく、売り買いの判断にも使えません——被説明変数は会計上の利益率・売上・雇用・生存で、株価ではありません。
1日から4日の入院では、明確な差とは言えませんでした。
10日の入院で平均から5.8%——そして翌年には、戻っていました。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。評価も判定もしません。
TRY IT TODAY
- 01OPEN
**直近1週間の、自分の記録を開く。**予定表、送信済みの連絡、共有の場所の更新履歴、作業のメモ——自分が見られるものだけ。
- 02COUNT
**自分ひとりしか触っていない作業を拾い、件数だけを数える。**基準を一行だけ添えます(たとえば「記録上、他の誰の名前も出てこないもの」)。良し悪しは書きません。
- 03COMPARE
**記録から数えた件数と、感覚で答えるとしたら何件かを、並べて書く。**残すのは基準の一行と、二つの数字だけ。
出来事の側は組織の記録で測れますが、出来事が起きるまで使えません。質問票の側は誰にでも配れますが、答えるのは個人です。三つ目の道具——手続きが何人を通っているかを数えること——を「無い」とは書きません。書けるのは、開いた資料には出てこなかった、まで。
測れそうな響きのある言葉ほど、何を測ったのかを先に見る——というのが、この号の読み筋です。確かめられたのは四つ。日数で効き方が分かれたこと。翌年には戻っていたこと(死は持続的)。登記の頂点は、創業の日ではなかったこと。有病率は不明だと原典が書いていること。記録が1件、残るだけです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUS組織的持続可能性を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- 相関係数 r
- 2つのものが連動する強さ。−1〜+1で、0は関連なし。一般的な目安では ±.10=弱い、±.30=中くらい、±.50=強い関連とされます。関連があっても、原因と結果の関係とは限りません。
- 統計的に有意
- 「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。

