IN ORGANIZATIONAL FORTUNE · ISSUE 273

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵● 12 SEC
Visual: ALIFE Editorial

ここまでは、運を個人の側から見てきました。ここからの16号は会社の側です。1991年の論文は、米国の事業単位の成績のばらつきを産業・親会社・事業単位そのものへ割りました。標本Aの印字は産業8.32%、産業と年7.84%、親会社0.80%、事業単位46.37%、残差36.87%。

同じ表には標本Bも並びます。規模の基準で落ちた小さな事業単位1,070を足し戻し、測定上の問題で34を除いたもの(1,774+1,070−34=2,810)。同じ論文、同じ著者、同じ4年間、同じデータ。それだけで産業は8.32%から4.03%へ、残差は44.79%へ、親会社は1.64%へ動きます。

標本Aの5行を足すと100.20。同じ表のTotal行は100.00です。推定値の列から割り戻すと残差は102.51÷279.56=36.67%。1997年の論文の脚注は、この数値は、彼が報告している推定値の実際の値からすれば36.67であるべきだ。同じ論文のもう一つの表では、同じ成分が36.70、産業は8.28、合計は100.00です。

組織的探索投資力(exploration investment)が指すのは、新しいものを探すほうへどれだけ資源を回しているか。研究開発の費用、売上にならない試みの時間、外と組んだ案件の数。増やせば先行きが良くなるのか。その前に——会社の成績のうち、どれだけがその会社自身で説明できるのか。

分散分解は、事業の成績の散らばりを産業・親会社・事業そのもの・年・残りへ割り振る手つき。分散成分は、平均からのずれを要因ごとに見積もった散らばりの量です。単位は事業単位。推定はランダム効果モデルですが、2017年の論文は3本を固定効果かランダム効果かに単純には振り分けていません。

材料は米国の公的機関の記録。261の4桁産業分類、1974年から1977年の4年分、報告した会社は588社(年により432社から471社)、1社あたり平均およそ8事業単位。標本Aは6,932観測・457社・1,774事業単位・242産業で、その1,774は1985年の研究の1,775事業単位を4年分へ広げたものです。

(仮ビジュアル)夜の高層階の窓辺に立ち、暗いガラスに自分の姿を映しながら街の明かりのほうを見ている、黒いスーツの女性
取り分は、ばらつきの住所です。責任の割り当てではありません。0.80%と46.37%は、同じ表の同じ列にあります。 Visual: ALIFE

では、その取り分は、どこまで一つに決まっているのか。まず開いたのは、この3本です。

011991年の分解は、同じ表に二つの標本を並べている。標本Aは6,932観測・457社・1,774事業単位・242の4桁産業。標本Bは小さな事業単位1,070を足し戻し34を除いて、10,866観測・463社・2,810事業単位・産業は同じ242。取り分はA(B)の順に8.32%(4.03%)、7.84%(5.38%)、0.80%(1.64%)、46.37%(44.17%)、36.87%(44.79%)。著者の言葉は安定した産業効果は、事業単位の収益率のばらつきの8%しか占めない。事業単位効果はその6倍重要とも書きます。分母を産業側のばらつきに替えれば39.3%、約40%にすぎない、と。

021985年の出発点は1年分で、同じ表に二つの列がある。1985年の論文が出発点。242産業の456社が運営する事業単位1,775観測、1975年の1年分。表は2列。母集団の分解が産業19.59%・市場シェア0.62%・共分散−0.62%・残差80.41%、標本の分解が19.46%・0.63%・−0.62%・80.54%(本文には第三の値19.62%も)。どの列から引いたかで値が変わります。抄録の「75%超」は分母が産業平均収益率のばらつきで、事業単位の成績のばらつきではありません。会社の差は統計的有意に届かない、が結論の向き。

