IN ORGANIZATIONAL FORTUNE · ISSUE 274

(仮ビジュアル)暗い室内の黒い壁ぎわに立ち、隣の窓ガラスに自分の後ろ姿が映りこんでいる、黒いニットの女性● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

手を広げたほうがいいのか、絞ったほうがいいのか。会社の話でこれは多角化〔商売の種類を増やすこと〕と呼ばれます。2000年のメタ分析は、三十年ぶんの研究から55件を集め、文献から導いた三つの競合するモデルを突き合わせて、"Thus, we provide support for the curvilinear model"(したがって曲線のモデルが支持される)と書きます。単一事業から関連する多角化へ移ると業績は上がり、関連しない多角化へ移ると下がる。要旨の書き方です。

この号が見るのは、同じ要旨の最後の一文です——"The results also indicate major effects from variation in diversification and performance operationalizations."(結果はまた、多角化と業績の操作化の違いから大きな効果が生じることも示している)。操作化〔概念を、実際に測れる手続きに置き換えること〕。変わるのは多角化の測り方だけではありません。業績の測り方も同じ文にあります。

では、その「幅」はどう測るのか。1979年の比較ノートは、米国最大級の製造業460社に二つの指標を当てたうえで、冒頭にこう書きます——"There is no axiomatic analysis or general model of diversification which suggests the advantage of any single index"(どれか一つの指標が有利だと示す公理的な分析も、一般的なモデルも、多角化には存在しない)。この号が探して見つからなかった話ではありません。原典が自分でそう書いています。

探索多様性(search diversity)が扱うのは、探す量ではなく散らし方です。同じ手間や時間を一か所に集めるのか、分けるのか。分けた先が、手元のものからどれだけ離れているか。

水準を確かめます。数えられているのは企業と産業で、一人の人の仕事ぶりではありません。1979年の比較が指標を当てたのも、米国最大級の製造業460社。個人の能力の話は出てきません。

そしてこの号は、新しい商売を始めるのがよい、たたむのがよい、と言いません。書けるのは、幅と成績の関係がどう測られてきたかまでです。

(仮ビジュアル)薄暗い室内で、黒い額縁の大きな鏡に向かって立つ黒衣の女性が、鏡の中の自分をじっと見返している写真
同じ会社を、二つの物差しで測る。返ってくる数は、同じにならない。 Visual: ALIFE

では、この「幅」はどこまで測られているのか。まず読んだのは、この3本です。

012000年のメタ分析は、55件を統合して曲線のモデルを支持した。55は、これまでに刊行された研究の件数です。効果量の数でも企業の数でもありません。三つは、文献から導いたモデルの数。論文自身が冒頭で、この関係の性質にはほとんど一致がないと書いています。読めたのは要旨まで。支持されなかった二つのモデルの中身も、55件の内訳も読んでいません。

021979年に「決め手は無い」と書いたのは、指標を推している側だった。この論文に要旨は無く、読めたのは冒頭の段落まで。測り方の系譜がそこに出ます——製品の数を数えるものから、重みを与える尺度まで。同じ段落に"has been used by one of the authors of this paper"(本論文の著者の一人によって用いられてきた)。別の指標の利点を示すと宣言した側が、冒頭で決め手は無いと書いた。460は比較を当てた企業数です。

031993年の理論論文は、三つの形の学習の近視を整理した。単純化と専門化が、遠い時間、遠い場所、失敗を見落とす傾向に寄与するという整理です。ただし理論論文で、要旨に標本も効果量も検定も印字されていません。締めは"those imperfections suggest a certain conservatism in expectations"(それらの不完全さは、期待についてある種の保守性を示唆している)。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
2000年のメタ分析・1979年の比較ノート・1993年の理論論文。まず読んだのは、この3本。 Visual: ALIFE

動くのは、原典ではなく、要約されていく途中のほうです。

01「中程度が良い」を「中程度を狙え」と読む。要旨が書くのは、中程度の多角化が、限られた多角化とも広範な多角化とも比べて高い業績をもたらす、というところまで。「中程度」がどこから始まりどこで終わるかは、印字されていません。目盛りを決めるのは測り方のほうです。中程度が指すのは位置ではなく向きの変化——というのが、この号の読み筋です。55件それぞれが同じ形を示した、という意味でもありません。

