IN ORGANIZATIONAL FORTUNE · ISSUE 284
● 12 SEC提携の六〜七割は失敗する。外と組む話でよく出てくる数字です。この号は出どころを追いかけました。査読誌の幅は、六〜七割ではありません。2009年の総説の逐語——諸研究は、提携の30%から70%が失敗することを示してきた。30%と70%では、倍以上ちがいます。
同じ総説にもう一つ、打ち切りの率は50%を超えると報告されている、という一文。典拠の2008年の論文を開くと——100件の提携のうち66件が5年後も存続しており、34件が終了していた。34件。100件のうち34件は、50%を超えません。
引用した側と引用された側で、数が合いません。しかもその冒頭には、打ち切りの率は30%から70%に及ぶ、と三本の査読論文を典拠に書かれています。同じ幅が、片方では「失敗」、もう片方では「打ち切り」の率。動いているのは測る精度ではなく、数えている出来事のほうです。
アライアンス・協業開放性(alliance openness)が指すのは、外の組織とどれだけ組むか。この号が扱うのは、その数え方です。
1件は一つの提携か一つの合弁で、企業の1社でも、あなた1人でもありません。合弁(joint venture)は出資して作る共同の事業体、出資のない取り決めは契約型の提携。この区別が、そのまま数字の食い違いになります。
読めた8点のどこにも、無作為な割り付けはありません。2008年の研究は5年あけた2回の質問紙調査(答えるのは当事者本人・自己申告の7点尺度)、1997年の研究は記録にもとづく出来事史の分析(加速事象時間モデル)で、係数は存続の長さへ。ハザード率については結論を出せない、と原典自身が断ります。この号は「組めば成果が上がる」とも「組むと失敗する」とも書きません。

では、その数え方はどうなっているのか。まずたどったのは、この3本でした。
01幅の出どころは2009年の査読誌の総説。ただし典拠は2004年の実務書。30%から70%の直後に括弧で示された典拠が、その本。査読誌ではありません。その本には到達していないので、中の数字がどの標本から来たのかは書けません。同じ総説には、専門部署を置く企業の成功率が約70%、置かない企業が約40%も並びます(「成功」の定義は読んだ範囲になし)。
02「50%超」の典拠に挙がった2008年の研究は、提携100件を5年追い、終了は34件。連盟の会員600社のうち、電話で連絡がついた493社、同意した263社を経て有効回答100件(回答率29%)。内訳は国内50・北欧13・欧州22・域外15。5年後、66件が存続、34件が終了、うち25件が突然の打ち切り(意図した協力期間が終わる前の解消)。残る9件は目的を達しての終了。回帰(非標準化係数・N=100)で提携の古さは−0.24(p<0.05。負は、古いほど打ち切りが起きにくい側)、古さの平均10.75年。
031997年の研究が数えた解散は、第三者への清算または売却だけ。米国の電子産業の合弁、1979〜1988年に設立、1995年9月まで観察。当初430件から条件を満たす186件(国境をまたぐ137・米国内49)。操作化の逐語——第三者への清算または売却を、解散の操作上の定義として用いた。存続と買収は、打ち切り扱いとした〔その先が分からないものとして数えない〕。操業期間を定めた合弁は除外、親会社に連絡して予期せぬ終わりだったことも確認。解散率43%、平均存続4.97年、存続27件、買収78件(42%)。買収を事象として数え直すと、終了率は日米69%・米米94%。

動くのは、要約されて手渡されていく途中のほうです。落ちやすいのは3か所。
01「六〜七割」の形が載るのは、査読誌ではなく実務誌のほう。2007年11月の実務誌の記事です。同じ数字が二つの形で——本文は60%と70%のあいだを、要約欄は60%から70%を行き来する。同じ文に、提携の数は年に25%ほど増えている、も並びます。どちらも「諸研究が示すところでは」だけで、どの研究かは記されていません。読んだ配布版に、脚注も文献表もありません。ただし一方を正解にはしません。2008年の論文は、同じ30%から70%を三本の査読論文を典拠に挙げます。読めた範囲に、六〜七割そのものを数えた研究はありません。
02「解散は失敗ではない」を書いたのは、解散を数えた研究ではない。畳んだから失敗とは限らない。正しい論点です。書いているのは、解散を数えた1997年ではなく、打ち切りを数えた2008年のほうです。——終了が失敗を表すのか無事な完了を表すのかを知らないかぎり、終了を成果の基準として使うべきではない。1997年は逆で、目的を達して畳んだ合弁は数の中にありません。予定された終わり方を先に外したのは、予期せぬ出来事という測り方を作るため——というのが、この号の読み筋です。設計は誤りではなく、落ちるのはその数を失敗率として持ち出したときです。
03正の関連が報告されたのは、その相手と組んだ経験だけ。2002年の論文の抄録は、バイオテクノロジーの提携145件で、パートナー固有の経験だけが成果に正の影響を持つ、と書きます。報告されたのはその相手と組んだ経験のほうで、組んだ回数ではありません。同じ筆頭著者のレビューが二本、年も近く取り違えやすい。2013年は単著で先行要因についての165本の実証研究を検討、2014年は3名の共著で167本の成果の指標を分類。165本は何が効くか、167本は何を測ったかのレビュー。どちらも研究の本数で、効果の大きさではありません。

査読の実測が扱うのは、ノルウェーの機械工業の提携100件、米国の電子産業の合弁186件(1979〜1988年設立)、バイオテクノロジーの提携145件。どれも特定の国・産業・期間の、記録に残る取り決めで、契約書のない個人どうしの協力は入っていません。原典自身も——外的妥当性の要件を満たす合弁の全域から無作為な標本を引くのは難しい。
全文まで読めたのは8点のうち5点。残る3点は抄録までで、その先は書きません。独立した別々の検証でもありません。互いに引用と著者で連結しています。1998年の論文は課題を五つ挙げたもので、走査した範囲に割合の数字は1件もありません。この号は、組めとも組むなとも書きません。相手の選び方も書きません。
「打ち切りの率は50%を超える」の典拠に挙げられた研究には、
100件のうち34件、と印字されている。
次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは、提携の終わり方の記録と、その分類だけ。判定も、相手への確認もしません。
TRY IT TODAY
- 01PICK
関わっている取り決めを一つだけ書き出す。続けている契約、共同の作業、当番の分担、何でも。**相手の名前は書きません。**
- 02LABEL
終わるとしたら、どの意味で「終わった」と記録するのか。四択から——**(1)打ち切り、(2)目的を達したので畳む、(3)目標に届かなかった、(4)自然に立ち消えた。**選んだ意味を一行。四つのうち三つは、研究が数えてきた区別に対応します。**どれを選ぶかを決めるのは、いつでも数える側です。**
- 03CHECK
最後に一行。その取り決めが**いつ始まったか**を手元の記録で確かめられるかを書く。できなければ「確かめられない」と。
皮肉なのは、その数字が大きくなるほど、口にした人が慎重に見えることです——というのが、この号の読み筋です。
確かめられたのは三つ。総説の幅は六〜七割ではなく30%から70%で、典拠は到達できていない2004年の実務書だったこと。「50%超」の典拠の論文には、100件のうち34件と印字されていたこと。「終了を成果の基準として使うべきではない」と書いたのは、解散を数えた1997年ではなく2008年だったこと。残らないのは、その数字だけを条件を外して持ち歩ける部分です。今日残せるのは、取り決めが一つと、四択と一行、始まりの一行。記録が三つです。
SECOND LAYER · FULL SYLLABUSアライアンス・協業開放性を、もっと深く学ぶ。→HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方+
この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。
- p値
- 差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。