031997年のやり直しは、部門を分けると順位が反転する。米国の上場企業58,132観測・628産業・12,296セグメント・7,003社(多角化1,791社)・1セグメント平均5.7年・利益率9.3%。全体は年2.39%/産業18.68%/親会社4.33%/事業固有31.71%/共分散−5.51%(計51.60%、残差48.40%、合計100.00%)。産業の取り分は製造業10.81%が最小、宿泊・娯楽64.30%が最大(サービス47.37%、運輸39.50%、農業・鉱業29.35%)。卸売・小売41.79%の列は年2.64%/親会社44.06%/事業固有2.04%/共分散−20.24%(計70.29%)。「会社の取り分は小さい」は、部門を分けると反転します。

(仮ビジュアル)ベージュの空間で、黒い石の細長い天板を、灰青のガラス・銀の金属・赤い漆という3本の異なる脚がそれぞれ支えているコンソールテーブル
1991年の分解・1985年の出発点・1997年のやり直し。まず開いたのは、この3本。 Visual: ALIFE

原典の表は動きません。動くのは、要約されていく途中のほうです。消えやすいのは3か所。

01一つ覚えて持ち歩くと、どの測り方の数字かが消える。2017年のメタ分析によれば、効果量の測度は平方和・分散・標準偏差の3種類。同じ標本に違う結果を返すので比較できません。9研究の25標本(N=212,112)では、標本の寸法を知るだけで、平方和の測度はよく予測できる。測度を替え、16研究の18標本(N=225,183事業年観測)でやり直すと、分散で産業0.08/親会社0.14/事業0.36、標準偏差で0.28/0.36/0.59(年は0.01と0.08)。親会社が産業を上回り、1991年の0.80%対8.32%とは上下が逆。その順序は十分に確立されていない、18標本のうち12が米国で効果量が独立でないのは前提に反する——原典自身の但し書き。平方和側の25標本には1991年の研究が1行(標本30・ROA)、18標本側には不在です。

02小さいから無駄だと読むと、読み直しと米国以外が消える。2001年の論文は、全社の戦略は関係ないという見直し論を、同じ文献群の読み直しから否定します——"Corporate strategy in fact does matter."(全社の戦略は、実際のところ、関係している)。標本も偏ります。2007年の研究はスペインの5,000社・1995年から2000年のパネルで、産業水準と企業水準の両方に有意で恒久的な差があり、ばらつきは企業水準のほうが大きいと結論します。2017年の断りもあります——効果の大きさは、その重要さとも影響力とも同じではない。小さな成績の差が事業の死や生存を決めうる。

03投じれば出ると読むと、42標本の内訳が消える。水準が変わります。2011年のメタ分析は中小企業の水準、統合は相関係数。k=42の独立標本(N=21,270)は46の公刊・未公刊研究に由来(抄録の「42研究」は独立標本の数)。平均相関.1331(95%信頼区間 .0963〜.1699)。相関係数.13は、目安では小さい部類です。原典は、信用区間−.0898〜.3560がゼロを含む点を強調し、効果は文脈しだいだと書きます(信用区間は標本が散らばる幅、信頼区間は平均の推定の幅)。内訳は姿勢.1960(16標本)/産出.1434(21標本)/投入.0991(22標本)。うち内部.1071(18標本)、外部と組む形.0005(9標本・−.1073〜.1084)はゼロをまたぎます。原典の中は二か所で割れます。要約の序列に対し結果の節は産出と投入(p=0.120)も産出と姿勢(p=.114)も有意でないと書き、本文の「内部と外部の差は有意」に対し表の脚注はp=.0532。どちらも正解にはしません(メタ回帰は仮説を支持、外部投入 B=−0.081・p=0.009)。標本は北米19・欧州13・アジア6・オーストラリア1(「含む」なので足しても42に届きません)。

(仮ビジュアル)3つの縦長の区画に分かれた写真。左は薄暗い寝室の乱れた寝具(壁に採光)、中央は窓の外を見ている女性の横顔、右は玄関の床に置かれた上着と鍵
一つの数字を覚えて持ち歩く・小さいから無駄だと読む・投じれば出ると読む。消えるのは、この三か所。 Visual: ALIFE