02「型に分ければ、客観的になる」と読む。幅の測り方には、決めた型に当てはめるやり方もあります。代表は1982年の論文ですが、読めた要旨に「型に分ける」とは書かれていません。あるのは、新しいデータで関連を再現し、産業ごとの収益性の効果を取り除いたあとに残る関連を検討した、まで。型の名前も型ごとの数値も、原典で確かめていません。分類には、どこまでを関連と見なすかの線引きが要り、それは分ける人が決めます。

03「メタ分析が出たから、決着した」と読む。測り方が結論を動かす例が、同じ雑誌にあります。2003年の論文は、成績を左右するのは産業か企業かを扱い直し、測り方を会計上の比率(総資産利益率など)から価値にもとづく尺度(経済的利益や時価簿価比率)へ替えます。2005年に反論——"We take issue with their methods used to identify and exclude outliers"(外れ値を特定し除外する彼らの方法に異議を唱える)。元の著者たちの返答は、結果は方法の違いに鈍感だと論じます。三段とも査読誌に残り、どれが正しいとも書きません。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
中程度を狙えと読む・型に分ければ客観になると読む・メタ分析が出たから決着したと読む。読み違えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

全文まで読めたのは、7点のうち0点です。6本は要旨まで、1979年の比較ノートは冒頭の段落まで。読めていないものについては書きません。効果量も信頼区間も分散の推定値も、到達範囲に出てきません。対象の国が書いてあるのは1本だけ——1979年の米国最大級の製造業460社。残る6本に国の記載はありません。水準は企業と産業。無作為な割り付けは1件もありません。

2003年の論文と2005年の返答は同じ3人の著者で、独立した2本ではなく1つの応酬の両端です。反論の側は別の3人。55件の内訳を読んでいないので、1982年の論文がその55件に入るかどうかも確かめていません。始めるか、たたむか——そういう話はここにはありません。どの研究も、その効果を測っていないからです。

どれか一つの指標が有利だと示す分析も、一般的なモデルも無い。
そう書いたのは、その指標を勧めている側だった。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。測られたのは企業の多角化の程度と業績の関係で、手元の記録を分け直したときの話ではありません。判定も評価もしません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    自分で見られる記録をひとつ選んで、名前を書く。仕事の数字でなくてかまいません。**他社や取引先の数字は使いません。**

  2. 02SPLIT

    その記録の分け方を二通り書く。ものの種類で分けるやり方と、相手の種類で分けるやり方。あるいは、場所と時間帯。

  3. 03COUNT

    それぞれの分け方で、**いちばん大きい区分が全体の何割か**をおおよそで出す。二つの割合が違っていたかを、一行で書く。

5分。採点はありません。二つの割合が違っていても、同じでも、良し悪しではありません。**これは、あなたの幅を測る課題ではありません。**誰かの数字を集めない。誰にも尋ねない。提出しない。人を評価しない。書いたものは手元に置きます。つらさが続く・強まる場合は、医療・支援の専門家へ。

確かめられたのは四つ。2000年のメタ分析が55件を統合して曲線のモデルを支持し、同じ要旨の最後で測り方の違いからも大きな効果が生じると書いたこと。支持されなかった二つのモデルの中身が、要旨に一語も無いこと。1979年の比較ノートで決め手は無いと書いたのが、その指標を使ってきた側だったこと。1982年の要旨は関連の再現まで、2003年からの三段は方法を争ったまま、1993年の理論論文は期待にある種の保守性を、と締めていること。

「幅」は便利な言葉です。狭いと言えば慎重に、広いと言えば意欲的に聞こえる。しかも、どの物差しで測ったかは言わなくてよい。折り返す線は残ります。残らないのは、その頂上がどこにあるかを、読めた原典が教えてくれるという部分です。——決め手が無いまま、幅の広い狭いだけが毎年どこかで言われている——というのが、この号の読み筋です。今日残るのは、記録がひとつ、分け方が二通り、割合が二つ。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS探索多様性を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。