IN ORGANIZATIONAL FORTUNE · ISSUE 280
● 12 SECまず、ひとつの集計から。63か国(先進国29・新興国34)、1992-2014年、1,306の国・年の観測。実質国内総生産が前年より減った年——この集計での景気後退——は153件(先進国86件・新興国67件)、全体の12%。うち前の年の4月に減少が見込まれていたのは5件。148件を取りこぼしています。
出どころを替えても埋まりません。前年4月の見逃しは民間の集計予測で148件、国際通貨基金の見通しで147件(153件から引くと6件)。要旨は——民間部門と公的部門の予測は事実上同一であり、両方とも等しく景気後退を見逃すのがうまい。
ただし同じ表は、時点を進めた数字も並べます。民間の見逃しは4時点で148/139/69/35件、153件から引くと見込めていたのは5/14/84/118件(原典の散文は5件と118件、あいだは引き算)。118件は153件の77%。原典の本文は——予測が現実に追いつくのは、その年が終わろうとするときになってからである。当たらないのではなく、遅い。
市場タイミング読解力(market timing literacy)は、いつ動くかを読む力。その「いつ」を教えるはずの景気の見通しが、どこまで当たってきたか——この号が数えるのは、そこです。
1件はある国のある1年。企業でも業界でも個人でもありません。定義は、年次の実質国内総生産の成長率が負になった年というだけ。四半期で山と谷を判定する方式ではない。予測は二種類——民間の集計予測(対象年に24回ぶん・予測者の平均値)と、国際通貨基金が4月と10月に出す見通し(4時点)。
数字は相関でも効果でもなく、2×2の表の件数の数え上げ。第1種の誤り=起きた後退が予測されていなかった件数(「見逃し」)、第2種の誤り=起きなかったのに予測された件数(「空振り」)。予測の記録とあとの実績を突き合わせた観察です。

この数え方は、どれだけ繰り返されてきたのか。
012018年の集計。63か国・153件のうち、前年4月に見込まれていたのは5件、当年10月は118件。冒頭——後退の状態にあるのは全体の10%から12%の時間、珍しいのは事前に予測された後退のほう。前年4月の見通しは、民間も公的も3%成長。見逃しは4時点で公的147/136/72/40件、民間とほぼ同じ。空振り(後退でなかった1,153件のうち誤って「後退」)は前年4月に民間8件・公的14件、当年10月に33件・27件。1,153+153=1,306件。要旨は、予測者は後退の年が他と違うことには気づいているとしたうえで——その年が終わりかけるまで、後退の規模を大きく外し続ける。
021989-1998年の集計。63か国・60件のうち、前年4月に予測されていたのは2件、当年10月は47件。対象は63か国、民間の集計予測のみ、標本内の後退は60件。「後退が予測されていた件数」は4時点で2/3/20/47件——60件から引くと、見込まれていなかったのは58/57/40/13件。次の行「予測が実績を上回っていた件数」は60/60/59/50件。結論部は、3分の2が当年4月でも検出されず、およそ4分の1は10月の予測がなお正の成長だった、と。ここでの「景気後退」には、景気循環上の下降(1991年の米国)も、体制移行に伴う減少(ハンガリー・ポーランド)も、危機に伴う減少(1992-93年の欧州通貨制度、1995年のメキシコ、1997-98年のアジア)も、同じ1件です。
032014年の発表資料は査読誌ではない。77か国・88件のうち、2008年と2009年の62件は前年4月にも9月にも予測なし。2014年1月配布。77か国、2008-2012年。起きた後退は2008年から順に13/49/7/4/15=88件、前年4月に予測されていたのは0/0/9/1/0=10件、前年9月は0/0/8/1/2=11件——2008年と2009年の62件は、どちらの時点でも1件も予測されていません。資料は、とくに事前には多くの後退を予測できなかったと書きつつ、逆も並べます——もっとうまく失敗した。2009年の後退は一年前には予測されていなかったが、2009年の途中では、件数はむしろ多く予測されすぎた。いちばん劇的な数字が、査読を通っていない資料にしかない。