水準も国もそろいません——事業単位・事業セグメント・企業・中小企業、米国・スペイン・北米19・欧州13・アジア6・オーストラリア1。到達した範囲に、無作為な割り付けの記述は1件もありません。因果の言い方もしていません。2017年の論文自身が"the observed effects are not causal effects"(観測される効果は因果的な効果ではない)と書いています。

全文まで読めたのは7点のうち2点。読めていないものについては書きません。独立した7本でもありません。1985年と1991年は同じ公的データ、1997年は1991年のモデルの当てはめ直し、2017年は1991年を標本に含み、2001年はこの文献群の読み直しです。どこへいくら投じるかは、ここにはありません。

同じ表の中に、8%と4%が並んでいる。
違うのは、小さい事業単位を足し戻したかどうか。

次の3手も、研究が命じた順番ではありません。手元の数字の理由に札を付けたとき何が起きるかを測った研究は、ありません。当てにいきません。判定もしません。

TRY IT TODAY

  1. 01PICK

    手元で自由に見られる数字をひとつ選ぶ。売上でも、来店の数でも、担当する件数でも。上がったか下がったかを一行書く。

  2. 02LIST

    動いた理由として自分が思っている説明を3つ書く。3つ目は無理やりで構いません。思いつかない、と書いてもかまいません。

  3. 03TAG

    3つに札を付ける。**(1)自分たちの選択、(2)外側の事情、(3)分からない。**迷ったら(3)。内訳を一行書き写します。

5分。採点はありません。**勤め先や取引先が危ないかどうかを判定する課題ではありません。**誰にも尋ねず、評価せず、組織の決定の材料にもしない。誰にも見せません。先行きが不安で眠れないときは、信頼できる相談先や専門家へ。

うまくいけば自分たちの判断のおかげにでき、うまくいかなければ産業のせいにできる。しかも、どちらの側にも支持してくれる数字が用意されている——というのが、この号の読み筋です。

確かめられたのは三つ。標本AとBで産業8.32%が4.03%になり、合計100.20に対しTotal行は100.00だったこと。部門を分ければ親会社44.06%が事業固有2.04%を上回り、測度を替えれば親会社0.14が産業0.08を上回ったこと。42の独立標本の平均相関.1331は信用区間−.0898〜.3560でゼロをまたいだこと。取り分の表は残ります。残らないのは、一つの数字だけを覚えて持ち歩ける、という部分。今日残せるのは、数字ひとつ、説明3つ、札の内訳ひとつです。

SECOND LAYER · FULL SYLLABUS組織的探索投資力を、もっと深く学ぶ。→
HOW TO READ THE NUMBERS数字の読み方

この号に出てくる統計の言葉です。数値は原典のまま、意味だけをほどいています。

効果量
差や関連の「大きさ」を、単位の違う研究どうしでも比べられるようにした共通の物差し。「効果があるか」ではなく「どれくらいか」を表します。
95%信頼区間
推定値の「ばらつきを見込んだ幅」。同じ研究を何度もやり直したら、結果の多くがこの幅に収まると期待できます。幅が0(差なし)をまたぐときは、明確な差とは言い切れません。
メタ分析
同じテーマの研究をたくさん集めて統合し、平均的な効き目を推定する方法。1本の研究より安定しますが、集めた研究の質と偏りに左右されます。
統計的に有意
「偶然だけでは説明しにくい」という意味の専門用語。効果が大きい・重要だという意味ではありません。ごく小さな差でも、人数が多ければ有意になります。
p値
差がないと仮定したとき、偶然でこの結果以上が出る確率の目安。小さいほど偶然では説明しにくいことを表しますが、効果の大きさは表しません。
標準偏差
ばらつきの大きさを表す値。大きいほど、人によって結果がばらばらだったことを意味します。

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本コンテンツは学習目的であり、診断や治療の代替ではありません。