原典の表は動きません。動くのは、要約されていく途中です。
01「まったく当たらない」と要約すると、当年10月の118件が落ちる。当たらないのではなく、遅い。当てているのは「産出が減る」という向き、幅は最後まで外している。分かるのは、たいてい手を打ち終わったあとです。2018年の集計が手がかりに引くのは、予測改定の遅さを論じた1987年の論文(巨視経済・エネルギー消費・石油価格の予測で、51の検定のうち50に正の相関)。ただし結論部は——なぜ景気後退が事前に予測されないのかについて、我々の研究は説明を与えていない。挙がるのは、互いに排他的でない三つの説の候補だけ。
02「権威ある予測なら違う」で147件が落ち、「専門家は危機を煽る」で1,153件中8件が落ちる。出どころを替えても、民間148件と公的147件の差は埋まりません。1,153件のうち前年4月の空振りは民間8件——外し方は見落とす側に偏っています。ただし空振りは当年10月の33件まで増え、多くはゼロをまたいだ境目の事例だと原典が添え、第2種の誤りは第1種よりずっと少ない、と。2014年の資料が2009年の途中について添える逆の側は、期間も出どころも違う数え方で、同じ主語には束ねられません。
03「63」を件数だと読むと国の数が落ち、三つを独立した検証だと読むと重なりが落ちる。63は景気後退の件数ではなく、対象の国の数。よく引かれる二つの集計は、どちらも63か国(1989-1998年と1992-2014年)。件数は期間で変わり、60件・153件、2008-2012年(77か国)で88件。添えるのは四つ——国の数、期間、予測の出どころ、「景気後退=実質成長率が負の年」という定義。しかも三つは独立した検証ではありません。三つとも同じ一人の研究者が加わり、期間は1992-1998年の6年間で重なり、2008-2012年は1992-2014年に入ります。期間を広げ、区分を足して数え直してきた系列。

測っているのは国単位の年次データ、一国の経済全体。手元の商売や自分の業界の山と谷が予測できるかは、ここでは測られていません。全文まで読めたのは6点のうち3点。読めていない3点については書きません(「刊行版に153件と書いてある」とも書きません)。読めた範囲に、無作為な割り付けも対照群もありません。
2000年代終わりの大きな景気後退の前後で分けた表もあります。前年4月の見逃しは前が70件中70件、後が83件中78件——100.0%と94.0%でほとんど動きません。ところが原典は——後の期間のほうが成績はいくらか良かった。より多くの割合が予測され、平均の予測誤差も小さかった(新興国の1年前予測を除く)。当年4月は70件中45件から83件中24件へ、当年10月は20件から15件へと下がる。どちらか一方を正解にはしません。この号の数字を、市場に出入りする合図として読み替えないでください。
153件のうち、前年4月に見込まれていたのは5件。
同じ表の当年10月の欄は、118件。
次の3手は、研究が命じた順番ではありません。測られたのは国の経済の予測の記録で、自分の見通しを書き写したとき何が起きるかを確かめた研究はありません。ALIFEが提案する実践の入口です。
TRY IT TODAY
- 01FIND
手元の記録——メモ、送信済みの文章、予定表——から、過去に自分が書いた「この先こうなる」を一つ探す。他人や他社の判定は選ばない。無ければ「見つからなかった」と一行。
- 02WRITE
見つかったら三行。(1)書いた日、(2)書いた内容、(3)いま分かっている結果。まだ分からなければ「まだ分からない」と。
- 03DATE
最後に一行。これから書く見通しには「答えが出る時期」を同じ行に添える、と決めて書き留める。残す記録はそれだけ。
皮肉なのは、この四半世紀で増えたのが、当たらないことに付ける条件の数のほうだったこと——というのが、この号の読み筋です。確かめられたのは三つ。当たらないのではなく、遅い。出どころを替えても差は埋まらない。件数は期間で変わり、三つには同じ研究者が加わっていた。今日残せるのは判定ではありません。過去の見通しが1件と、これから添える一行。記録が1件、残るだけ。
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